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第5話 成長と企み








 僕は今、森の中を走っている。後ろからはでかいヘビが追ってきている。通称ロックスネークという魔物だった気がする。カラダは岩でできた鱗で覆われ、口からは大きな牙がちらついている。


 大きさは僕の軽く3倍はあるだろう。これでも、身長160ぐらいまで伸びたんだけど。



「シャァァァァァァァァァ」


「やっべ。激おこぷんぷん丸じゃん」



 右へ軽くサイドステップをし避ける。危ねえ、とはいえ、訓練だし逃げてばっかりじゃ駄目だよな〜。よし!やるか!


 覚悟を決めて後ろを振り返り、手元に小さく魔法陣を2つ描く。そしてロックスネークと対面し腰を降ろし、構える。そして、小さくつぶやく。



「魔法陣、発動【身体強化】【異空間】」



 次の瞬間、身体からは無色の魔力が漂い、手に片刃の刀身がそっているいる剣…つまり刀が握られた。魔力によって強化され力がみなぎってくる。まだ魔力は無色なのは10歳になっておらず、魔力が染まっていないからだ。


 目をつぶって、深く息を吸って吐く。落ち着け、じいちゃんの技だぞ。ずっと見てきたんだ。できる。目を開けて、恐怖を吹き飛ばすように技名を叫ぶ。



「剣聖流抜刀術:半月斬り」



 ロックスネークが目前にまで口を大きく開けて迫ってくる。が、鞘から魔力によって爆発的な速さで繰り出された刀身が岩の鱗を切り裂いた。


 しかし、岩のような鱗をも切り裂いた金髪の少年は少し悔しいそうにしていた。刀を払って付着した血を取り除いて【異空間】にしまった。



「はぁ、じいちゃんにはまだ届かないな…」



 そうして、ため息をつきながらロックスネークの死体を【身体強化】しながら引きずって家に帰るのだった。










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆













「ただいま、じいちゃん」



 そういって僕は家の扉を開ける。リビングのど真ん中にいた老人は気がつくと何やら作業をしていた手を止めてこちらを向く。



「おかえりじゃ、アルス」

「今日のご飯は訓練で狩ったロックスネークだけどいい?」



 そんな確認を一応しておく。何故なら、ロックスネークは他の魔物に比べるとそんなに美味しくないからだ。まぁ、まずくはないのだが。



「構わんよ。むしろ狩ったのじゃから食べるべきじゃ」

「だよね。じゃあ、作っとくね」

「頼むぞ」



 そういって、老人は作業を再開させた。そんな様子を見て苦笑しながら、キッチンに向かう。


 そういえば最近はなにかつくっているみたいだけど、なにをつくっているんだろ?内蔵を処理しながら、気になったので質問してみた。



「最近、何作ってるの?」

「ん?服じゃよ。アルスの成人に向けた」

「速くない?僕、まだ9歳だからあと6年ぐらいあるよ?」

「速くない、まぁ楽しみにしておれ。すごいの作ってるのからの」



 ふぉふぉふぉ、夢を語るようにそんなことを笑い声をあげながら言う。苦笑しながら夢から覚ますように言う。



「ご飯ですよ」



 残念ながら、この家基本的に和食なんだけど、ピーチ屋の海苔はないんだ。懐かしいな、昔テレビで見た気がする。気がするだけだけど。







【剣聖流】

剣聖が作り出した刀術。魔力を高い水準で扱うことに加えて、魔法、多い魔力量、さらには才能まで必要なため、使い手がかなり少なく珍しい。数少ない刀術中で最高峰ともいえる。じいちゃんが使うのは、剣術ではなく刀術なため、間違えると相手によっては次の日が訪れることはなくなる。







 昼ご飯を食べ終わり、皿を片付けたあと、魔法陣を覚えるために俺は自分の部屋にいた。じいちゃんと僕が住んでいる小屋に比べれば狭めの部屋だ。机にイス、布団だけと殺風景だ。ひとりでいるには十分だけどね。


 魔法陣、覚えるの大変なんだよなぁ。じっとしているのが苦手ってのもあるんだけど、まぁ楽しいからいっか!


