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第9話 終わりの星 参














「やべっ!?つい、かっとして蹴っちゃた!」



 俺は、今ガキを遠くまで蹴飛ばしてしまった。

 しまったな…死んでたら、ボス――カードルさんに怒られるだけじゃ済まなさそうだ。焦りながら吹き飛んだ方向を見る。



「な〜んだ!生きてるじゃん、よかった〜!」



 なんか、大の字の状態で手を空に向けている。なにしてんだ?…とはいえ、もう死にかけだ。あとは捕まえて、マールド――あの剣聖じじいに対する人質にするか。

 あぁ、それでその後はあの研究者共に引き渡して――。そんなことを考えながら歩きだす。


(はぁ、ガキでハーフとはいえ神族だぞ。こんなにも弱いのか…伝説の種族もこんなもんか…) 


 俺は落胆した。そんな時だった。


 視界が激しい光で潰される。脊髄反射で後ろに大きく飛び退く。そうすることで、なぜ光が起きたのか理解することができた。



「おいおいっ!なんだよ!それ!」



 くたばっているガキの手のひらに空から光が堕ちてきているのだ。――光というよりは《《星》》に近いように見えた。男は思い当たるものを探す。そして思い出したのか、笑みを浮かべる。そして、抹殺するために駆け出す。



「はははははっ!まさか!思いもしなかったよ!お前の属性が『《《幻想ディザイアーファンタジー》》』に属するものだなんてなっ!」



 拳を固め、相手の頭に向かって振りかざす。辺り一帯に雪が漂う。殴った男は驚愕する。


(っ……!感触がない!外したのか!―がっ!?)


 次の瞬間、男は遠くまで吹き飛ばされる。木にぶつかり、悶絶する。いきなり起こった事だったためすぐには理解することはできなったが、雪の煙から出てきた人物をみてしばらくすると理解した。


 大の字になっていたはずの少年――アルスが立っていたのだ。すぐに理解できなったのは姿が所々変わっていたからだ。


 サラサラで辺りを照らしていた金髪は、白く染まり後ろが長くなっている。目の色は、碧から蒼へ。


 漂う魔力は無色から蒼白く変化している。


 それだけではない。頭には、輪郭だけが分かる薄く銅色に光る、半透明の天使の輪に似た王冠が浮いていた。


 











―――――――――――















 目の前に光る何かがある。


 耳鳴りがすごくうるさい。


 視界は朦朧としていてきている。


 だから、それがなにか分からない。


 でも、掴んだ。


 本能が――魂が掴めといっているから。





 頭の中に沢山の情報が流れ込んでくる。


 耳鳴りが消え、痛みが引く。


 沈みかけていた意識が浮上する。



 あぁ、体が軽い。



 そう思いながら男の腹を殴る。面白いほど吹き飛び、木にぶつかった男は倒れ込んだまま、しばらくコチラをみる。

 目を大きく見開いた後、魔法陣を空中に描き、立ち上がり笑いだす。



「ゴッホ…ゴッホ!…はぁ〜【回復ヒール】。…いいね!それでこそ神族だ!あははははっ!」


「…?これは――」


「おい!ガキ!」


「…あ?」


「名前は?」


「…そっちから名乗れよ」


「…『闇ギルド』所属のカイだ!」


「…『イケメン』所属のアルスだ」


「……」



 短い自己紹介のあと2人は相手を討たんと駆け出す。カイがアルスに叫ぶ。



「こんな所でお目にかかれるとは!やはり、俺は運がいい!『守れ』!【障壁シールド】」


「魔法陣、発動!【身体強化】っ!」



 結界を、足場にして一気に近づいてくる。それに対し僕は【身体強化】の出力を跳ね上げる。

 頭の王冠が銀色へと変色する。


 拳と拳がぶつかりあう。


 反発しあう磁石のように2人は後退する。


 着地してすぐに左手で指を鳴らし、人差し指をカイに向ける。アルスの背後に銀色の光が複数に分かれて集まる。それを見たカイは、焦りや驚き、させど何処か喜びが入り混じった笑みを浮かべる。


