第037話 野外実習
一方その頃、学園では野外実習が始まっていた。
「それでは、これから野外実習へと向かいます。しっかりついてきてください」
『はいっ!!』
今回引率をしてくれる教師の言葉に従って俺たちは歩き出した。
野外実習は、SからFまでのクラスまとめて行われる。
モンスターが出る森まで歩いて移動し、そこでクラス毎に分かれて、それぞれモンスターを狩る予定になっている。
目的地は王都の北にあるオーバンの森。
主にフォレストウルフ、スマッシュボア、キラーモンキーなんかの小さめの獣型モンスターが棲んでいる。
その上、奥にいかなければ、比較的視界も開けているので迷子になることも少ない。俺たちのようにまだまだ実戦経験の少ない魔法使いでも訓練しやすい場所だ。
学園を出発して一時間くらいで森に到着。そこからさらに一時間くらい森の中を歩くと、宿舎のような建物がある場所に辿りついた。
今回先生がいないからSクラスからの嫌がらせを心配してたけど、今のところ不気味なほど何もない。教師の目があるからだと思う。
ただ、嫌な視線をずっと感じていた。引率がいるからないとは思うけど、森の中で何かしてくる可能性もある。
気を付けておいて方がいいかもしれない。
「ここからクラス毎に分かれてモンスターを討伐してもらいます。これから渡す地図に従い、自分たちが狩りをする場所に移動してください。それでは代表者は地図を獲りに来てください」
引率の教師が告げる。
「シャノン、頼むぜ」
「分かりました」
このクラスの代表者はシャノンだ。
シャノンは妾の子とは言え、れっきとした貴族の子供だ。だから、必然的に代表者に選ばれた。
それに今では先生からの教えもあって、このクラスで誰よりも魔法の扱いが上手い。悔しいけど、俺よりも。でも、いつかは俺がシャノンを超えてみせる。
「お待たせしました」
俺たちに割り当てられた場所は森の東側。
「それじゃあ、行こうぜ」
「分かりました。ここからは気を引き締めていきましょう」
代表者としての仕事はシャノンがするけど、シャノンはあまり目立つのが好きじゃない上に、性格的に引っ張っていくのが得意じゃない。
だから、必然的に俺が先頭に立つことが多い。これも役割分担ってやつだ。
他のクラスの奴らは厚手のローブを着てただけだけど、俺たちFクラスは動くのに支障が少ない防具と盾も身につけている。
これは、先生から魔法だけ使えればいいわけじゃないと教わったからだ。
魔力が無くなってもモンスターは待ってはくれない。逃げるにもある程度物理攻撃を防げないとどうしようもない。
防具は身につけるだけでモンスターからの攻撃を防いでくれる。装備しないより装備したほうが死なない確率が上がる。
「ブォオオオッ」
「皆、警戒!!」
辺りを警戒しながら歩いていると、スマッシュボアが出現した。
スマッシュボアは、この森に出現するモンスターの中でも大型で、体長は一.五メートルを超えている。
ただ、群れで行動することは少ないため、フォレストウルフやキラーモンキーよりも倒しやすいモンスターだ。
「一カ所に固まるな!! 散開!!」
『了解!!』
スマッシュボアは突進で攻撃するのが得意技。一か所にまとまっていたら的になる。分散させることで突進の的を絞らせないように指示を出す。
後ろで皆が左右に展開するのを感じた。
「!?」
地面を蹴って今にもツッコもうとしていたスマッシュボアが的が増えたことで躊躇する。
「シャロン、今だ!!」
スマッシュボアは動きさえ封じればこっちのもの。
その隙をついて、俺とシャロンが無詠唱魔法を発動する。シャロンが俺に合わせてファイヤーボールを放った。
「ピギィッ!!」
二つの火の玉がスマッシュボアを直撃。スマッシュボアが大きな悲鳴を上げる。
「全員、叩き込め!!」
『了解!!』
クラスメイトたちが、各々の得意な魔法をスマッシュボアに打ち込んだ。スマッシュボアを煙が包み込む。
『……』
俺たちは最後まで油断しないように様子を見守る。
煙が晴れると、そこにあったのは真っ黒になって横たわるスマッシュボアの姿。どう考えても死んでいる。
一応俺が近づいて確認したけど、間違いなく死んでいた。
「お疲れ、もう大丈夫だ」
俺の言葉を聞いたクラスメイト達が近くに居た仲間と喜びを分かち合う。
ホーンラビットとは戦ったけど、ここまで大きいモンスターは始めてだ。少し不安だったけど、ちゃんと勝てた。むしろオーバーキルなくらいだ。
先生の修業はちゃんと力になってる。
俺たちは少し自信を付けた。
「よし、討伐部位を回収して次のモンスターを探すぞ!!」
『了解!!』
ここから俺たちは何匹ものモンスターたちを撃退。徐々にどのくらいで倒せるのかもわかってきて討伐もスムーズになっていく。
特に問題も起こらないまま、俺たちは順調に実戦経験を積み重ねていった。
そして、このままずっと順調にいくと思っていた……この時までは。
辺りが急に霧に包まれていく。
「なんだ? なにが起こってる?」
「皆、気を付けろ!!」
全員で背中合わせになり、辺りを警戒する。
――ドスンッ、ドスンッ
何か巨大な存在が近づいてくるのを感じた。
「グォオオオオオオオオオオッ!!」
耳をつんざくような雄たけびが周囲に木霊する。
「マーダーベア……」
霧の向こうから姿を現したのは、真っ赤な毛と四本の腕を持つ巨大な熊だった。




