表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/41

第041話 瞬殺!!

「うあ……」


 ミラたちが恐怖で言葉を失い、ガタガタと体を震わせる。


「あはははっ、お前たちはもう終わりだ!! やれぇ!!」


 錯乱しているアウグストは、まるでキマイラを使役でもしているかのように指示を出した。


「グォオオオオオオ!!」


 しかし、キマイラは制御下になく、苛立たしげにアウグストに向き直り、その巨体を揺らして近づいていく。


「な、なんだ!? 敵はこっちじゃない!! 止めろ、止めろ、止めろぉおおおおっ!!」


 それに気づいたアウグストは、ガタガタと体を震わせながら後退った。しかし、その途中でつまずいて尻餅をついてしまう。


 その間にもキマイラとアウグストの間はどんどん近づいていき、その距離はあと数メートルもない。


 アウグストはどうにか足を使って後ろに下がっていくが、焼け石に水。


「グォオオオオッ!!」


 そしてついに、キマイラは獅子の頭でアウグストを食い殺そうと襲い掛かった。


「うわぁあああああああっ!!」


 アウグストは恐怖のあまり泣き叫ぶ。


「そこまでです」

「ウガァアアアアッ!?」


 牙がアウグストの目と鼻の先までやってきた時、スペルがキマイラの横っ面を思い切り殴り飛ばした。


 ――ドォゴオオオオオオンッ!!


 キマイラは木々をなぎ倒しながら何十メートルも吹き飛んだ。アウグストを見ると、白目を剥いて気を失っていた。


「ふぅ、私の生徒たちを殺そうとしたあなたを本当なら許したくはありませんが、あなたはまだ子供。今回はこのくらいで許してあげましょう。次はありませんがね」


 スペルがアウグストを許したところで、彼を待っているのは厳しい未来だ。


 いくら未遂だったとはいえ、人の命を狙ったことに変わりはない。スペルが間に合わなければ、Fクラスの生徒たちが死んでいた可能性が高い。


 軽い罰では済まないだろう。彼には今回の罪をしっかり償ってもらうつもりだ。そのための魔法もすでに掛けた。


 でも、まだ終わりじゃない。


 ――ドゴォオオオオオンッ


「グォオオオオオオッ!!」


 凄まじい轟音と共にキマイラが起き上がってスペルを睨みつける。


 キマイラとの決着をつけなければならない。


「キマイラと言えば、昔教わりましたねぇ。普通の魔法使いならキマイラなんて下級魔法で倒せるのが当たり前だと」


 スペルは幼い頃に兄姉に教わった常識を思い出した。


「ギュオオオオッ!!」

「メェエエエエッ!!」


 キマイラは竜の頭から凄まじい炎の息を吐き、山羊の頭が雷を起こす。


「威勢がいいですね。それでは真っ向勝負と行きましょうか」


 スペルは人差し指をキマイラに向けて狙いを定めた。


「「「ギャオオオオオッ!!」」」


 キマイラたちが叫ぶと、雷を纏った炎がスペル目掛けて襲い掛かってくる。


 スペルの人差し指の前に三日月形の緑色の魔力が集まった。下級魔法ウィンドカッターだ。


「はっ」


 スペルの掛け声とともにウィンドカッターは炎に向かって飛んでいく。


 ――ボッ


 ただ、ウィンドカッターは炎に飲み込まれてしまった。


 キマイラの顔が悪魔のように歪む。


「ガッ!?」


 しかし、それはほんの束の間、ウィンドカッターが通った後に、まるで天地が分かれたように地面に深い傷跡ができ、巨大な炎が突然真っ二つになった。


「グォオオオオオッ!?」


 その直後、キマイラの真ん中にある獅子の顔に亀裂が入り、体が左右にズレていく。キマイラはどうにかしようとするが、繋がりを失った体は思うように動かない。


「もう一つ」


 頭の内一つを潰しただけでは死なない可能性がある。今度は水平にウィンドカッターを放ち、山羊の頭と竜の頭を斬り裂いた。


 完全に統制を失った体は左右に分かれてその場に崩れ落ちる。


 ――ズシィイイイインッ


 キマイラの亡骸はその巨体ゆえに大きく地面を揺らした。


「ふぅっ、これで一応私も普通の魔法使いは名乗ってもいいでしょうか」


 亡骸を見てホッと安堵のため息を吐く。


『うぉおおおおおおおおっ!!』


 その瞬間、後ろから歓声が聞こえた。


「先生、マジで強かったんだな!!」

「スペル先生、本当にすごいです!!」


 ミラとシャノンを筆頭に生徒たちが目をキラキラとさせてスペルに駆け寄ってくる。まるで英雄でも見ているかのような瞳。


 先ほどまで恐怖でこの世の終わりのような顔をしていたのが嘘みたいだ。


「このくらい大したことありませんよ」

「先生、何言ってんだよ!! キマイラって言ったら、マジでヤバいモンスターなんだぞ!!」

「そうですよ!! 街が何個も消えたっておかしくないんですから!!」

「そ、そうですか。そ、そんなことよりも皆さんが無事で本当に良かった」


 ミラとシャノンが呆れたような顔でキマイラの凄さを語らる。他の生徒たちも同意するように首を縦に振った。


 思った以上のくいつきにスペルは困惑する他ない。


 スペルは話題を変える。


 誰一人欠けることなく無事に助けることができて良かった。


「あっ、そうだ!! 先生、なんでここにいるんだよ!! アイアンアントの巣にいたんじぇねぇのか!?」

「さっきも言いましたが、その話は帰ってからにしましょう。今は皆さんを無事に家に帰し、この事態を学園長に報告することが先です」


 堪えたいのはやまやまだが、今はそれよりも事態を収束させることが優先だ。


「ちぇ……分かったよ」


 スペルは一度引率の教師に説明しに行った後、Fクラスの生徒とアウグストを連れて学園へと帰還した。


 アウグストは高位貴族の子息らしく、見つかると面倒になりそうなので、隠蔽魔法で隠して学園長室まで運び入れる。


「災難じゃったのう。こやつはこちらで預かろう」


 事情を説明した後、アウグストはクライストに引き取られた。


「分かりました。これが近くにあった怪しい品物です」


 スペルは森から戻る前に辺りを探索すると怪しげな品物をいくつか見つけたので、持って帰ってきていた。


 追加でその品物も学園長に渡す。


「うむ。きちんと調べよう」

「よろしくお願いします」

「それでは後日、ハンターギルドも同席する場を設ける故、今日のところは、ゆっくりと休むがよい」

「分かりました」


 説明を終えたスペルは学園長室を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