4話
「チッ!」
炎から抜け出した入間が舌打ちをしながら空から降りて来た。
怪我はしてるがどこか動かないとかはなさそうだった。
「まぐれで当てただけで調子に乗るなよ!」
入間が風の剣の刀身に竜巻を纏わせながら接近してくる。
あれに触れてはいけないと頭より先に体が理解した。
剣に力を集中させ炎を纏わせ、振り下ろしてくる剣を防ぐ。
剣と剣の押し合いになる。
「くっ……」
「むぅ……」
両手で剣を持つ入間の方が強く、力負けしてしまう。
「ッ!」
俺は土の剣に魔力を注ぎ土柱を作り出し、入間を攻撃する。
入間は土柱による攻撃を喰らう前に後ろへと下がった。
それに合わせ土柱を追尾させる。
「喰らうか!」
風の剣を空に向けて持ち上げると入間を中心に竜巻が発生し、追ってきた土柱を粉々に砕いた。
竜巻が消えて行く。
「どこに行った!?」
入間は竜巻がブラインドとなり俺を見失っていた。
「後ろか!」
竜巻が消える前に後ろに回り込んでいた俺は、炎の衝撃波を出す。
気がついた入間は振り向きざまに剣を振り下ろす。
三日月型の衝撃波は2つに割れ、入間の横を通過して行く。
これだけ崩しても決まらないか!
「貰ったァ!」
入間が剣を突き出し、一際大きな竜巻を出現させた。
どこに動いても避けられそうにない大きさだ。
だったら迎え撃つしかない!!
ありったけの力を込めると剣から火柱が上がった。
剣先から炎の渦を出す。
炎と風がぶつかると辺りは眩い光に包まれた。
「オラアアアア!!」
「くっ……!!」
押され気味だ。
やはり入間の方が強いっ。
どうしたら勝てる? 俺が入間に勝ってるところはどこだ。
『イオリ、耐えろよ!』
『ここが踏ん張りどころだよ!』
….あるじゃん。俺が入間に勝ってるところ。
俺は左手に持っていた土の剣を強く握る。
今まで両方の剣を同時に使ったことはないけどできるはず!
土の剣を振ると、入間の周りを囲むように土が隆起し、無数の土柱が現れた。
土柱が入間に向かって伸びて行く。
「チィ!」
入間は俺に風を出すのをやめ、土柱の方に剣を向けようとする。しかし間に合わず、柱が入間に激突した。
それと同時に俺も爆風に巻き込まれた。
「くぅ……」
飛ばされないよう踏ん張り、どうにか耐えた。
風が止み、前を見ると入間が右手をダラリと下げて立っていた。
俺も全身に裂傷を受けているが、入間の方がダメージが大きそうだ。
入間が片手を使えない今、接近戦が有効だ。
痛む身体に鞭を打ち、俺は入間との距離を詰める。
「ハァッ!」
炎の剣を振ると入間は剣を左手に持ち替え防いだ。
剣と剣が弾けて火花を散らす。
俺は続けて土の剣を横薙ぎに振る。
俺は2本の剣を振るい、攻める、攻める、攻める!
片手、しかも利き手じゃない方の手では、さすがの入間でも分が悪い。
徐々に余裕がなくなっていってるのがわかる。
俺の剣が入間の剣を弾いた。
空いた胴に蹴りを繰り出したところで、入間は風を使って上に逃げた。
俺の蹴りが空を切る。
おしい。もう少しだったのに。
「クソ! なぜ俺が押される!」
苛立った声を入間は出した。
どうしてかってそんなの簡単だ。
「入間、戦う前に言ったよね。1対1じゃ勝てないって」
「それがどうした!」
「いや、その通りだなと思って」
「何!? だったら!」
「だったらどうして俺が勝ってるかって?」
手を広げ、2本の光り輝く剣を見せる。
「簡単だよ。ここに2人も仲間がいるんだ。3対2なら俺が勝つさ」
「それは仲間ではない! 単なる武器だ!」
「そうかな? 俺は仲間だと思うよ」
ずっと俺に力を貸してくれて、心配してくれて、助言をくれて、勇気付けてくれて、見守ってくれて……彼らが仲間じゃないならなんなんだ。




