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レベル成長限界【1】無能探索者のダンジョン攻略~僕だけ装備レベルアップ~  作者: 御峰。


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第24話 力の共有

「す、すごい……誠也にこんな力があるなんて……」


「誠也くんが貸してくれた腕輪も刀も、強くなったのはそういうことだったんだね」


 二人とも納得してくれたようだ。


「だからレベル1でも何とか探索者をやってられるし、悪い生徒からも自衛できたんだ」


 姉さんは少し震える手で木剣を返してくれた。


「誠也? これって装備品ならなんでもできるの?」


「うん。でも装備品にもランクが付けられていて、レア度が高いものだとどんどんランクが上がるんだ。ランクが上がるとレベル1上げるのに必要な経験値も増えるし、効果が出るまでのレベルも増える。代わりに装備品の成長限界も広くなるんだ」


「経験値は結構必要なの?」


「そうだね。Fランクなら一日で最大値にできるけど、Eからは結構大変かな。上げたらより強力にはなるけど……」


「ふむ…………」


「以前姉さんが買ってくれたスキル一覧にはこういうスキルは載ってなかったから、周りには秘密にして色々試していたんだ。すぐに言わなくてごめんよ。姉さん」


「ううん! 誠也のことだから、しっかり自分の力に向き合ってから話したかんでしょう?」


 姉さんは当然のように、僕が思っていたことを見抜いてくれた。


 向かいに座っていた紗月がクスッと笑う。


「ふふっ――――ごめんなさい。二人の関係が凄く眩しくて。お互いを大切にしているんだね」


「そりゃ……姉さんはたった一人の姉さんだからね」


 姉さんの顔が少し赤くなって、黙り込んでしまった。


「ということは、誠也くんは敵のレベルが上がった方が、得られる経験値も多いってことだよね?」


「ああ。そうだね。それに紗月がパーティーを組んでくれて、僕はよりたくさん獲得しているから凄く助かってるよ」


「そっか……じゃあ、私が…………誠也くんとパーティーを組んでも大丈夫……なんだよね?」


「ん? もちろんだ。むしろこのまま組み続けてもらわないと困る」


 今度は紗月が俯いて、姉さんが僕と紗月を交互に見つめる。


「姉さん? どうしたんだ?」


「せ、せ、誠也! ――――私もパーティーを組みたい!」


 姉さん……急に何を言い出すかと思いきや。


 軽めに姉さんの頭にチョップをする。


「姉さん。姉さんには姉さんを信じてくれるメンバーがいるでしょう。それに僕達はまだまだ下層だから。でもいつか姉さんのところに追いつくから待っていてほしい」


「誠也…………わ、分かった…………」


 僕の一番の夢は姉さんと肩を並べる探索者になること。


 最強探索者の一人の姉さん。


 僕の力でどこまで追いつけるか分からないけど、必ず並びたいと願う。


「じゃ、じゃあ! お願いがある!」


「ん?」


「私はメンバーになれないけど……せめて誠也のために装備を買わせてほしい! ダメかな……?」


「姉さんがそれで気が済むならいいけど……僕みたいな初心者にあまりに分不相応なものはやめてくれると嬉しいな」


「やった~!」


 …………これ、絶対に話聞いてないやつだ。


「じゃあ、早速今から行こう~!」


「今から!?」


「大丈夫。爺さんは遅い時間帯にやってるし、まだ起きてるでしょう」


 思い立ったらすぐやるのが姉さんのいいとこだけど、こう無茶苦茶なことを言うときもあるよな……。


「紗月も一緒にくる?」


「あっ! い、行く!」


 姉さんがちょっとだけ悔しそうな表情をしたけど、できれば僕としてはパーティーメンバーである紗月とは仲良くしてほしいと思ってる。


 いつもの変装道具で目立つ髪色を赤から黒に変えて、髪型もポニーテールにしてサングラスをかける姉さん。


 変装した姉さんも中々綺麗だ。


「セグレス様と一緒に出かけられるなんて……」


 今度は紗月が感極まってる。


「外ではその名前は言わないでね? 紗月ちゃん」


「は、はいっ! え、えっと……夏鈴様?」


「様なんていらないわよ!」


「は、はいっ! 夏鈴姉様!」


 いや、どうしてそこまで様を付けたいのか。


「ひょっとして紗月って姉さんのファンだったりする?」


「!?」


 玄関を出る寸前、ばっと近づいて来た紗月が凄まじい勢いで話し始める。


「あのね!? 夏鈴姉様はうちの学校を卒業した先輩の中で、唯一最強探索者になった方なんだよ!? ダンジョンの四十六層の呪いを突破できた偉業は、日本歴史の中で最も素晴らしいものだし、夏鈴姉様はほんっとのほんとうに素晴らしい方なんだよ!? 分かる!?」


「お、おう……」


 勢い余って息を荒げる紗月。


 まさか紗月にこういう一面があるとは思わなかったが、姉さんに憧れていた彼女の叫びは、何だか僕まで嬉しくなった。


「紗月」


「う、うん?」


「僕達も強くなって、姉さんと肩を並べような」


「え、あ、えっと、う、うん、そう……だねっ!」


 嬉しそうな姉さんも連れて家を出る。


 何だか僕自身も自分の力を誰かに共有することができて、少しだけ肩の荷が下りた気がした。


 探索者になりたくてずっと頑張ってきた。


 それがこういう形で叶うようになって……これからも頑張ろうと心に誓った。


 姉さんが向かった先は――――先日訪れた装備店【赤い月】だった。

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