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1-25 レアアイテム

蓮が二日酔いの体を布団に投げ出し、なんとか楽な体勢を見つけようとしていると、ふと廊下から軽やかな足音が近づいてきた。そして、襖越しに透花の明るい声が響く。


「蓮さーん、大丈夫ですか?」


「ああ……透花か……。」


襖を開ける気力もない蓮がぼそりと返事をすると、透花は襖をほんの少しだけ開け、顔だけを覗かせた。彼女の表情はどこか心配そうだ。


「おはようございます。……なんだか元気なさそうですね。体調悪いんですか?」


「……昨日ちょっと飲みすぎてな。二日酔いってやつだ。」


蓮が苦笑いを浮かべながら答えると、透花は驚いた顔をして中に足を踏み入れた。


「えっ、飲みすぎたって……日本酒ですか? こっちの世界じゃ、かなりのレアアイテムですよ! それをそんな簡単に飲んじゃうなんて、さすが蓮さん……。」


「レアアイテム……?」


蓮は透花の言葉に眉をひそめる。透花は蓮の隣に座り込み、真剣な顔で説明を始めた。


「日本酒って、雅国では貴族とか特別な人しか手に入らないんですよ。それを蓮さんが飲んだってことは……もしかして、神楽さんから?」


「……まあな。」


蓮は頭をかきながらあいまいに答える。透花の表情がどんどん興味深そうになっていくのを見て、彼は焦ったように付け加えた。


「別に特別な意味とかねぇよ。ただ神楽が持ってきたから、飲んだだけだ。」


「ふーん……。」


透花は意味ありげに微笑みながら、蓮の様子をじっと観察している。


「でも蓮さん、なんだか顔色悪いですよ。神楽さんに何か言われたりしたんですか?」


「……っ!」


透花の言葉に、蓮は瞬間的に動揺した。昨夜の記憶の断片が頭をよぎる。神楽の低い声、耳元で囁かれた言葉……そして、自分が少し甘えてしまった情けない姿。


「な、何もねぇよ。別に。普通に飲んでただけだ。」


慌ててごまかそうとする蓮の様子に、透花は首をかしげた。


「そうですか? ……まあいいや。でも、あんまり無理しないでくださいね。神楽さんに迷惑かけちゃダメですよ?」


「……お前に言われるとムカつくな。」


蓮が軽く毒づくと、透花はけらけらと笑った。彼女の明るい声に、なんとなく気が楽になるのを感じながら、蓮は再び布団に倒れ込んだ。



透花は「じゃあ、お大事に!」と元気よく去っていった。その後、しばらく静けさが戻った部屋で、蓮は天井を見上げてぼんやりと考える。


(……日本酒がレアアイテムとか、知らなかったな。神楽……何でわざわざ俺にあんなもん持ってきたんだ?)


昨夜の神楽の姿を思い出す。あの真剣な目、優しい手つき、そして何よりも「もっと深く知りたい」と囁かれた言葉。


「……あー、頭痛ぇ。」


蓮は枕に顔を押し付け、再び襖に目を向けた。


(……あいつ、今何してるんだろうな。)

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