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第033話 実戦訓練

 カースからの嫌がらせが止んで暫く経った頃。


「お師匠様、もうすぐ野外実習が始まります」

「野外実習?」


 フィリーネから聞き覚えのない言葉を聞いた。


「はい。魔法使いはモンスター退治に駆り出されることが多いです。そこで任務を疑似体験するために弱いモンスターが生息している樹海でパーティを組んでモンスターを討伐するんです」


 確かに仕事に就いた時にある程度戦いに慣れていなければ、碌に戦うこともできない。


「そういうことですか。そもそもFクラスの子たちは実戦経験はあるんでしょうか?」

「Fクラスは平民の子がほとんどですし、以前までの彼らでは実戦するのも厳しかったのではないかと」


 言われてみれば、最初に見た彼らの魔法は相当弱々しかった。


 フィリーネの言う通り、あの魔法では最弱のモンスターであるホーンラビットさえも倒すのに苦労するだろう。


「なるほど。それなら野外実習に参加する前に実戦訓練をした方がよさそうですね」


 スペルも初めて狼型のモンスターであるフォレストウルフに遭遇した際、怯えて何もできなかった。


 あの時はグレイに助けられたおかげで今も生きているが、あれは本当に運が良かっただけだ。普通ならあのまま死んでいただろう。


 それに生物の命を奪うのは思っている以上にハードルが高い。スペルも初めてモンスターを自分の手で殺した時はなかなかトドメをさせずに苦労した。


 モンスターを殺したことがなければ、実戦で致命的な隙になってしまう可能性もある。何ごとも慣れておくのは大切なことだ。


 野外実習前に一度でも戦っておけば心構えがしやすいはずだ。


「そうですね。勝手に外に連れ出すわけにもいきません。学園長に許可をもらいましょうか」

「分かりました」


 スペルは学園長室に行き、実践訓練の許可を得た。






 翌日、王都の西にある草原にやってきた。


 見晴らしがよく、ところどころにモンスターがいるのが見渡せる。


「ここは弱いモンスターしかいないので、初心者でも問題ないかと」

「そうみたいですね」


 スペルは無属性魔法エネミーサーチを使って地上の敵対生物の気配を感じ取る。エネミーサーチは敵の力の大きさも判別でき、周りには小さな反応しかない。


 安心して訓練できるだろう。


「ここからはどう戦いますか?」

「そうですね、ここからはグループを二つに分けて、私とフィリがそれぞれのグループを率いてモンスターと戦いましょうか」

「分かりました」


 グループ分けはくじ引きで行われ、ミラはスペル、シャロンはフィリーネのグループへになり、それぞれ七人のパーティが出来上がった。


「それじゃあ、フィリ、お願いしますね」

「お任せください」


 シャロン組をフィリーネに任せて、スペルは反対方向へ歩き始めた。しばらくすると、ホーンラビットが何匹もいるエリアにたどり着く。


「最初は私が見本を見せましょう」


 指導者としていきなり生徒を戦わせるわけにもいかないだろう。


 スペルがホーンラビットに近づいていくと、気づいたホーンラビットがスペルに目掛けて走ってくる。


 スペルは人差し指だけを突き出してホーンラビットに向け、小さな雷の玉――プチサンダーを放った。


 ――バチチッ


 ホーンラビットを易々と貫き、ビリビリと黄色い光が体全体を覆った後、光が消えてその場にパタリと倒れる。


 ホーンラビットの体から小さく白い煙が立ち昇った。


「このような感じでやれば大丈夫です」


 ――パチパチパチッ


 生徒たちがスペルに拍手を送る。


「誰からやりますか?」

「そりゃあ、俺だろ!!」


 スペルの質問にミラが当然と言わんばかりの態度で前に出た。


「他の人もそれでいいですか? ……問題ないようですね。ミラさん、実戦経験はありますか?」


 他の生徒が頷いているのでそのまま話を進める。


「あぁ、これでもハンター一家の端くれだからな。一応戦ったことあるぜ」


 生い立ちを聞いたことはなかったが、ミラがハンターの家の子だとは知らなかった。


 いや、言葉遣いが荒いことが考えれば、おかしくない話だ。


「それでは一番槍は任せましたよ」

「おうよっ!!」


 ミラが意気揚々と進み出て、ホーンラビットに近づいていく。


「キュウッ!!」

「はっ!!」


 ホーンラビットが気づき、ミラの方に駆け出した。ミラは掌でしっかり狙いを定めて、人の頭くらいの火の玉を放つ。


 ――ボッ


 ホーンラビットに当たると、そのまま燃え上がった。ホーンラビットはその場でのたうち回った後、動かなくなってパタリと倒れ、火も消えた。


「はいっ。上出来ですね。それでは順番に倒していきましょう」


 ホーンラビットが死んだ後、スペルがパチパチと拍手をしながら訓練を進める


『はいっ!!』


 他の生徒たちも後に続いてホーンラビットを順番に倒していく。


 それほど時間もかからずに、全員ホーンラビットを倒すことができた。


 しかし、今回の実戦訓練の本番はこれからだ。


「皆さん、良くできました。でも、今回はこれで終わりじゃありません」


 たったこれだけのためなら、ここまで来る必要はない。


「先生、俺らに何をさせるつもりなんだ?」

「はい。君たちには魔法を使わず、このナイフを使ってホーンラビットを倒してもらいます」


 スペルは収納魔法からナイフを取り出して笑う。


『えぇええええええっ!?』


 スペルの言葉を聞いた瞬間、生徒たちから驚きの声が上がった。

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