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第2話 変態パレード

ここにもクライマックスが!











「お世話になりました」




「二度と来るなよ。あと、逃げるな」




「あははははっ」




「おい!」




 詰め所という名の処刑場から出で兵士さんたちにお辞儀をする。


 言われなくとも来たくないわ、こんな所。さっきまで、朝だったのにもう太陽が真上にある。




 え?道の罰金等のお金は、って?それがなんか今までの盗賊討伐や魔物討伐の賞金があったみたいなんだよね。


 それが凄まじい金額でさぁ、道の修理が出来るほどだったんだよね。服も綺麗にしてもらったし、気分最高!!


 ……もうないけどなぁ!!




「ぶるっ」




「これはこれは!主人のことを迷いなく売った、性別不詳のユニさんではないですか」




 トボトボ歩いている俺の前に白い馬が現れる。自業自得だ、と言わんばかりに体で小突いてくる。本当に性別、なんなんだろ……訓練しても分かんないんだけど。一人と一匹は並んで歩きだす。




「まぁ……いいや、予定は遅くなったけど冒険者ギルドに行こうか」




「ぶるっぶるっ」




 スキップしながら、スピードを上げる。かなり歩いた所で、上機嫌だった俺をユニが急にフードを噛んで止める。




「なに〜?ユニ、腹減ったの?」




「ぶるっぶるっぶるっぶるっ」




 え〜、なになに、『違うわ、ボケ!冒険者ギルドの道を知らねぇだろが!クソがっ!』……と。


 ふむふむ……なる程ね。




「……処刑場に戻るか!」




「ぶるっぶるっぶるっぶるっ(待って、そんなに口悪くない)!?」




 何かを抗議するユニを無視して、兵士の詰め所に駆け出すのであった。





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





















「親切な兵士さんで良かったね」




「ぶるっ♪」




 広い道のど真ん中を横並びで歩きながら、話し合う。ここはかなりの商店が建ち並んでおり、見ているだけで面白い。




 戻った俺たちはそこにいた兵士さんに話しかけた。もちろん、俺を捕まえた人とは違う人だ。避けたわけではない、いなかっただけなのだ。




 その人に、冒険者ギルドを教えてくれただけでなく、町の地図まで貰っちゃった。なんなら兵士の詰め所だと思っていた、処刑場の本来の役割は、そっちの観光等の案内だってさ。




 恐らく、世界は広いが観光案内所に道を壊して、逃げようとして、捕まり、案内されるのは俺だけだろうな。


 うん!不名誉がすぎる!




「ぶるっぶるっ!」




「あれ?もう着いた?」




 考え込んでいた間に、立派な白塗りの建物の前につく。南向きで大きな看板に、[冒険者ギルド]と書かれている。目立つな〜。




 しかし、ね……。俺は後ろを振り向く。そこには朝通ったばかりの大きな門があった。真っ直ぐ進むだけで着いたのか……。寄り道し過ぎだな。




「まぁ、いいか…ユニ、ちょっと待ってて」




「ぶるっ!」




 力強く答えたユニを、ギルドの隣にあった大きな馬小屋に入れる。


 ギルドの中にも馬が入れるようにして欲しいもんだね。何のために、ってなるけど。




 うちのユニちゃんの為だわ!


 そんな、一人芝居を脳内で繰り広げつつ、5メートルはあるであろう扉を開けて屋内に入る。




(へ〜、意外と綺麗なんだね)




 イメージしていた、酒場みたいや冒険者ギルドはなく、テーブルやイスは整理されている。足元は、白大理石の床みたいな物で構成されており、かなりの清潔感がある。




 中にいた冒険者は、荒くれ者たちのような風貌の者もいれば、鎧を着込みキチンとした者までおり、様々だ。……ハロウィンみたい。




 そのまま進み、奥に見える受付嬢の所まで歩く。そして、俺を見て、にこやかに受付嬢が笑顔を浮かべ声をかける。




「いらっしゃいませ!ここは冒険者ギルド・ハルゴーグ支部です!ご依頼ですか?それとも、仕事の斡旋ですか?それとも、新規登録ですか?」




「……新規登録です。あと、従魔登録も」




 めっちゃ早口で話すやん!この人!忙しいやね……。ガンバ!




「かしこまりました」




 受付嬢はカウンターの引き出しから、紙2枚とと水晶を二つ、取り出す。それをそのまま机の上に置くと、説明を始める。




「紙に色々ご記入ください!そしてその後、この水晶にお触れください」




「は〜い」




「はい、は伸ばしませんよ」




「うぃす」




(幼稚園みたいだな)




「……おい」




 調子に乗って、すんません。そこで、ふと気になったこと聞いて見る。




「この水晶ってなんですか?」




「そちらは、魔力量を測るもので、こちらは犯罪履歴を確認するものです!」




「へ〜、そうなんですね」




(魔力測定とな!?これは異世界テンプレ、水晶壊し……『あれ?俺、何かやっちゃいました?』が出来るのでは!?)




 ……まぁ、冗談なんだけどね。前の俺なら出来たかもしれないが、今はとある事情から魔力が少なくなっている。




(それでも、普通の人間の倍はあるんだけどね)




 そんなことを思いつつ、従魔登録の紙を描き終え受付嬢さんに返す。それを受け取り、受付嬢はさっと目を通しこちらを見る。




「はい!わかりました!このユニちゃんはどちらにいらっしゃいますか?登録為に見ておく、必要があるので」




「ユニは、ギルド前の馬小屋にいますよ」




 ドアの方に指を差した後、立ち上がった受付嬢さんと2人で歩く。


 ドアの前が騒がしいな?そんなことを思いつつ両手で、勢い良くドアを開ける。




「ふべぇ!」




「あっ」




 勢いのまま、片方のドアが、豪華な服装をしている男に当たる。中肉高背で、かなりのイケメンだ。俺ほどではないがね!




