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「どうかしたの、大川さん。突然、とても大切なお話がありますって、なんの話?」
いつものようににこにこした笑顔で、春山古風先生はあずきのいる席の前にあるもう一つの椅子に座った。
二人のいる、二人だけの教室の外では、雪が降っている。
朝からずっと降り続いている雪。
あずきは自分の小指の包帯にそっと指で触れる。(小指の傷は思っていたよりもずっと、ずっと深かった)
教室の中には隅っこに設置されているストーブの音がしている。
時刻は放課後の時間。
外はもう暗くなり始めている。
「とても大切な話なんです」
あずきは言う。
「進路について、の話だったよね」と古風先生は言う。
それは嘘ではない。
結婚だって、進路の一つには違いなのだから、とあずきはそんなことを(自分に言い聞かせるようにして)思う。
「大川さんの進路は大学進学でいいんだよね?」と古風先生は言う。
「はい。そうです」あずきは言う。
もっと緊張するかと思った。(もちろん、緊張はしているんだけど)
でも、意外と冷静でいられる。
私は思っていたよりも、こういう危機的な場面には、強い性格をしているのかもしれない、とあずきは思う。(開き直り、あるいは後先を考えない、めんどくさい性格をしている、ともいうのかもしれないけれど……)