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第6話 10歳間近









 季節は冬!天気は晴れ!雲一つない!すがすがしい朝だ!なんて気分がいい日なんだ!あははははっ!…寒い〜!死ぬほど寒い〜!


 僕は朝、散歩しながら機嫌良くスキップをしていた。理由は2つほどあるんだけどね!一つ目から、私、アルスは、なんと!剣聖流の免許皆伝を昨日いただきました。拍手〜!


 じいちゃんがね、一応免許皆伝レベルまでの技術はできたと認めてくれたんだ!うれしかったな〜。思わず鼻歌がこぼれてしまうよ!ぎゃはははのは〜、ふふふふふふふ。あっ…


 こぼれたのは、鼻水だった。


 腕で拭き取り大きく広げて、上を仰ぐ。あぁ…空すら飛べる気分だぜ……でゅふふ!


 魔物との戦闘も最近は片手間仕事のようになってきた。但し、油断大敵というのはよく言い聞かされたから気をつけないとね!



「ただいマ〜ンモス」 


「まんもす?」



 気にしないで



 家についたので、鼻歌とスキップをやめる。じいちゃんもなんだか、そわそわしている様子だ。だって、家の中をずっとぐるぐるしたり、木刀で素振りしている。…素振り?



「じいちゃん!?家の中で素振りしないで!?風圧で物吹き飛んでるから」


「あっ…すまないのじゃ」



 本当に【身体強化】使ってないんだよな?この人?本当に素の身体能力?

 木刀を振り下ろすだけで、周りの物を吹き飛ばしている光景が受け入れることができないアルスくんでした。


 少年と老人は二人で飛び散った物を集めながら話し合う。



「なんで僕以上にそわそわしてしてるのさ?」



 じいちゃんは膨らみながら言う。



「だって、明日じゃぞ!アルスの属性魔法が発覚するのは!そわそわせんでどうすんじゃ!…にしても、誕生日は冬じゃたとは……今まで春じゃとおもっておったわ……なぜあやつは言わなん――いや無理じゃな…」



 段々萎んできたな。


  他人がどう思っているのかは知らないが、僕は馬鹿ではない。あやつのことが恐らく――両親であり、あの墓は両親のものだろう。

 しかし、じいちゃんは両親の話を僕にしたことがない。恐らく属性魔法の時と同時に伝えるつもりなのだろう。


 聞きたい―気になる。


 しかし、聞くことができない。


 勇気がない。


 いつもと変わらない感じで聞けばいいのに。


 ――分からない


 拾う作業の手が止まる。しかし、それはじいちゃんも同じだった。違ったのは少年は止まったままで、老人は動いたことだ。じいちゃんは物を持った状態のまま、すぐに復活しこちらを向き頭をさげはじめる。恐らく、僕の様子に気づいたのだろう。



「…アルスよ、明日には話す。絶対じゃ」


「……うん」



そんな、気まずい雰囲気のまま夜になった。

























◆◆◆???(みらい)◆◆◆













 真夜中、焚き火がぱちぱち音を奏でる。その上には鍋がグツグツ鳴り、周りには人が囲っている。




「…と10歳の誕生日の前日は、こんな感じになったんだ。…懐かしいな」


「アルスくんにもそんな時期があったんだね…」



 《《俺》》がしみじみとしていると、隣のエルフ男装女は感心した様子で偉そうに言ってくる。



「今と変わらないんじゃな〜い(笑)」



 あいも変わらず、獣人女装男は馬鹿にしてくるしさぁ…泣くよ?



「…………」



 魔族無口幼女は無口だし…なんか言ってよ!



「うふふふぅん」



 わろてますね、竜人オカマさん…


 はぁ〜、とため息をつく。クセが強いのは知ってたけどさぁ…リーダーの話ぐらい聞けないのかなぁ!?昔ばなしだよ!?君たちが聞きたい、って言いましたやん!?



「聞いてあげたじゃないか」

「そうだよ〜」

「…ん」

「そうねぇ」


「そういうことじゃないんだよ!?」



 駄目だ…コイツラ。結託しやがった。思いのあまり、頭を右手が掻きむしる。それを見た男装女はさも親切心100%を装い、からかってくる。



「ハゲるよ、アルスくん」


「ハゲてもイケメンだから大丈夫」



 瞬時に返す。すると…



「ないね!」

「ないわ〜」

「………ない」

「ないわね」



 言い方は違えど、趣旨は同じだな!事実だろが!あれ?なんだか涙がでて来ちゃったな✩


 ……うぁぁぁぁぁ!寝てやるぅぅぅぅぅぅ!



「明日は早いんだもう寝よう!おやすみ!」



 背後から、逃げた、臆病者、なんだの聞こえてくる。ガキどもが!早く寝ろ!!!!!!!




 スープは食べ忘れた。




 翌朝





 俺たちは森の青々とした道なき道を歩いてる。ここに戻ってくるのは、何年ぶりだろう?昔と変わっているように見える。


 変わって見えるのは、森を出た時との気持ちが違っているからなのかは分からない。複雑な感情が心の中を支配している。


 いつもはからかったり、ふざけたりする仲間も揃いも揃って、真剣な顔をしている。…ったく、だから俺はこいつらが大好きなんだ。不思議な時間が流れる。しかし、すぐに終わりはきた。



「着いたよ」



 目的地が見えてきたのだ。少し早く歩くと到着した。そこは一面花畑で中央には2つの岩が存在していた。風が地面の花びらを巻き込み、花吹を起こす。花の香りが辺りに漂う。



「綺麗なところだね」

「…あぁ…だろ…俺のお気に入りの場所だ」



 口にした男装女エルフだが、全員の心情は同じだった。そうして、岩の方へと歩きだす。


 岩の前に立つ。俺は岩に手を当てた。周りは黙って見ている。その顔に浮かぶ感情は複雑だ。



「ただいま、母さん父さん――そして《《じいちゃん》》」



 風が頬を撫でる。その感触とともに昔のこと――あの日の事が鮮明に蘇ってくる。


 ――未だにあの日の事が忘れられない


 ――いや忘れちゃダメなんだ


 涙が頬を伝って地面に落ちる。呼吸が荒くなっているのが、自分でも感じられる。だって、両親だけじゃない。じいちゃんも……









 ――《《僕》》のせいで死んでしまったのだから














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