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第12話 旅立ちの日








 僕は明けの明星が見えるまで、その場を動かなかった。動けなかった、という方が正しいのだろう。


 日光が冷たい体を照らす。しかし、季節は冬だ。温まる気配は感じない。


 大切な家族は殺してしまったのは、自分だと分かっていているからだ。【星屑ほしくず】のことではない。


 じいちゃんはいった、魔力で抑え込んでいたと。では、魔力量の多いのになくなることになった決定的なことはなにか。


 それは、僕に使った【超回復】だ。


 自分が回復を使えないから、適正がなかったからこうなった。これは誰が言おうと事実だ。だというのに、自分の魔力は未だに有り余っている。

 そのことが、アルスの心に重くのしかかる。


「……埋葬しなくちゃ」


 しばらくし、僕は立ち上がる。


 そして、じいちゃんの遺体を抱きかかえ、崖を降りて、ひとり森の中を歩きだす。



『アルスや、このきのみはうまいぞ〜』


『大きくなるんじゃぞ〜、アルス』


『アルス!逃げるんじゃ!』



 アルス、アルス、アルス。


 じいちゃんの声が、思い出が頭の中でこだまする。目頭が熱くなる。また、頭がふわふわする。


 足が不意に止まってしまう。目から涙がこぼれないように空を仰ぐ。


 辺りに魔物はいない。魔力の激突によって、死んでいるか、遠くまで逃げているかのどちらかだ。



 あぁ…、よかった。



 そう心の中で思う。なぜなら、強くならなければならないからだ。『人を愛し、愛される人』になるためは弱さを見せてはならない。



 けど、今、この間だけは……今日だけは泣いてもいいよね?――じいちゃん。


 森に子供の泣き声が響いた。














◆◆◆◆◆◆◆◆◆













「いや〜、死ぬかと思ったよ」


 そう呟くのは、鬼ごっこをしていた結界男――カイだ。体を重そうに引きずりながら森の中を歩いている。

 そこに、闇ギルドのボス――カードルだった化け物の姿はない。


「まさか、こっちまで攻撃が飛んでくるとは…」


 そう、カードルはじいちゃん――マールドの奥義によって吹き飛ばされたのだ。ギリギリ範囲から外れていたカイは結界魔法をフル回転し、命からがら逃げていたのだ。


「しかし、マールドが死ぬとは……カードルめっ!ふざけんなよっ!アルスくんの心に影響がでたら、どうするつもりだっ!」


 カイはじだんだを踏んで怒っている。恐らく、これをみたアルスは始めとの今の差が激しすぎて、カイということに気が付かないだろう。


「まじで!近づきづらくなったじゃないか!あ〜、どうしよう、まじで!『幻想ディザイアーファンタジー』なのに、しかも使い手は神族のハーフだよっ!最高じゃないか!?」


 隣の茂みから飛び出してきた、魔物を裏拳でみぞおちに風穴を開けながら悶絶する。


「『幻想ディザイアーファンタジー』の使い手にあった時のために……仲間になるために人は殺してないし、依頼自体、入ってからこれ一筋だったから他の受けてないし、大丈夫だよね!」


 あと結界破ったの自分じゃないし、と誰もいないのに、何故か言い訳を一人ペラペラと話すカイ。

 はぁ〜、ため息をつき、耳のイヤリングを外す。そして、耳が変形し始める。なにかを思いついたらしく、はっ!とする。


「そうだ!闇ギルドとあの研究者どもを消して、アルスくんへの贈物にすればいいんだ!……ふふふっ、しかも一網打尽にできる方法があるじゃないか!なんて、天才的なんだ!じゃあ、早速取り掛からなくては!」


 歩いていたカイの足が止まる。


「……もしや、アルスくん。近くにいるのが男はいやか?う〜ん、そんだね、きっとそうだ!じゃあ、性別も変えてスタイルもよくしなくちゃな!」


 スキップしながら森から去る、今は男の耳先はエルフのようにとんがっていた。








後日、闇ギルドにこんな文が使い魔より届いた。


『闇ギルド諸君、すまない。あの神族の依頼は失敗した。あの研究者どもが裏切りやがった!《《神族のガキとマールドは殺されてた》》。裏切り者からの依頼は受ける必要は断じてない!よって、神族のガキはもう追わなくていい、《《カイをはじめとした部下は全滅した》》。俺ももう死ぬだろう。だが!闇ギルドを裏切ったあいつらはに地獄を見せてほしい!……後は、頼んだ。  カードルより』





