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異世界転移!  作者: 中原
18章
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5話

 入間は空から降りてきて風の剣に力を込め始めた。

 風の剣が今までにないほど強烈な光を放つ。

 俺も2本の剣に力を集める。


「喰らええええ!!」


 風の剣から大きな竜巻が放たれた。

 入間はこの一撃に勝負を賭けて来ていた。


「2人には今まで散々お世話になったね。けどもう少しだけ力を貸して貰える?

俺は入間を止めたいんだ!」

『ああ!』

『もちろん!』


 俺は二つの剣に魔力を集中させ、炎の渦と土の柱で竜巻を迎え打つ。


「はああああああ!!!」

「ラアアアアアア!!!」


 炎と土が風の塊にぶつかる。

 威力は互角で、爆風を巻き起こしながら弾けた。


「はぁはぁはぁ……」


 魔力も体力も底を尽きた。

 入間は?

 土煙が徐々に上がって行く。

 入間も相当疲れているようで肩で息をしている。


「もう諦めたら? そんな状態じゃ世界征服なんて無理と思うよ」


 しかし体のダメージとは裏腹に入間の瞳の奥にある強い光はまるで衰えない。


「腕が折れただけ。魔力が底をついただけ。ただそれだけだ。どうして賢者の書を諦めなきゃいけない!? たったそれだけの事でやめるなんて馬鹿げた事、アイツに言えると思うか!? 俺はアイツのためにも最後まで戦い抜く!」


 入間は折れた右腕も使い両手で剣を持ち駆けてくる。

 苦痛で顔が歪んでいる。

 それでも気合いで剣を振り下ろしてくる。

 俺も剣を振り、剣同士がぶつかり合う。

 剣気が弾け、俺たちは同時に後ろへ吹き飛ばされる。

 そうか。入間は自分の意志だけじゃ引き返せないところまで来ていたのか。

 でも、だから俺がここにいる!


「ハアッ!」


 俺は入間に詰め寄り、水平斬りをする。

 入間は最小限の動きで斬撃を回避し、次の攻撃動作に入った。

 入間が下から抉るように剣を振って来る。

 俺はそれを土の剣で防ごうとする。


「っラア!」

「!!」


 入間の気合の入った一撃で土の剣は弾かれ、俺の脇がガラ空きになった。

 そこに入間の回し蹴りが入る。


「ぐっ!」


 ミシッ、と肋骨の軋む音が響く。

 それでも右足で踏ん張り耐える。

 絶対負けない!

 体力も魔力も底を尽きたが、気力はまだある!


「はあっ!」


 炎の剣を振る。

 炎の剣と風の剣がぶつかり合い火花を散らす。

 火花を散らしながら渡り合うこと数合。

 勝負が決する時が来た。



「ラアアアアア!!」


 入間は風の剣を振り下ろす。


「はああああ!!」


 俺は炎の剣を振り上げる。

 剣気と剣気がぶつかり合い、弾けた。

 そして風の剣が入間の手を離れクルクルと回転しながら飛んで行った。


「俺の負けだ」


 支えがなくなった入間は静かに地面に倒れた。


「殺せ」


 虚空を見つめながら入間が呟いた。


「殺さないよ。言ったじゃん俺は入間を止めに来たって」

「それは無理だ」

「どうして?」

「俺は賢者の書を手に入れる事を……世界征服をやめない。もしお前が殺さないというなら他の奴に殺されるだけだ」

「……入間は今いる仲間達が死んでもいいって思ってる?」

「思っているはずないだろ」

「だよね。でももしこのまま入間を殺せば彼らはきっと敵討ちに来る。そしたらどうなるかわかるよね?」


 彼らは入間の後を追うことになる。


「この戦いを止めれるのは、入間の仲間たちを救えるのは俺じゃない。入間だけなんだ」

「だが、それではっ」

「わかってる。でも一番大事なのは今いる仲間達だよね? それとも賢者の書が手に入れば生き返らせれるからどんな死に方しても別に構わない? 」

「……いや。もう仲間の苦しむ所は見たくない」

「ならこの戦いを終わらせよう。その後リアムの喜ぶ事をしよう。俺も手伝うからさ」

「……もし賢者の書しか、世界征服しかなかったら?」

「そうだね……その時はもう一度戦おう。今度は覚悟を決めて」


 俺は入間の目を見据えた。


「ふっ……無茶苦茶なヤツだな。まあいい。とりあえずはそれで妥協しとってやろう」


 入間はそう言って目を瞑った。


『……ありがとうね』


 聞き慣れない少年のような声が聞こえた。

 風の剣だろう。


『……イリマを止めてくれて。僕じゃ止めれなかったから』

「もしかして君? 俺に入間とリアムの夢を見せたのは?」

『……うん。イリマがああなったのは僕のせいなんだ。ごめん』

「みたいだね」

『……ごめんそれとありがとう』


 風の剣はもう一度謝罪と感謝を口にした。

 あー、疲れた。

 そう思っていると後ろから声が聞こえた。


「イオリーッ!」


 振り返るとアリアさんが凄い勢いで走り込んで来ていた。

 俺は安堵で頬を緩めた。


「アリアさ……ング!」


 止まると思っていたらそのまま抱きついて来られた。

 油断していたので腰が折れそうになるほど曲がる。


「心配したのよ! 負けそうになってるんだから! もう!」


 アリアさんは目に涙を溜め、怒ってるんだか泣いてんだかよくわからない表情だ。


「心配かけてごめん。でも勝ったよ」

「勝つにしてももっとスマートに勝ってよ」

「次はそうする」

「頼むわよ」

「……」

「……」


 そこで俺たちは冷静になった。

 なんで抱き合いながら話しているんだろう、と。

 アリアさんが俺の首に回していた腕を解き、2、3歩後ろに下がった。


「……コホン。それで、イリマは?」


 アリアさんが赤い顔して聞いてきた。


「入間はとりあえず世界征服をあきらめてくれたよ」

「じゃあ……」

「うん。俺達の勝ちだ」

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