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1-24 二日酔い

翌朝、薄明りが部屋に差し込む頃、蓮は重いまぶたをゆっくりと開けた。全身が鉛のように重く、頭痛が容赦なく襲いかかってくる。


「……っ……頭いてぇ……。」


昨夜の酒が原因だとすぐに悟ったが、それ以上に、記憶の断片がぼんやりと浮かび上がり、彼を混乱させた。神楽に抱きしめられた記憶、囁かれた言葉……そして、何か甘えてしまった自分。


「いやいやいや……俺、なんか言ったか?」


蓮は額に手を押し当て、昨夜の自分の言動を思い返そうとするが、記憶はところどころ霧がかかっている。思い出そうとすればするほど、頭痛が増すばかりだった。


「……とりあえず、水……。」


ふらふらと立ち上がり、足元がおぼつかないまま廊下を歩き出す。吐き気と頭痛が交互に襲ってきて、何度も壁に手をつきながら進む姿は、完全に二日酔いの人間そのものだった。



「……櫻華様、こんな朝早くにどちらへ?」


ふと柔らかい声がかけられた。振り返ると、葵が白衣をまとった姿で立っていた。彼の穏やかな笑みが、蓮のぼろぼろな体調には眩しすぎる。


「……頭がガンガンする。気持ち悪い……水、取りに……。」


蓮の返事に、葵はくすっと小さく笑った。


「二日酔いですね。神楽様と飲みすぎたのでは?」


「……っ!」


神楽という名前が出た途端、蓮は思わず声を詰まらせた。昨夜の出来事を思い出しそうになるが、あえて意識から追い出す。


「……まあ、少し……飲みすぎたかもな。」


ぼそりと答えた蓮に、葵はやや呆れたような表情を浮かべつつも、すぐに手元から小さな瓶を取り出した。


「これをどうぞ。二日酔いの薬です。胃を落ち着かせる効果もありますよ。」


「……お前、神か?」


蓮は瓶を受け取り、慌てて中身を口に含む。舌に広がる薬草の苦味に顔をしかめたが、それでも胃の不快感が少し和らぐのを感じた。


「体調が整わないと、今日も色々と大変でしょうしね。講習会で疲れも溜まっているはずですから、無理はしないでください。」


葵の穏やかな声に、蓮はどこか救われるような気分になる。


「……助かる。ありがとな。」


礼を述べると、葵は微笑みながらその場を去っていった。彼の背中を見送りつつ、蓮は自分の額を軽く叩く。


(……二日酔いだけで済んでよかった。……いや、済んでないかもしれねぇ。)


昨夜の記憶の断片が浮かぶたび、蓮は頭を抱えた。神楽とのあの近さ、自分の弱い部分をさらけ出してしまった気恥ずかしさ。すべてが胸の奥をくすぐるような、妙な感覚を残していた。


「……俺、どうすりゃいいんだよ……。」


ふらつきながら自室に戻った蓮は、深いため息をついた。その表情はどこか幼く、弱々しく、普段の自信に満ちた緊縛師の姿とはかけ離れていた。

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