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ツキ「確かにこの学校の図書委員、妖怪好きな人多いけどさぁ。」
チヨ「一個上の川島先輩なんて本好きなんて皆歴史オタクだから三国志の好きな人物聞けば仲良くなれるとか言ってたし。」
ツキ「それは嘘だわw私三国志あんま知らないし。」
ガタッと音を立てて千代田さんが立ち上がった。
チヨ「!!!!つっちゃんそれは人生損してる!絶対、読んで!横山先生の名作マンガ全巻持ってくるから!絶対つっちゃんも夏侯淵が好きになるから。」
僕は吉川先生の小説で読んだなぁ。懐かしい。吉川先生と言えば『少年倶楽部』という雑誌で書いていた『神州天馬侠』が好きだった。もちろんリアルタイムで読んだわけではない。お父さんの書斎に復刻版があったのだ。挿絵付きの雑誌で、大正時代に特有の美少年が描かれていた。最近では、挿絵の方が有名になってしまったが、武田信玄の孫を主人公にあてた設定からして面白い。ちなみに『少年倶楽部』にはあの大佛先生も連載を持っていた。吉川先生に大佛先生、挿絵は高畠先生や伊藤先生だなんて、なんと素晴らしい雑誌だろう。
大佛さんといえば、この前紅林さんとノーベル文学賞の話になった際のことだ。サルトル先生がノーベル文学賞を辞退した作品『嘔吐』で述べられている、事物により吐き気を覚えるといった記述に似たことが、大佛先生の『白い姉』で先行して述べられているらしいと紅林さんが言っていた。蒐集家の紅林さんが「まぁわたしも『白い姉』を読んだことがないし、目にしたこともないんだがね。」と言っていたので稀覯本なのかもしれない。そう言われると読みたくなるのが読書家の性で、紅林さんは早速リクエストを出すと言っていた。ついでに『鞍馬天狗』も頼んでもらった。却下されたら国会国立図書館にいける年になるまで待ってもらうことになるなと笑っていた。
話は三国志に戻るが、紅林さんは北方先生の小説を読んだらしい。ハードボイルド仕立てになっているので、キャラクターがとにかくかっこよくてオススメと言っていた。
だいぶ脱線してしまった。月岡さんと千代田さんに話を戻そう。
ツキ「圧が強いし、夏侯淵いまいちわからないし。まぁでも読んでみたいわ。何巻あるの?」
チヨ「60巻。」
ツキ「やばwww台車押して登校しなきゃ。」
チヨ「じゃあ、次の図書当番の時にね。」
二人とも興奮がおさまったかのように静かに席についた。
今回、私がしたい話しかしてないです