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ミニゲーム『貝合わせゲーム対決』蓮と神楽 vs 透花と頼光

「おいおい、貝合わせなんて子供の遊びじゃないか。俺たちがやる意味あんのかよ?」

蓮は腕を組み、神楽の隣で少し不機嫌そうに呟いた。目の前では透花がにこにこと笑顔を浮かべ、頼光がその横で自信ありげに構えている。


「賞金が出るとしたら?」

透花が、蓮の興味を引くように軽い口調で言った瞬間、蓮の表情が一変した。


「賞金? 本当か?」

透花は得意げに頷き、手のひらを広げてみせる。


「もちろんよ。勝ったら賞金がもらえるの。なんでも好きなものが買えるわよ。」


蓮の目が輝いた。その視線の先には、町で一度見たきりの団子屋のことが浮かんでいる。


「町で団子が買えるかな……」


透花は目を丸くしてから小さく笑った。


「そんなものでいいの?」


「……あの時お金がなくて買えなかったんだよ。どうしても食べたいんだ。」

蓮の素直な言葉に透花が笑い声を漏らすと、神楽が横から蓮を軽く睨んだ。


「お前、本気でそれが目当てか?」


「いいだろ? 団子ぐらい。お前だって少しは楽しめよ!」


そんなやりとりをしている間に、貝合わせの準備が整った。透花がゲームのルールを説明する。


「簡単よ。ここにある貝殻は全部で二十組。中には模様が描かれていて、ペアになってるの。順番に貝をめくって、同じ模様のペアを見つけたらその貝はあなたたちのもの。取ったペアの数が多い方が勝ち。ただし!」


透花の声が急に上がり、全員の視線が彼女に集まった。


「負けた方には罰ゲームが待ってるから、覚悟してね!」


「罰ゲームだと?」

蓮が眉をひそめると、頼光が楽しげに口を挟む。


「ま、そんなに気にするなよ。俺たちが勝つんだから。」



<<ゲーム開始>>


最初のターンは透花と頼光からだった。透花が自信たっぷりに一枚の貝殻をめくり、続けてもう一枚に手を伸ばす。


「これと……これ!」


見事に模様が一致し、彼女は嬉しそうに拍手をした。


「さすが透花。相変わらず勘が鋭いな。」

頼光が笑いながら彼女を称賛する。


「へえ、最初から当てるとはね。」

蓮が肩をすくめたが、その目には少しだけ焦りが見えた。


次は蓮のターンだ。慎重に貝を選びながら、心の中で模様を記憶していく。


「これだ……そしてこれ!」


……しかし、模様は合わない。透花が笑いをこらえきれずに小さく吹き出す。


「残念ね、蓮。」


「うるせえ!」


ゲームが進むにつれ、透花と頼光のコンビが順調にペアを集めていくのに対し、蓮と神楽は初動でつまずいた分、少し遅れをとっていた。


「お前、もう少し慎重に選べ。」

神楽が冷静な口調で蓮に注意する。


「言われなくてもわかってるよ!」


次のターン、神楽が動いた。彼は鋭い目で貝殻を見つめ、一枚ずつ丁寧に確認していく。その集中力のおかげで、少しずつペアを集め始めた。



最終的な点差はわずか。残りの貝はあと数枚だ。透花が最後のターンを迎えた。


「これで決めるわ……」


彼女が選んだ貝をめくるが、ペアは見つからない。その瞬間、蓮の顔がぱっと明るくなった。


「よし、これだ!」


神楽が冷静にアシストし、蓮が正しいペアをめくる。その結果、蓮と神楽のペアが逆転勝利を収めた。



「やったぜ! これで団子が買える!」


蓮は拳を握りしめて歓声を上げた。その横で、透花は唇を噛み締めながら、明らかに罰ゲームを恐れて縮こまっている。頼光は苦笑いを浮かべ、肩をすくめた。


「いや、俺たちも悪くはなかったんだがな……最後の一手が惜しかった。」


「それは言い訳ってやつだな。」

蓮が得意げに肩を揺らすと、透花が小声で反撃する。


「蓮さんの運が良かっただけよ……。」


その言葉に蓮が笑い返そうとした瞬間、神楽が低い声で割り込んだ。


「さて。勝負は決まったんだ。罰ゲームの時間だな。」


その言葉に、透花と頼光は一気に背筋を伸ばした。神楽は冷ややかな目で二人を見下ろしながら、わざとらしく腕を組む。


「さて、何をしてもらおうか……罰ゲームなんだから、甘くはしないぞ。」


「えっ……!?」

透花の顔が真っ青になる。頼光ですら、少し緊張した表情を見せている。


「何がいいかな……そうだな。」

神楽は顎に手を当て、わざとらしく考え込む仕草を見せる。その間、透花は怯えたような視線を送るばかりだ。


「うーん、透花、お前には――町の団子屋まで行って、俺と蓮の分も含めて団子を買ってきてもらおうか。」


その言葉に透花は一瞬目を丸くし、それから眉を吊り上げた。


「え、そんなの罰ゲームじゃないじゃない! 普通のお使いじゃない!」


「は? 団子を買ってくるのがどれだけ重要な任務か、お前には分からないらしいな。」

蓮が真剣な表情で口を挟むと、透花は怒りのあまり声も出ない様子だった。


「頼光、お前は――透花を護衛しながら団子屋の外で待機だな。」


「おい、それじゃ俺ただのボディガードじゃないか!」

頼光が抗議するも、神楽は涼しい顔で答える。


「勝者が罰ゲームを決める権利がある。それに文句を言うなら、次の勝負で勝てばいいだけの話だ。」


「くっ……。」

頼光が言い返せない隙に、蓮が手を叩いて笑った。


「よし! じゃあ俺たちはここでのんびりして、団子が来るのを待つとするか!」



数分後、透花と頼光は渋々団子屋に向かうことに。去り際に透花は何か文句を言いたげに振り返っていたが、結局何も言えず、頼光に腕を引かれて姿を消した。


神楽はその様子を見送りながら、微かに笑みを浮かべた。


「お前、本当に団子が欲しかっただけか?」


神楽がそう尋ねると、蓮は少し赤くなりながら首をかしげた。


「別に……ただ、なんかあいつらの反応が面白くてさ。」


その言葉に、神楽は小さくため息をつく。


「本当にお前は単純だな。」


「いいだろ? 楽しかったんだから!」


蓮の明るい笑顔に、神楽は無言のまま微かに頷く。その表情はどこか柔らかく、穏やかだった。


二人はしばらくの間、静かに並んで過ごしていた。やがて、風に乗って団子の香りが漂ってきた。遠くから透花の怒った声が聞こえる。


「蓮さんの分は私が食べちゃうからね!」


蓮は吹き出しそうになるのをこらえきれず、神楽の顔を見上げた。神楽は目を細め、静かに呟いた。


「お前、本当に食べ物には執着するな。」


「当たり前だろ。団子ってのはな、幸せそのものなんだよ。」


蓮がいたずらっぽく笑うと、神楽はふっと息を吐いて、ほんの少しだけ目を柔らかくした。


「……そうだな。お前がそう言うなら、きっとそうなんだろう。」


夕日が差し込む中、二人の穏やかな空気が静かに溶け込んでいった。

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