 何よりもこいつ……まぁ、いいか。




 かなりの勢いだから、男はよろめいただけでなく、地面に転がる。


 そのまま、動かない。……え、死んだ?




「何をするのだ!?貴様ぁ!」




「あっ、生きてた!……大丈夫ですか!?」




「こんな事して、無事に済むと思ってんのか!」




 転んだままで叫んでくる。なんか芋虫みたいで面白い……違う、謝らないとな!




「すみません!」




「待ったく……!振られたらどうするつもりだ!」




「振られる……?」




 立ち上がり、服に着いた土ぼこりを手で払っている男の言葉に疑問が浮かんでくる。


 告白でもしていたのか?冒険者ギルドの馬小屋の前で?しかし、これは……。




「相手の方がいないみたいなのですが……?」




「何を言っているんだ!?」




 俺の言葉の意味が本気で分からないように、叫んでいる。だって、いないじゃん。男は両手をばっ、と広げて空を見上げたまま、とろけた顔で話す。




「見た瞬間、一目惚れだったよ。あの、綺麗さ!優雅さ!そして、ミステリアスさ!」




「……ねぇ」




「あれこそ!完璧な黄金比!絶対的不可侵!」




「ちょっと待て」




「ん?なんだね?」




「もしかしてだけど……」




 頭の中にとある可能性が浮かぶ。嘘だと思いたい……嘘であってほしい。俺は指をさす。




「……ユニのこと言ってる?」




「おお!ユニというのか!」




「くたばれっ!変態がっ!!」




「えっ!?ちょ―――」




 待たない!


 拳を固めて、顔に向けて繰り出す。先手必勝!うちのユニを迫りくるこの変態から守らなくては!


 拳が触れて、辺り一帯に風がふき、砂埃が舞う。




「ちょっと何してるですか!?」




 受付嬢が後ろから慌てて来る。




「……それで、この子がユニです」




「何をしたか聞いてるんです!」




「……気にしないで。だってどうせ、あいつ――」




「ふはははっ、いい拳だな」




 砂埃の中から、大きな声が聞こえる。アルスはうんざりした、顔で指をさす。そこには、手を顔の前に出している男の姿があった。


 手のひらには拳の跡がついているだけだ。




「――効いてないし」




「突然、殴ってきてその言い草はないだろ?」




「それも、そうだな………警告だ。これ以上うちのユニに近づくな。変態が伝染る」




「ん?まさか、君!僕とユニの絆を切り裂こうというのか!」




「さっき会ったばかりで絆もクソもないだろ!!」




「……いいだろう。そんなに言うのであれば」




 辺り一帯、昼間の陽気さが消えて体が重くなるような殺気が漂う。その発信源の男はアルスを睨みつける。




「戦いしかあるまい」




「……その言葉、後悔するなよ」




(やっぱ、強いなこいつ……!)




 アルスは拳を握り込み、男は軽く跳ねている。戦いが始まろうとしていた時だった。


 二人の間に人影が入り込む。乱入者はフードを被っており、顔は見えない。だか、シルエットで女性であることが伺える。身長も170センチ近くあるアルスよりもでかい。


 瞬間、アルスに疑問が浮かぶ。しかし、確かめる時間もなく、乱入者は口を開き大きな声で話す。




「君たち。戦いは辞めようよ」




「「あぁ!?」」




 俺と男の声が重なる。辺りを支配していた殺気はすべて乱入者に向けられる。そんなことを、気にせず話しすずける乱入者。




「君たち、強いだろ?町が壊れてしまうよ」




「あ……」




 そうだ。変態の衝撃で忘れてたが、確かに町が壊れるな。男と俺は殺気を消す。その姿を見た乱入者は満足そうに頷く。




「うん、うん!よしよし!それじゃあ、仲直りの握手といこうか!」




「……ちっ」




 言われるがまま、手を差し出してきた男と握手をする。その後、何故か手を差し出してきた乱入者とも握手をする。




 握手していた手が強く、相手の方に引かれる。そしてそのまま、抱擁されて、顔に大きななにか、柔らかい感触がする。




 突然のことに困惑し、相手の顔を見る。その顔はすました、綺麗なエルフの女性だった。かわいいというよりは美人系だろう。


 正直に言おう。めっちゃタイプ!……だか、何かが引っかかる。なんだ?


 改めて顔を見る。先程とは異なり、鼻息が荒く、頬をピンクになったいる。声が小さく聞こえる。




「ハァハァ……捕まえた、捕まえたよ。アルスくん。まだ小さいんだね?手の平もまだ柔らかい。これから一緒に生活しようね?それで、それでぇ…」




「………ユニ!逃げるぞ!」




「ぶるっ!」




 俺とユニは凄まじい速度で逃げ出す。


 美人なエルフさんに、あんなことを言われたら嬉しいはずだ。しかし、嬉しくはなれなかった。変わりに鳥肌が経っただけだった。


 それを見た、男とエルフは叫ぶ。




「ユニちゃん!何処にいくの!?」




「待ってよ!アルスくん!!!!」




 俺とユニに負けない速度で迫ってくる二人。俺は恐怖すら抱いた。




「ひゃあぁぁぁぁぁぁぁ」




 叫ぶアルスとユニを追いかける変態たち。




 その姿はさしずめ、変態のパレードだった。
























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