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不思議なダンジョンで1000回救える風来の異世界大冒険  作者: 野介
エルフ、不退転を強いられる
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不思議なシステム②

同じフロアも巡回し尽くしたため、階段のある部屋に向かっていると、先の部屋のマップに赤い点が出てきた。

「このマップの赤い点はモンスターですよね。なんで同じ部屋にいなくてもわかるんですか?」

「ああ。モンスターハウスに一回踏み入れるとそのフロア全体でモンスターの場所が把握できる様になるんだ」

「なんでですか?」

「そういう仕様だ」

事細かに説明を受けても面倒だし、それで良いのかもしれないが、なんだか雑である。探りを入れていると、エテエテという小型の猿モンスターが部屋に入ってきた。こいつも素早さが厄介なモンスターなので、このシステムの中では倒すのは余裕だろう。私の方がモンスターに近い距離であったので、相手は部屋の中に走る水路に沿って一歩一歩こちらに近づいてきた。

「たあ!」

私も大分慣れてきていたので、スタッフで殴りダメージを刻む。

「あー、そこ。あまり位置どりが良くない」

男の声はボソッと、独り言の様なので、よく聞こえない。

「えっ?位置どり?」

言われた瞬間、私はエテエテに足を取られ、視界が天井を向いた。背中に痛みが入り、どうやら転ばされたことに気がつくが、すぐに立ち上がり次の一撃で敵を倒した。

「大丈夫でしたよ?」

そう言って振り返ると、男が口に手を当ててこちらを見ている。

「何ですか?」

「まあ、とりあえずアイテム、と念じてみろよ」

「え?」

言われるがままに念じてみると、ステータスやマップの時と同じ様に目の前に文字が浮かんでくる。

「あ、これがさっき言ってた、20個のアイテムが持てるとかいう一覧で…。なるほど、所有物を確認するのは便利ですね」

「そうじゃなくて、さっき転ばされただろ?このシステムでは、転ぶと一部の所持アイテムが懐から飛び出て床に落ちるんだ」

振り返ると、確かにさっき拾った茶色の草が落ちている。あとは水路が走っているだけだ。アイテム欄にも茶色の草の名前がない。あれ、それとパンがない。大きなパンだ。

「え?」

床をまたよく見てみるが、茶色の草しか落ちていない。念のため、懐や手持ちのバッグに無造作に手を入れても、感触がない。

「あの、アイテム落とすって、複数ですか?」

「複数だ」

「あああああ!」

私は背後の水路に駆け寄って、手を地面につけて這いつくばって中を覗いた。

水の中にはスペルカードと、パンが水没していた。

「あああああ!よりによってえええ!パンがあああああ!」

パンを拾おうとするが、なぜか水路に触れることができない。

「何で!」

「水路には入れない」

「何でですか!仕様ですか!」

「そうだ」

「ぐうううう!」

私は唸った。腹の音ではない。満腹度は12だ。回復魔法を一回でも使えば直ぐに飢餓状態に陥る。

「拾う方法はゼロですか?」

「まあなくはないけど…」

「やって下さいよ!」

「うーん…」

男は非常に嫌そうな顔をして、アイテムボックスを見始め、スペルカードを一枚取り出した。少し間を空けて、呪文を唱えると、小さな火球が宙に浮かんだ。

「ええ、攻撃魔法?」

「違う」

待っていると、見る見るうちに部屋の熱気が上がり、水路の水が枯れた。

「あああ、ありがとうございます!ありがとうございます!」

私は物乞いのように感謝をし、落ちたアイテムを取り出した。

「ななな、何でパンにカビが!?」

湿ったパンと紙を取り出すと、すでにパンにカビが生えまくっていた。すぐに取り出したのに!

「仕様としか言えない」

助けを求める目を察知したのか、彼はそれだけ言うとまたさっさと階段の方に向かってしまった。


私はカビたパンを手にしばらく持ち、呆然と眺めていました。カビの形状を何とか模様だと思い込みたかったのかもしれません。実際、最終的には銀河を感じるまでになっていました。

「ようやく10ターンか」

気がつけば、私はダンジョンの床に横たわっていました。見上げると男がモンスターと戦っています。どうやら、今回の副作用は10ターンの間行動不能になるものだった様です。

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