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第029話 予期せぬ再会

 それから一月ほど。


「おっ、もしかしてこれが魔力か!!」

「この前よりハッキリと感じたっ!!」


 Fクラスの半数以上が魔力を感じ始めた。


 一方で、教師たちにも魔力操作を教え始めたが、フィリーネやクライスト以外で感じ取れるようになった者はたった一人。


 魔力操作を覚える早さにも個人差が出るらしい。


 現状、魔力増幅法と同様に、若い方が早く魔力を感じ取れている。全年齢に修業させたわけじゃないので分からないが、やはり成長期が関係していると思われる。


 そして当然だが、生徒の中でも差があった。


「魔力ってこんな感じなんだな」


 もっとも早かったのがミラ。


 彼女は二週間ほどで魔力を感じ取れるようになり、今では魔力をある程度コントロールできるまでになっている。


 まだ感じられていない子たちも、もうすぐで何か掴めそうな感覚があるようなので時間の問題だろう。


 この調子でいけば、三カ月もあれば、全員魔力のコントロールまでたどり着けそうだ。


「ここまでの成果を実感してもらうためにミラさんに魔法を使ってもらいます」


 スペルが土魔法で長方形の板を出現させ、ミラに指示を出す。


 ここまでずっと単純作業を繰り返してきた。


 でも、魔力が感じられるようになり、動かせるようになったらどうなるのか分からないままでは生徒たちも辛いだろう。


 この辺りで少し気分を盛り上げるため、一番修業が進んでいるミラに実演してもらうことにした。


「火の玉よ、敵を燃やせ!! ファイヤーボール!!」


 ミラが前に出て的に向かって魔法を発動する。


 ――ゴォオオッ


 元々普通のファイヤーボールよりも大きかったミラの火の玉が、直系一メートル程まで大きさが増していた。


「うぉっ!?」


 ミラも本人もその大きさに目を剥く。


 魔力操作ができるようになるまで魔法を使わないようにしていたせいだ。


 久しぶりに見た自分の魔法が予想できないほど変化していたら驚くのも無理はない。


「うわぁ、なんだあれ」

「すげぇっ」

「あんなふうになるんだ!!」


 ミラの火の玉を見ただけで生徒たちが色めき立った。


 それもそのはず。


 成長した先に、ミラと同じような状態になった自分の姿がありありと想像できるからだ。


 ――ドォオオオオオオオオンッ


 そして、ミラのファイヤーボールが板に着弾。爆発して轟音を轟かせた。


 もくもくと煙が立ち上る。


「……」


 ミラは的を見たまま立ち尽くした。


「すっげぇええええええっ!! マジでこの前見た時と別物だぜ!!」

「威力が倍くらいになってたよね!!」

「魔力操作地味だと思ってたけど、半端ねぇええええっ!!」


 成果を見た生徒たちが大はしゃぎ。


 よりゴールが明確になったことでやる気をみなぎらせた。


 人に教えてみて分かることだが、覚えている知識をそのまま伝えたところで生徒たちはなかなか覚えてくれない。


 何かを覚えてもらうためには、やる気にさせたり、面白いと思わせたり、興味を持たせなければならない。


 大人たちは先に模擬戦をしたため貪欲だったが、子供たちはおちこぼれのレッテルを貼られていたため、元々モチベーションが低かった。


 これでかなり未来が明るいことを身をもって知ったはず。今後はさらに修業に励んでくれるだろう。


「先生!! これ、マジでやべぇな!!」


 皆がワイワイと騒ぐ中、一人呆然としていたミラがスペルに掛けて寄ってきた。


 興奮冷めやらぬ、といった表情をしている。


「えぇ、私もミラさんの成長には驚かされました」


 彼女の成長は予想より遥かに早い。


 シャロンが魔力操作ができるようになるまで一カ月半ほどかかったため、そのくらいを見込んでいた。


 しかし、実際は一カ月ほどで今の状態までたどり着いた。ミラは思った以上に才能がある。


 これからどんどん成長していくだろう。


 ミラの魔法を見た後、生徒たちは黙々と修業に励んだ。


 そして、興奮冷めやらぬ中、その日の指導は終わりを告げた。



 



「進捗はどうじゃ?」

「はい、予想以上の結果が出ています。このままいけば、三カ月程度で今とは比べ物にならないくらい魔法が上手くなっているかと」


 指導を終えた後、スペルは学園長室で久しぶりに今の状況を報告していた。


「それは僥倖。成果を見せれば、お主に反発している者たちも大人しくなるじゃろう」

「そうだといいのですが」


 表では動きがなくなっても、裏でより過激な手段に訴えることもあり得る。


 宿屋にやってきていた客に似たような人を見たことがある。


 追い詰められた犯罪者は牙を剥く。気をつけた方がいいだろう。


 ――コンコンッ


「それでは、私はそろそろお暇しますね」

「うむ。入るのじゃ」


 誰かがやってきたので、スペルは話を終わらせて部屋を辞する。


 スペルが出ていくのと入れ違いに四十代の神経質そうな男が入ってくる。


 その男にはどこか見覚えがあった。しかし、すぐには思い出せなかったので気にせず歩く。


「待てっ」


 しかし、外に出ようとしたところで、その男に止められる。


「何か?」


 振り返ると、その男はまじまじとスペルを見つめた。


 そして、表情が忌々しげなものに変わる。


 そこで一気に記憶が蘇った。


「お前……もしかして、落ちこぼれか? お前ようなゴミがなぜここにいる」


 その男は、かつてスペルを蔑んでいた兄姉の一人だった。

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