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「ふーん。じゃあさ、僕を助手だと思って何か謎を解いてみようよ」
突然、浅葱君はそう言った。
「謎を?」
驚いて目を開けると、やはり浅葱君は優しく笑ってこちらを見ていた。
「うん。」
頷くたびに光を反射する髪は人のものとは思えないほど輝いている。
「何か問題出すから。」
「うん。」
たくさん小説は読んでいるが、謎解きに自信がある訳ではない。少し、弱気に頷いた。
「何がいいかな〜。」
うーんと腕を組んでいる浅葱君をぼんやり眺める。夏の日差しに透ける彼は、やはり同じ世界の人間には思えなかった。浅葱君は幻だ。どこまでが私の想像なのか。彼は存在しているのか。そんなことまで考えてしまう。
「考えるのは中々難しそうだな。」
それ以上はダメだと無理やり自分を現実へと戻す。
「あ、そうだ!いいこと思い出した!」
浅葱君はパンと両手を叩いた。
「いいこと?」
「そう!昨日、図書館の受付で女の子達が話しているのが聞こえたんだけど」
「昨日だとツキとチヨが図書当番かな。」
同じ学年の元気な女子二人だ。二人とも好きなジャンルがなかなか珍しく、私とも話が合う。
「そうそう。月岡さんと千代田さん。話したことないけど二人とも元気でいつも楽しそうだから覚えちゃった。」
「楽しそうっていうか、うるさいな。」
特にツキは声もでかいし、動作が大袈裟でよく物を壊す。運動神経もよく、運動部からしょっちゅう勧誘されているのに何故か図書委員をしている。
「ふふ。まつりちゃん仲良しのくせに。」
「…。こんな私にも話しかけてくれるいい子達だとは思う。」
「デレたね。」
私が黙っていると浅葱君は続けた。
「午前中に月岡さんが旧校舎へ行ったらしいんだ。」
「うん。」