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レベル成長限界【1】無能探索者のダンジョン攻略~僕だけ装備レベルアップ~  作者: 御峰。


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第21話 反撃の交渉

 次の日。


 学校の授業は午前中に四時限ある。


 各授業の合間に十分間の休憩がある。


 チャイムが鳴って廊下に出ると、丁度紗月がクラスから出るのが見えた。


 ちらっと顔が合って、彼女が手を振る。


 僕もぎこちない感じで、小さく手を上げた。


 廊下の真ん中で合流する。


「えっと、どっちから調べよう?」


 廊下中心で合流したので左にDクラスからFクラスまでになり、右にCクラスからAクラスになる。


 両端のクラスにいないのは分かっているので、BクラスからEクラスだ。


「左から見てみようか」


「うん」


 廊下から教室の中が窓から見えるので、一所懸命に昨日の男子生徒を探す。


 Dクラスにはいなくて、隣に移動してEクラスを探したが見つからなかった。


「そもそもあいつら(・・・・)何クラスなんだろ?」


「以前、Cクラスから出てくるのを見たことあるよ」


「じゃあ、Cクラスかな?」


 何となく同じクラスだから、言い寄りやすかった可能性があるからね。


 EクラスからCクラスに移動する。


 当然というか、僕と紗月が一緒に歩くのを周りの生徒達がちらちらと見る。


 Cクラス前で中を見ると、例の不良男子生徒三人が、昨日の男子を囲んで談笑をしていた。


 やはり同じクラスだったのか。


「ねえねえ。ちょっと聞いてもいいかな?」


「は、はい?」


 紗月がCクラスから出てきた男子生徒に声をかける。


「恐田くん達の間にいる男子の名前を教えてくれない?」


「え、えっと…………栗山(くりやま)(ふゆ)くんです……」


 少し顔を赤らめて教えてくれた男子生徒に「ありがとう!」と満面の笑みを見せる紗月。


 あの噂(・・・)さえなければ、今頃学校中から求められただろうな……そう思うと僕なんかと一緒にいてくれるのが今だに不思議だ。


「さて、そろそろ休憩時間が終わるね。これでどうするの?」


「午前中に彼と会えるタイミングで声をかけようと思ってる」


「そっか。じゃあ、私はもう用済みかぁ……」


「ありがとう。助かった」


 手を伸ばして優しく紗月の頭に置く。


「じゃあ、またお昼な」


「うん! またね~」


 紗月がAクラスに向かうのを見届けて、僕もFクラスに向かった。


 二時限目が終わり、様子を窺っていると、栗山くんがトイレに向かうのが見えた。


 僕も急いでその後を追う。


 男子トイレの前で男子を待ち伏せする男性。中々…………嫌な感じだ。でも大事なので待ち伏せをする。


 少しして出てきた栗山くんの前を塞ぐ。


「こんにちは。僕は誠也といいます」


「!?」


 彼の顔が一気に強張る。


「そう怖がらなくて大丈夫だよ。ちょっとだけ君のために話があるんだけど、いい?」


 ゆっくり頷いたので、廊下から階段下のスペースに向かった。


 ここなら誰にも聞かれずに済むはず。


「単刀直入に聞くけど、恐田くん達に色々されているでしょう?」


「そ、それは…………」


「実は君の前の対象が僕だったんだ」


「えっ!?」


「実は僕、レベル成長限界値が1でな。聞いたことはあるだろ? あれで恐田くん達に睨まれちゃってね。紗月……じゃなくて、水無瀬さんに助けてもらったんだ。そこで君に一つ相談があるんだけど」


 僕はそう言いながら懐にしまいこんだ腕輪を二つ取り出した。


「これを貸してあげるよ」


「これは……?」


「凄く強くなる性能の腕輪なんだ。僕の姉さんは上級探索者でレア品なんだけど、実は僕が彼らを吹き飛ばせたのも、この腕輪のおかげだったりするんだ」


 彼は目を大きく見開いた。


「嘘かどうか着けてみると分かるよ」


 腕輪を二つ装着した彼の表情が驚きに染まる。


「でしょう? それ貸してあげるから、あいつらをぶっ飛ばそうぜ」


「あ、あの……どうして僕にこんな凄いものを……?」


「まあ、僕がそうしたかったからかな? 君の現状を可哀想だと思ったからでもあるけど、そもそもあいつらが許せなくて。あんなやつらには痛い目に遭ってほしいからなんだ」


「そっか……」


「難しいかもしれないけど、ひとまず装着しておいて。絶対上手くいくから」


 栗山くんが俯いた。


「…………今日も昼に呼ばれてて……逃げれなくて、もうお金もないから……どうもできなくて……」


 彼は両手を握りしめた。


「ほんの一欠けらの勇気があれば、あとはその腕輪が君を助けてくれるよ。頑張ってね」


「うん……! 僕も目標があってこの学校に入ったから……絶対にあいつらから解放されたい。ありがとう――――えっと、ごめん。名前……」


「ああ。僕は木村誠也というんだ。好きなように読んでくれ」


「木村くんだね……ありがとう。終わったら腕輪返しにいくよ」


「朗報を待ってる」


 彼に腕輪を託し、僕の作戦が始まった。


 あとは――――お昼になるのを待つだけ。


 授業がまた再開し、三時限目から四時限目まで終わり、昼食の時間となった。


 足早にやってきた紗月と一緒に昼食を食べて、その時を待つ。


 廊下の向こうから栗山くん達が外を出るのを確認して、僕達もその後を追った。

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