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レベル成長限界【1】無能探索者のダンジョン攻略~僕だけ装備レベルアップ~  作者: 御峰。


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第17話 次の被害者

 次の日。


 今日は週の真ん中の水曜日だ。


 最近は毎日ダンジョンでの活動が楽しくて、曜日が進む感覚は非常に短い。


 いつも通り登校して午前中の授業を受ける。


 休み時間、クラスメイト達がチラッチラッと僕を見るけど、特段何もなかった。


 昼食時間になると、昨日とは違い直接入ってくる紗月。


「お待たせ、誠也くん」


「あ、ああ…………紗月」


 教室で女子を名前呼び……ハードルが高くてしんどい。


 当然俺達のことを横目で見ているクラスメイト達が、聞き耳を立てているのが分かる。


 今日も昨日同様弁当をシェアしながら食べる。


 これにも慣れていかないとな……これから毎日こうなりそうだから。


 昼食を終えて、一緒にダンジョンに向かうために校舎を出ると、校舎の裏側から荒げた声が聞こえてきた。


「誠也くん?」


「ちょっと見てくる」


「私も一緒にいく~」


 紗月と一緒に校舎の隣にある駐輪場のさらに裏を目指す。


 裏に近づいていくと、誰かが怒っている声が聞こえてきた。しかも、誰の声か分かる。


「この声……あいつらだな」


 壁の裏に隠れて、チラッと校舎裏を覗いた。


 そこには以前僕に突っかかってきた男子生徒三人が、眼鏡をした小柄の男子生徒を囲っていた。


 すぐに出て行こうとする紗月を止めて、様子を見る。


「おい、貴船(きふね)ちゃんよ~例のモノ持ってきたんだろうな~?」


「う、うん……」


 そう言いながら震える手でポケットから五千円札一枚を取り出した。


「ぎゃーははは! 今日もパーティー組んでやるからよ~感謝しとけよ」


「あ、ありがとう……恐田(おそれだ)くん……」


「さあ~ダンジョンに行くぞ~」


 あいつの名前、恐田って言うのか……。


 こちらに向かってくるので、急いで紗月を連れて隠れた。


 紗月は何か凄い不満を言いたげな表情で見つめてくるけど、首を横に振って返した。


 彼ら四人が校舎を出た後、隠れていた駐輪場の裏から出てきた。


「誠也くん!? どういうこと!?」


 凄く怒ってるな……。


「あのまま助けても何もならない」


「でも! あんなの見過ごせないよ!」


「ああ。許される行為じゃない」


「誠也くん…………そんなに怒ってるのにどうして…………」


「僕も悔しい。でも僕達が彼を救ってしまっては、また次の犠牲者が増えるし、彼を常に守らないといけなくなる。それではダメなんだ」


「そう……かもしれないけど……」


「だから、僕に任せてくれ。僕に一つ考えがあるんだ」


 すると紗月は大きく頷いて「信じてる」と言ってくれた。


 僕達はそのままダンジョンに向かい、出席を終えてダンジョンに入った。




 今日も二層にやってきて、各ゾーンを越えて二層最終ゾーンのスケルトンゾーンにやってきた。


「紗月。できるだけ多くのスケルトンを倒したい。力を貸してくれ」


「分かった……!」


 それから僕達は夢中になってスケルトンを倒した。


 大盾で挑発したスケルトンを紗月が殲滅していく。


 休憩もなく数時間スケルトンを倒し続けると、周りからスケルトンの姿がほとんど無くなった。


 そして、ひと際大きいスケルトンが現れた。


「フロアボス……!」


 元々百七十くらいの大きさの通常個体から、二倍くらい大きいスケルトンは、両手に鋭い鋼の剣を持ち、鉄の兜を被っている。


「誠也くん……!?」


 驚く紗月と目が合う。


「ん? どうかしたのか?」


「君もそういう表情をするんだね」


「えっ?」


「凄くワクワクしている子供のような表情。強い魔物を倒したいという願望。顔が凄く緩んでるよ」


 紗月に言われて初めて自分の表情に気付いた。


 そうか…………僕はフロアボスを前に今を(たの)しんでいたのか。


「まさかフロアボスを二人で戦うと言わないよね?」


「…………」


「勝てないよ!?」


「いや、勝てる気がする」


「…………」


 一層のオークガードだって倒せた。


 二層のフロアボス――――スケルトンキングだって倒せそうな気がする。


 確かに確証はない。でも圧倒的な気配の前に心の底が熱くなるのを感じる。


 ――――戦いたい。


 ずっとなりたかった探索者。その壁として君臨するのはフロアボス。


 姉さんはいくつもの壁を壊した。


 その背中がやっと手に届くところにきた気がした。


「…………もし危なくなったら全力で逃げること。いいね?」


「いいのか……?」


「仕方ないでしょう。君が…………そんな表情をしたら、応援したくなるじゃない……」


 大きく深呼吸をした紗月が刀に手を伸ばした。


「ターゲットは俺が引く」


「お願い!」


 スケルトンキングに向かって走り出す。


 距離を縮めて挑発が届くところで、地面に大盾を突き刺す。


 スケルトンキングが俺に向かって真っすぐに走ってきた。


 通常個体は軽かった(・・・・)のに、スケルトンキングの巨体は見た目通りの重量感のようで、走るだけで地面が揺れた。


「紗月! 僕の木剣は敵を後ろにのけぞらせる効果がある! 真後ろじゃなく横から頼む!」


「分かった!」


 やってきたスケルトンキングは両手に持った双剣を広げて、コマのようにぐるぐると回転しながら僕を襲ってきた。

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