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春がきて、古風先生は海沿いの町の高校に転勤をした。
あずきは高校三年生になり、今まで以上に本格的に受験に向けて勉強を始めた。
くるみは高校最後の夏の大会で全国大会に出場する夢を叶えた。
あずきはもともと成績も良かったのだけど、古風先生に告白してから、なにかふっきりたかのように、今まで以上に勉強に集中することができた。
そのおかげで、目標の東京にある難関の大学の受験に合格することができた。(本当によかった。久しぶりに泣いてしまった)
「いた」
包丁で指を切ってしまい、あずきは言った。
「ちょっと、大丈夫? 大学に合格して、気が緩んでいるんじゃないの?」もう、という顔をしながら、隣に立っていたあずきのお母さんが言った。
「そんなことで本当に一人暮らしできるの?」
「大丈夫だよ。大丈夫。ちょっと指切っただけだよ」と(小指をおさえながら)あずきはいう。
それからあずきは小指の手当てをして、その指に(久しぶりに)包帯を巻いた。
「これでよし、っと」
しっかりとまかれた小指の包帯を見て、あずきは言った。