ブサイクどうしで結婚しよう!(周りの目なんて気にするだけ無駄)
ジャンルは恋愛にしましたが、
書く人の展開次第ではパニックやホラーでも書ける作品かなと。
俺は今、3歳年上の知人女性のアパートにいる。
この女性とはマッチングアプリで知り合った。
女性から俺に対して「いいね」が届いており、俺がそれに反応してやり取りが始まった形だ。女性はマッチングアプリにも関わらずトップ画像ではマスクを着用していた。
俺自身はもちろん、多少の工夫はしたものの素顔の画像を出していた。
普通は、『奇跡の一枚』とか『詐欺メイク』とか『加工』をしてでも顔が全部うつっているはずだが、女性はマスク装着だった。
「感染症に警戒しまくりな人だったらやだなー。いっしょにいても息苦しくなりそうだし。」
最初は乗り気でなかったが、何度もやり取りを進めていくと、
女性「目はメイクでごまかせるけど、鼻はどうしようもないので」ということだった。
そんなもんかと思いつつ、やり取りを重ねて本日初デート。
ショッピングや映画館などベタなデートだったが、そこそこ良い雰囲気になったと思う。コロナとかいう感染症流行のご時世だったのでデート中にも女性がマスクを外すことはなかったが、俺も外さなかったしそんなものだろう。
女性の誘いでアパートに入ったのが、さっきのことだ。
コンプレックスなのかもしれないがそろそろ、マスクの中が気になるな。
初デートで高まっていたし、かつアパートに呼ばれたという特別感、そして3歳年下という立場から傍にいき、積極的にいく。
「キスしたいからマスクとってよ」
女性は驚いたような目となった後、話し出す。
女性「でも、ブスだよ」
「ブスかどうかなんて分からないじゃん。」
女性「いやいや、ブスだよ」
想像通りではあったが女性は抵抗感を示す。とはいえこういったことは俺も経験済みだ。めげずに更に近づきマスクに手をかける。
女性「やめてよ!」
「いやいや、いいじゃん。今日のデートは凄く楽しかったしさ、ブスだなんで思わないからさ、マスクとってよ。」
それでも女性は嫌がっていたが、俺も正直この高まりを止められない。
更にやり取りが続いて、女性からある言葉が出る。
女性「分かったわよ。外すから。でも外すなら1つ約束してほしいな。」
「約束?」
女性「そうよ、マスク外すから、その代わりさ、結婚してね。」
「けっ、結婚!?」
女性「そうよ結婚するなら、外すわ。」
デート初日で結婚かよ。
少し考え込む。
とはいえデート自体は楽しかったし、話も凄く合う気がするし。ま、うまくいかなきゃ理由をつけて断ればいいか。
「そうだね。今日のデートは凄く楽しかったし、結婚するよ!」
女性「ありがとう、それなら外すわ。ちなみに夫婦は血のつながりがないのにナゼか似ることが多いんだけど、私と同じような顔になっても大丈夫!?」
言っていることがよく分からないな・・・。
よく分からないが、それに合わせて返答する。
「うん。そりゃあ夫婦だから同じような顔になっても大丈夫だよ」
女性「今の言葉忘れちゃダメだからね!じゃあ、マスクを外すわ。」
そうして女性はマスクを外した。
俺はすぐにでもキスをしようと身を乗り出したが、マスクを外した顔の特に鼻を見た時に思わず止まってしまった。
女性のあらわになった鼻であるが、これでもか!というレベルの豚鼻だった。鼻の穴が上向きで突き出ていて、ぷっくりと大きく膨らんでいた。今まで豚鼻っぽい女性とも出会ったことはあるが、そのレベルを遥かに越えたリアルな豚鼻だった。養豚場にいた豚が突然変異で人間になったようなレベルの。
しばし呆然としていると
女性「どうしたの? やっぱりブスだと思っているんでしょ?」
俺はとまどいつつも平静を装い、言葉を出す。
「いやいや確かに特徴的な鼻だけど、ブスではないと思うよ。」
女性「ふふふ、無理しちゃって。ま、いいわ。さっき約束したからね。」
その瞬間、俺は女性に押し倒された。
仰向けになった俺に対して、上に乗っている豚鼻の女性の方から積極的に唇を重ねてきた。豚のように鼻息も荒い。
とはいえ、豚のような鼻をして鼻息荒いことを除けば普通に女性だった。唇を重ねる技術も凄く、豚要素は若干気になる程度で、快感だった。俺は女性にリードされるまま、キスし続けていた。
女性「じゃあそろそろ約束したことをするね。夫婦なんだから、あなたも同じような顔になれるように。さ、お飲みなさい。」
その瞬間、女性から大量の唾液が俺の口元に流れてきた。
いや俺はそういう趣味はないんだが!