 これを見た闇ギルドは悲しみ、激怒した。そして、ランス帝国の研究所の一つを破壊した。これの報復として研究所は、闇ギルドの支部を攻撃。


 こうして、研究所と闇ギルドの戦いが始まった。


 すべては裏で糸を引かれているとは知らずに。


















◆◆◆◆◆◆◆◆◆















「あぁ!これもいるか」


 壊れかけた小屋の中で、いろんな物を【異空間】に収納していく。じいちゃんの埋葬は終わった。あの岩……僕の両親の墓の隣に埋めておいた。近くの崖から岩を削りとり、その上に設置して完成だ。


 今は自分の部屋で収納している途中だ。ここらへんは終わったから、あとは机の周りだけだ。

 その時、机の隅に置いてある本が目につく。豪華で古びた表紙だが手入れがされている。その本のタイトルは――


「……『ハックバーグの本』か」


 不思議と惹かれた。手の取る。近くのベットだったであろうものに座り、1ページ、1ページをかみしめるように、開いて読んだ。




 数時間後……僕は読み終わった。


 ハックザーグは豪快で陽気な人だったみたいだ。そして、《《皆に愛され、愛し返した》》らしい。


 これだ!これしかない!


 そう思った。

 確信したと言っても過言ではないだろう。


 物を収納する速度を上げる。急いで旅に出る準備を始めた。ほとんどしまい、残ってるリビングの棚に向かって歩きだす。


 突然、立ちくらみがした。……あぁ、そう言えばまだ寝ていなかったな……。


 アルスは気絶するように、というか気絶して眠るのだった。









 目が覚めたら、昼だった。


 収納を再開しようとした時、お腹がなった。まだ何も食べてなかったな。収納作業は後にするか。


 そうして、食べれる魔物を探して森の中を彷徨う。まだ、先の戦闘の影響で魔物は少ない。全然、見つからない。……まじでいねぇ!?


 腹と背中がくっつきそうなんだが?


 何時間か経ち、ようやく見つかったのはロックスネークだった。美味しくないんだが、腹に背は逆らえない、とかなんとか。


 手元に【身体強化】の魔法の書こうとし、気がつく。まだ、[星]属性の身体強化を使ってもないと。……使ってもみるか



「『堕ちろ』【身体強化】」



 髪が白く染まり伸びる。頭の上には天使の輪に似た王冠が銀色に輝いている。


 全能感が湧き出る。始めての感覚だ。


 ロックスネークに一瞬で近づき、拳を握り込む。そのまま左ストレートを相手の顔を殴りかかる。


 割れた風船のようにロックスネークは破裂し、血の雨がふる。大きな死体の上に脚を乗せ、空を見る。姿が元に戻る。顔にべゃっ、と返り血がついたのを手で拭う。


「……えぐぅ」


 喉から声が漏れ出た。





 近くの川で体に着いた血を流す。

 そして、家に帰り庭で、鍋でロックスネークを調理して一人で食べる。ここでも一人になったことを嫌でも感じてしまう。


「ん?」


 その時、近くの茂みに何かがあるのを見つけた。…敵か?僕は警戒しつつ、茂みを覗く。


 そこには卵が揺れていた。突然、ヒビが入り中のなにかが飛び出てくる。


 待って!?こっちに来てない!?


 勢いよく、僕の顔と衝突する。後ろによろめいて、倒れてしまう。顔をべろべろ舐められているのが感じられる。ベタベタになるんだが!?飛びてできた何を両手で掴み掲げる。



「……馬ぁ?」


「きゅ?」



 疑問系になったのは、知っているものと少し違っていたからだ。アルビノ…だっけ?灰色でなく完全に白い毛並みをしている。だけであれば、アルスは馬だと判断する。決定的にアルスの知っている馬と違う所がある。

 それは、純白の翼が生えているのだ。



「あっ!ユニコーンか!」


「きゅきゅきゅ!」



 僕を親だと思っているのか、顔をペロペロ舐めてくる。かっ、かわいい!