 鼻歌を歌いながら、イスを後ろにひき、机の引き出しから辞書ぐらいの厚さの魔導書を取り出す。この魔導書はじいちゃんがくれたもので、自分の知っている魔法陣やオリジナルのものまで全部詰め込んだそうだ。なんとそんな魔導書が三冊もあるんだ。


 全部の魔導書だから、戦闘系から生活系まであるんだ。だから、【身体強化】や【異空間】などの役に立つ魔法陣や【アブラアブラ】や【ぬるぬ〜る】などの意味の分からないものまである。


 【アブラアブラ】は油を生み出す魔法なんだけどはじめは、めっちゃ料理とかに役立つじゃんと思っただよ?でもね、バケツ一杯単位でしか出せないし、めっちゃ燃えるから料理に使うと家が火事になる。


【ぬるぬ〜る】は全身がぬるぬ〜るになる。これは使うと滑って立てないんだよね。効果時間は最高1分と短いし、壁とか手で押そうと思っても滑ってできないのし。何に使えるんだよ、これ?


 しかし、じいちゃんが「一応すべての魔法陣を覚えるまでは行かなくても、描けるまではできるようになっておきなさい」といっていた。それで一応成人として認めるんだそうで。

 やっべ、話がズレたな。修正、修正。



「ん?なんだこれ?」



 目についたのは引き出しの奥にあった一冊の本だった。古びた表紙に厚めの本だ。取り出して上に掲げてまじまじと見る。あぁ、思い出した。確か『ハックザーグの本』だったけ?エルフとの交流を書いた本で世界八伝説を七伝説にしたやつ。昔、もらった物でどっか行ってたんだよね。こんな所にあったんだ。



「といえ、関係ないか!」



 僕は本を机の隅に置き、魔法陣を覚えるために励むのであった。そしてその後、晩御飯を食べて眠りに着くのだった。







◆◆◆◆◆◆???視点◆◆◆◆◆◆◆◆










「おい!ターゲットはみつかったか!?」


「いえ、まだです」


「くそが!」



 大男は部下と思わしき人間からの報告を受けて、苛ついた様子でイスを蹴り飛ばした。蹴り飛ばされたイスは壁にぶつかり、壊れた。部下たちはそれがいつものことなのか、平然としている。大男は声を荒らげ叫ぶ。



「いつになったら見つかる!?これは、あいつらからの依頼でもう9年たっているんだぞ!」


「そうですね。依頼だからしっかりやってますけどね。あいつらこと、俺嫌いなんっすよ。いつも暗いし、キモいし、胸糞悪い実験してますし」


「俺もだ。しかし、あいつらは金払いがいい。依頼である以上受ける他ないんだよ」


「そもそも、なんですか?神族のガキを生け捕りにして来いなんざ。神族って今地上にいないじゃないっすか」


「お前…何度説明したと…!?」



 大男は怒りと困惑が入り混じった顔をすると、ため息をついた。最終的にはあきれている。



「ため息ついてると幸せが逃げますよ?」


「うるさい!誰のせいだと思っている!?」



 ついに拳を机に叩きつけ、破壊する。怒り100%のようだ。



「あいつらの実験の唯一の成功体の神族の息子のガキだっただろ!?」


「あぁ!そうでしたね!」



 部下は思い出した様子で手を合わせる。しかし、まずいことを思い出したのか、段々表情が曇っていった。



「ってことは、あの野郎とも戦わなくてはならないということっすのね?勝てる気、しないっすけど?」


「あぁ、依頼である以上な。簡単に勝てる相手ではない故、見つけ次第全員がいくぞ。」


「はぁ…イエッサー」



 そう言うと大男も部下も消えた。部屋に残っているのは壊れたイスと机だけだった。


 怪しい影は動き出した。




 一方、狙われているであろう少年は腹を出してのんきに眠っているのだった。







【異空間】

覚えるのが難しい魔法陣。いろんな物をしまうことができる。ただし、生物をしまうことはできない。内容量は魔力量と比例しており、主人公はかなり多め。





アルス現在9歳、

属性魔法まであと1年

旅立ちの日まで後3年
















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