プロローグ
ゆるーい話です
「あんた、はなびちゃんのこと、ゲームじゃないんだよ。そんな探偵ごっこいい加減やめなさいよ。楽しそうにして気味が悪いわ。はなびちゃんじゃなくてあんたが…」
母に言われた言葉。
思わず家を飛び出して、図書館に逃げ込んだ。もちろんお盆の学校はシンとしている。鍵だって開いていない。昔、探偵小説で読んだハリガネを使ったピッキングでドアが開いた時、はははと乾いた笑みが溢れた。まさかこんなので本当に開いてしまうとは。
図書館の冷房はついていないはずなのに、どこからか冷気が漏れているようで、足元に涼しい風が触れた。不思議に思って見渡すと、普段使われていない準備室からガタッと音がした。
そのまま、準備室の方へ歩いて行き、ドアを開けようとしたが、鍵がかかっている。入り口のドアと同じように鍵穴にハリガネを差し込んだ。その間も準備室からは微かに音がしている。鍵が開いてから、何が潜んでいるかわからないその準備室のドアを開けるのに、少しも躊躇はなかった。
どうでもよかった。
ガララと何かから回るような大きな音を立ててドアが開いた。
昨日読んだ本に出てきた怪人がいるのではという予想は大きく外れた。いたのは少し背の高い青年だった。驚いて手に待っていたハリガネを落とした。カランと小さく転がった。青年は大きな目をさらに大きく開いた。
「あ、高校生の先輩ですか?すみません。私中等部の紅林です。人がいると思わなくて。驚いてしまってすみません。」
青年は、清水のように透き通った青い目をしている。肌も異常なほど白くて、普段から日にあたらない生活をしていることがすぐわかった。上履きの色は青。高校2年生が履く色。
「ごめんね。ここ閉架の貴重な本あるから忍び込んじゃった。君は図書委員の子だよね?」
青年は何故か謝ってきた。そしてハリガネをチラリと見たが、拾ってくれる訳では無かった。
「はい。」
しゃがんだ時に青年の足元が見えた。
こんな時期に、一人で準備室に。
「あの、先輩もしかして…。
何かあれば優しく教えて下さい