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〜お盆あけ〜
新校舎から旧校舎、山へと続いている渡り廊下や巨木に何枚もの貼り紙がしてある。紙は雨で濡れても大丈夫なようにラミネートされている。そこには熊注意!という蛍光の文字と下手くそなクマの絵が描かれていた。
「なにこのチープな張り紙。」
図書当番で学校にやってきた月岡と千代田は、その中の一枚、巨木に貼られた紙をみている。木には爪で引っ掻いたような跡もある。木と木の間には鈴も掛かっている。
「ここ熊が引っ掻いたんだね。」
千代田が爪痕を見ながら言った。
「こんな校舎近くに熊出るの怖いね。」
風が吹いてシャラと鈴が鳴った。熊よけでつけられたのだろう。少し怖くなった二人は、その場所から離れた。
「しかし、ポスター2秒で作りました感がすごかったな。」
実際、急いで準備したので貼り紙には力を入れていない。パッと見てわかるようにと武田先生が描いた熊の絵は、紅林と浅葱からみても酷かったが、直す暇もなかったのだ。
「でも、逆に切羽詰まってた感もあるよね。」
月岡のフォローが入る。これを貼った際、浅葱も同じように、逆に急いで準備した感があっていいんじゃない?と言ったが、紅林に切羽詰まってたらこんな熊の絵描かないだろと一蹴されてしまった。
「ってか、本当に熊でるの?」
こんな校舎近くにと月岡が首を傾げる。
「出るんじゃない?裏山、鬱蒼としてるし。」
もう登山なんてできないねぇと月岡が残念そうだ。月岡と千代田は、二人で山頂に登りUFOを呼ぶ会を開こうかと話していたところだった。何年も人が足を踏み入れていない山なので、無事に登り切れる保証は無いのだが、月岡はあたしがいれば大丈夫でしょと楽観的だった。他の山でいいじゃん。と千代田がフォローを入れるとそうだねと早速違う山の候補を考え出した。