表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/57

第1話 成長限界レベル1

連載頑張っていきます。ブクマと★★★★★で応援してくださると嬉しいです!

「ぷ~ははははは~!!」


「ぎゃーはははは!」


 広い講堂で起きた無数の笑い声。


 思いっきり声を出して笑う人も、クスクスと笑う人も、必死に我慢しようとする人もいる。


 その全ての笑い声が向いている先にいるのが――――僕だ。



木村(きむら)誠也(せいや)様のレベル成長限界値は、【1】です。》



 でかでかと画面に表示されているのは、高校生になってから受けられる【開花】という儀式だ。


 世界にダンジョンが生み出されてから、人類には特殊な力【レベル】が与えられた。


 レベルは人によって限界値が決まっており、レベルが高くなればなるほど強くなれる仕組みだ。


 さらに、レベルを上げる一番のメリットは【スキル】。


 スキルを手に入れた人間は、従来の人間らしさを大きく超えることができる。


 大昔百メートル走の世界記録が約十秒だったのは懐かしい話。今ではその半分すら遅い(・・)と言われるほどだ。


 人知を超えた力を得た人間は、現れたダンジョンに挑み、レベルを上げてまた新しいスキルを獲得しながら、未知の素材を手に入れて新しい装備を作り、より高みへと走り続けた。


 人類はそういう人達に尊敬を込めてこう呼ぶ――――探索者と。


「成長限界レベル1とか世界でも初観測じゃねぇ?」


「生まれながら成長限界とか面白すぎる~」


「なんかパッとしない顔だし、レベル1止まりでも納得するわ~」


 僕もいつかダンジョンに入って探索者になりたいと願っていた。


 まさか……それが初日で夢が崩れるなんて…………。


 笑いが包まれる中、僕は【開花石】があるステージから降りた。


 向かうのは、『Fクラス』と書かれている場所だ。


 ここでは成長限界レベルによってクラス分けされ、高い人は高い人達で、低い人は低い人達でパーティーを組んでダンジョンを攻略することになる。


 成長限界レベルが最低の僕は当然最低クラスのFクラスだ。



 そんな中、たった一人だけ笑うことなく、ただ驚いたように目を大きく見開いた美少女が僕を見つめる。


 彼女は水無瀬(みなせ)紗月(さつき)。名前を知っているのは僕より先に開花をしたからで、名前を覚えるほどの美少女――――というのもあるけど、なにより、彼女のレベル成長限界値が今のところ、学校一高かったからだ。


 未来を約束されたレベル成長限界値。


 今の僕にとっては、誰よりも羨ましい。


 ◆


 教室には男が四人、女が四人と僕で合計九人だ。


 正面にはダルそうな表情の男先生が立つ。


「俺が担任の清野だ。みんなも知っていると思うが、Fクラスは成長限界レベルが低いやつらのクラスだ。しかも今年は運悪く(・・・)九人。事前知識で知っていると思うが、パーティーは四人で組む。九人なので三人ずつのパーティーになるが、お前らFクラスは最弱が約束されてる。できれば四人パーティーにしたい」


 全員の視線が僕に向く。


 まあ……こうなるよな…………。


「誠也と言ったな?」


「はい。誠也です」


「珍しい成長限界レベル1なんだよな?」


「そう……です」


「なら、どの道レベルが上がらない。クラスメイト達を優先させてもらえるか?」


 嫌です。とは言えない。彼らには彼らの道があるから。僕がその足枷になるのはもっと嫌だ。


「もちろんです。僕は僕なりにやっていきます」


「レベル1では最下層のブルースライムしか倒せない。まあ、装備があれば話は別だが、レベルとスキルがなければ、いくら強い装備を持っていても難しい。他の人もそれを肝に銘じるように」


「「「はいっ!」」」




 ダンジョン攻略のために政府は【探索者養成計画】を発表した。


 それから【開花】が認められる高校生から、全員が強制的に一度は【探索者】になる。


 ここから探索者になる人とならない人に分かれていくが、入学してすぐは探索者になるべく授業を受けることになる。


 探索者はダンジョンで生まれる魔物と戦うため、死と隣り合わせだ。実際死亡率も病気や事故の中でも一番高い。


 それでも探索者になる利点も多いので、多くの人が探索者になりたがるし、国も探索者を増やそうと画策しているのだ。




「制服には特殊な能力があるから、ダンジョン中では絶対に脱ぐなよ。脱いだらブルースライムだろうが、一撃食らうだけで全治一か月にはなるぞ」


 先生の説明が終わり、僕達はその足でダンジョンに向かった。


 ◆


 ダンジョン。


 それは日本だけでも千個を超えるダンジョンがあるが、実はこれは入口なだけで、中に通じているダンジョンというのは、各国で一つずつとなる。


 それを基本的に【日本ダンジョン】とか【アメリカダンジョン】と呼ぶ。


 国によって住んでいる人の数に違いがあるので、ダンジョンによって広さが全く違うらしく、アメリカダンジョンの場合、入った州ごとに入れる一層の場所も違うらしい。詳しくは不思議な力が働いていて、今の人類では分析できてないらしい。


「やっとダンジョンに入れるんだ……!」


 クラスメイトの一人がそう話す。


 僕達がやってきたダンジョンの入口――――不思議な紫色の水が波を打つ泉だ。


 広さは学校の体育館くらい広い泉は、なんと、その上を普通に歩ける。


 常に波を打っているので、ものすごく不思議な感触がするが、歩いても何か弊害が起きるわけではない。


 それと中に入れるのはあくまで【開花】した人だけなので、子供や開花していない人が間違って中に入ることもできない仕組みになっている。


 それもあって、入口を守っている警備員とかもないし、開花した人ならいつでもだれでもどこからでも入れる。


「中に入る時は強く、ダンジョンに入ると認識すれば入れるぞ」


 そう話した先生が一番初めにダンジョンに入る。


 足元から虹色の光の粒子が先生を包み込むと、忽然(こつぜん)と姿を消した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