 アルスは白く染まった息を吐き出し、考える。






 ――恐らく僕の属性魔法は【《《星》》】だ



 ――感覚で分かる



 ――魔言は決めた



 ――《《あの時》》願ったこと



 ――世界の誰よりも妬んだこと










 



「『《《堕ちろ》》』【星屑ほしくず】」


「いいね!それが君の魔言かい!『守れ』【魔法の盾】」



 銀色の星屑と盾がぶつかる。

 勝ったのは星屑だっだ。音を立てて壁が崩れてる。カイは、さらに狂ったように笑う。



「『守れ』!【魔法の盾】✕5ぉぉぉぉぉ!あははははははっ!いいよ!すごくいい!やはり、『幻想ディザイアーファンタジー』は、他の属性を凌駕できるんだ!」


「笑ってやがる…」



 だから狂った人間は嫌いなんだ、とすべてを防ぐことができなかったため、頬や全身から血が出ているのにもかかわらず笑い続けるカイに、アルスが拳を握りながら接近しながら問う。



「目的はっ!なんなんだよっ!」


「あははははっ!貴方が捕まったら教えますよ!魔法陣、発動!【炎の渦】!」


「っ!」



 後ろに大きくバックステップすることでアルスは避ける。手元に小さく魔法陣を描き、刀を取り出す。刀身を左手で鞘から取り出し、刃のない方に右手を乗せた状態で剣先をカイに向ける。技名を叫びながら前に飛び出る。



「剣聖流刀術:刺突我龍しとつがりゅう!」


「『守れ』!【障壁シールド】!!」



 技と【障壁シールド】が激突する。辺り一帯の雪が吹き飛び、地面が剥き出しになる。アルスの足が踏ん張ったことで地面に線ができる。カイはずっと笑い続けている。



「あははははっ!芸達者だ!…さっきも思ってたけど、それどっから出してんの?」


「はっ!お前が死んだら教えるよっ!お返し!魔法陣、発動!【炎の渦】!」


「あはっ!やりますね!」



 アルスの魔法にカイはすぐさま後ろに跳ぶ。両手に別の魔法陣をそれぞれ描くと両手を結ぶ。魔法陣と魔法陣が融合し、溶け合った絵の具みたいに別のものに変わる。

 それを見たアルスは三日月のような笑顔になる。



「おいおい!なんだよ、それ!」


「…貴方も狂ってますよ。[魔法陣融合まほうじんゆうごう]――――」


(どんな魔法なのかは分からない…避けれるか!?)



 いや!違う!と、刀を【異空間】にしまい、【身体強化】をさらに引き上げカイに向けて駆け出す。アルスの頭の王冠が金色に染まる。



「活路は前にしかないんだよなぁぁ!」


「――【雷炎鳥らいえんちょう】!」



 雷と炎を纏った鳥がアルスに向かって、ジェット機以上の速度で飛ぶ。アルスは拳を固める。そして魔法を発動する。



「『堕ちろ』【星々の王道】!」



 金色の星が集まり、アルスの通った後の場所には道ができている。速度が爆発的に上がる。

 おもっきり放ったアルスの拳とカイの魔法ぶつかる。勝ったのはアルスだった。鳥が崩壊する。


 打ち破っても止まらずにアルスは走り続ける。次はカイを狙いに定める。カイは笑う。



「いいね!いいね!やはり――」


「…くたばっとけ」



 攻撃がカイの顔を捉える。魔法の発動もできないほど速い回し蹴りは敵を吹き飛ばした。

 凄まじい勢いで周りの雪を招き込んで遠くまでいったのが確認される。



「あぁ〜疲れた。ただ…」



 拳と脚が衝撃で震えている。痛みは激しいが笑いが溢れる。上を見上げる。空に宣言するように言う。



「僕の勝ちだ」





















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