「……僕は親じゃないんだけどな」


「きゅきゅきゅ♪」


「ふふっ」


 育てるか!(即決)

 軽快にステップを踏んでいるユニコーンを眺めながら思う。飼うと決まればやることがある。重要なことだ。これがないとダメなんだ!


 そう、名前だ!


 性別とか確認したほうがいいよな?僕はバスケットボールより少し大きいくらいの、ユニコーンの赤ちゃんを上に掲げる。



「ち○こは…ない。メスか?……いや、待てよ。ここは異世界だ。性別がないだけでは?」


「きゅ?」



 ユニコーンが上から首を傾げてこちらをみる。


 本当に、ごめんなさい!僕に性別を判定できる基準が、ち○こがあるか、否か、しかないんだ!!!


 ……鍛えよう!一目見ただけで性別が分かるようにならなきゃな!


 仕方がない。こうなれば必殺!


「お前の名前は……ユニだ!」


「きゅ♪」


 どっちでも行けるだろ!うん。あと君、よくわかってないね。そんな所もかわいいね!!


 ユニコーンの赤ちゃん――改め、ユニを抱えて回りだす。そのまま、家の中へ行き、残してある机の上に、図鑑を取り出して椅子に座ってユニコーンについての記述を探す。ユニは膝の上だ。


「えぇと、あった!」



『ユニコーン』


 魔力で育つ魔力生命体の一種。馬の姿に一本の角、大きな翼を持つ。一般的に美しいとされる。成体はドラゴン、ヘビーモスなどの化け物と並ぶことができるほどの強さを持つ。非常におおらかな性格をしているが、なにかの逆鱗に触れると襲ってくる。……正直、二度と合いたくない魔力生命体ダントツの1位だ。



「なる程……ご飯は魔力でいいのか」


 そこが不安になってたからな、よかった、よかった。しかし、気になる点が二つあったな?

 著者さんよ。ユニコーンとなにがあった?おおらかな性格してるのに合いたくないって……。


 だが、それよりも二つ目だ。


「《《一本の角》》……ねぇ」


「きゅ?」


 きゅきゅ、言ってるこの生命体には角がないのだ。じゃあ、ユニはユニコーンではない?

 …う〜ん、わからん!


「……とりあえず、ユニに魔力をあげてから、家を片付けるか」


「きゅ!」


 魔力をあげるか〜……どうやって?







 結局、1時間かかった。どうやら、口に手を入れて魔力放出するみたいですね。……うわぁ、もう日が暮れそうだよ。


 さ〜て、あとはこのタンスだけだが……。

 このタンスの中にはなにがあるんだろね!収納するのってなんだが宝物探しみたいで、オラ、ワクワクすぞっ!


 どんな、お宝かな〜開け!オープン!



「…………………あははははっ!」



 突然、泣いて笑い出したアルスに心配そうにユニが駆け寄ってくる。



「ありがとう、ユニ。心配してくれたんだね」


「きゅ……」


「大丈夫っ!だって―――」



 タンスの中を覗くアルス。その目に映るのは…



「―――――最高のお宝を見つけたらさ」



『アルス!成人おめでとう!』


 そう書かれたカードが、今のアルスが着るには少しでかい服やコートと共に置かれていた。

















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆












 2日後……



 半壊している小屋の前に一人の少年と一匹の小さな生物が立っていた。


 少年は、ぶかぶかの白と黒を基調としたロングコートをきている。所々に散りばめられた星がいい具合だ。



「さぁ!冒険に出発だ!」


「きゅ!」



 こうして、まだ小さな一匹の生物と、星を掴んだ少年アルスは家族との――大切な人との遺言を果たす為に動きだした。



「…………あっ!」


「きゅ?」



 少年の動きが止まる。



「……僕――いや、《《俺》》道分かんないや…」


「きゅ!?」



 道のりは遠そうだ………。














 ――――第一章[旅立ちの日]、完結
















これで第一章終了となります!


お知らせなんですが、カクヨムでも掲載しているのですが、現在無名です。(なろうもだけど……)



ここまで読んでくれた人!


ランキングを上げてくれ!




ランキングが上がると、腹踊りして喜びます!



私が!!!!

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