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「あー2階にあるんだよ。生徒は入れないところ。」
「なるほど。」
武田先生と浅葱君は気の置けない仲らしく、会話もスムーズだ。久しぶりと言っていたのに、相当に仲が良かったのだろう。
「入れ替えてる時、2階の床抜けちまって。壊れてた人体模型がさらにばらばら散らばったんだよ。ほら今こんな状態。」
先生は準備室の中を指差した。準備室の天井には穴が開き、床には天井板と、まだ集めきれていない人体模型のパーツが落ちている。たしかにこれは悲惨だ。誰かに見つかる前に、片付けなくてはいけないという気もわかる。バラバラの人体模型には、その首も含まれていた。こちらを見つめる、やけにリアルな首を見て思いついたことがあった。
「浅葱くん、ツキの生首騒ぎ。」
とだけ伝え、首を指さすと浅葱君もピンときたらしい。
「あー。なるほど。」
古い漫画のように、ポンと手を叩いた。
「推理するまでも無かったな。」
少し残念に思い、そう言うと
「ふふ。残念。」
と浅葱君は楽しそうだった。
「何が?」
2人で耳打ちし合っているのが気になったのか、先生はそう聞いてきた。
「いや、こっちの話です。」
冷たく言ってしまう。
「そんなことより、片付け手伝ってあげる。」
浅葱君は笑顔で首へ手を伸ばしたがスルッとすり抜けてしまった。
「油断してた!ちょっと気を抜くとすぐこうだよ。」
次はゆっくりと首に触れる。今度はふんわりと持ち上がった。
「大丈夫。あと少しだし。」
先生は人体模型のパーツを袋に入れていく。天井板は、自然と壊れた体でいいだろとそのままだ。やはり、色々とめんどくさがりなようだが、最後、首を浅葱君から受け取る際、少し微笑んだ気がした。
「このバラバラ人体模型どうするんですか?」
二人の和やかな雰囲気が堪えたので、少し声を張ってしまった。
「あー埋める。」