思わずそう言いたいし、その唾液を口から出したかったが、俺の口は女性の口で抑えられておりできなかった。
大量すぎるので、「ごっくん」と何回か飲み込んだ。
そうしているうちに俺は顔に熱さを感じ、意識を失っていった。
どれぐらいの時間が経っただろう。
目が覚めると隣では女性が豚のようなイビキをかいていた。
眠る前の女性とのキスを思い出す。
濃厚なキスでとても快感だった。
快感だったが冷静に考えて女性の鼻が豚すぎる。
結婚という言葉に勢いで頷いたが、やっぱり断ろうかな。
でも記憶違いかもしれないし、もう1回見てから判断するか。
ベッドから降りて女性の寝顔がはっきりと見える側に回る。
女性の顔を見た瞬間、俺は吹き出しそうになるのを堪えて心の中で叫ぶ。「やばい、豚すぎる!」
昨日の記憶では豚みたいな鼻だけといえばそれだけだったが、
俺が寝た後にメイクも落としたのか、すっぴんで寝ており、
それが一重の細い目だった。まだ目を開けていないので断定はできないが、おそらく、すっぴんは愛くるしい目ではない。
豚顔は豚顔でもペット用の豚のような愛くるしい豚顔ではなく、養豚場の豚の醜さを大いに感じるような豚顔だと思われる。
驚きつつも、納得する。
そりゃあこんな顔だったら、結婚でも誓った相手じゃなきゃマスクを外せないし、画像も目元を詐欺メイクしなきゃ出会いすらままならないものな。
とはいえ、それと俺の恋は別問題だ。
女性が起きたら、謝って、結婚を断ろう。
絶対に女性の顔のことを他言しないからと。
顔を洗って帰る準備をするか。
そう思って自分の顔に触れると、いつもの顔とは違うような出っ張りを感じた。
「え? 何かどっかで怪我したのかな?」
もう一度、顔を丁寧に触ってみる。
真ん中の部分が変だな。
口元は、髭の生え具合とかもいつも通り。
おでこ周りもそんなに変わりがない。
ただ、鼻が今までと違う。
元々の俺の鼻は、鼻の穴は下を向いており、鼻をほじろうとする時にはしっかりと下から指を入れなければいけなかった。
それが今では自分の鼻を触るだけで指が鼻の穴にすっぽりと入るし、鼻の穴が凄く上向きなのが分かる。
「これって、もしかして・・・」
俺は昨日のことを振り返る。
マスクを外すお願いをした時に女性から言われたことと、大量の唾液を飲まされる前に言われたことを。
女性「ありがとう、それなら外すわ。ちなみに夫婦は血のつながりがないのにナゼか似ることが多いんだけど、私と同じような顔になっても大丈夫!?」
女性「じゃあそろそろ約束したことをするね。夫婦なんだから、あなたも同じような顔になれるように。さ、お飲みなさい。」
もしそれが本当なら、俺は女性と同じ醜い豚顔になったってことか!?
洗面所の鏡にうつっていたのは残酷にも、醜い豚顔の俺だった。目は細いし、鼻の穴は上向きで突き出ていて、大きいし、まさに養豚場から脱走した豚が突然変異で二足歩行になったレベルの醜い豚顔だった。
「そんなバカな・・・」
イケメンではなかったが、愛着のあった自分の顔が、こんな醜い豚の顔になってしまうとは。
女性「おはよう!ダーリン!」
後ろから笑顔で近づいてきた。
「笑い事じゃないよ。この顔どうすれば。」
女性「え? だって約束通りじゃん?マスクを外す条件として、私と結婚すること、そして夫婦なんだから同じような顔になるって約束したじゃん!」
「そりゃあそうは言ったかもしれないけどさ。こんな顔じゃ外を歩けないよ。」
女性「何言ってるのよ!今はコロナでマスクが当たり前じゃない。豚の鼻だけ隠せれば大丈夫よ!私がそうだし。」
女性「それにさ、結婚したらさ、周りの目なんて気にしなくなるよ。ほら一緒に鏡を見て!」
鏡には醜い豚顔女性と醜い豚顔男(俺)がうつっていた。
「醜い豚が2匹じゃねーか!」
女性「顔が似た素敵な夫婦よ。もう、吹っ切れなさい!」
そして妻となった女性は鼻息荒く、唇を重ねてきた。昨日も思ったが本当にキスは上手い。とても心地よい。いつまでもキスをしていたいぐらいだ。俺も呼応するように興奮して鼻息荒くキスをし続ける。
唇を離し、妻が話す。
妻「確かに私とあなたは醜い豚顔かもしれないけど、そんなこと愛し合っている時にはどうでもよくない?夫婦で一緒に愛し合える関係ってそれだけで素敵だと思う。」
俺は状況を完全に受け入れられたわけではなかったが興奮していたので一緒にベッドにいくことにする。
俺と妻はベッドで横になり鼻息荒く、愛を確かめ合っていた。
何度も何度もキスをした。その度に妻の豚顔を見ることにはなったが、そんな感情よりも、愛し合っているという実感が凄く幸せだった。
今まで何人かと付き合ってきたけど、ここまで愛し合えたことはないかな。
数日後、役所に婚姻届を提出し、法的にも夫婦となった。
テンションが高まったので帰り道にマスクを外してキスをした。
通りすがりの人からは
「ブサイク同士がイチャイチャしている!キモい!」
なんて思われた可能性も大だとは思うが、そんなこと考えるよりも目の前の女性と深く深く愛し合うことが本当に大事さ。
恋人が欲しいとか、結婚したいとか言っている割には、相手の顔等を気にして踏み切れない層に向けた想いを込めても書きました。
最近そういう人が多いですし、相談受けることもありますし。
容姿を気にして孤独になることに納得しているならいいですけど、それがそうでもないようなただの見栄とかだったら、気にせずに、自分自身もブサイクであることを認識してブサイクカップルで楽しんで結婚までいけば幸せだと思います。
(自分自身がブサイクではないと思う人も、鏡の前で豚のように鼻を押し上げてみてください。そうすれば豚みたいなブサイクがうつっているはずです。)
私も豚顔ではないですが、程よいブサイクなので、
ブサイクな女性とばかり付き合ってきています。
「それでいいじゃん!」っていうのがテーマです。
☆女性が主人公を同じ顔にするという能力の説明は本文中でされていませんが、長く連れ添った夫婦は似てくるというものを拡大解釈して、そういう能力を持っている人もいるのかもしれないなというファンタジー要素(?)と考えてもらえればと思います。