3話
「本当はスマートに勝ちたかったんだが、まあいいか」
俺が頭をフル回転させ勝てる手段を考えていると、入間が風の剣を構えた。
できればもう少し待って欲しいのだが、真剣勝負に待ったはない。
入間の周りにいくつもの小さな風の弾が出現した。
「じゃあな」
風の弾が飛んできた。
土の壁で防せぎたくない。防げば入間の攻撃が見えなくなる。
十数飛んでくる弾を俺は避けたり、炎をぶつけたりして相殺する。
「それじゃ足りないか」
再び入間の周りに風の弾が出来上がり、俺へと放たれた。
倍に増えた風弾が襲いかかってくる。
「ぐっ!」
その1つを避けきれず喰らってしまった。
鈍器で殴られたような衝撃が頭に走る。
ヤバイ。バランスを崩してしまった。
こうなったら次の攻撃を避けるのは不可能だ。
俺はたまらず土の壁を作りガードする。
ドンドン! と風弾が壁を叩く音が聞こえる。
しかしその音が途切れる。
そして次の瞬間、土の壁が崩れた。
大きな風の塊が壁を壊したのだ。
「くっ!」
俺は剣と剣をクロスさせ風の塊を押し返す。
「うおおおおお!」
風を止めようと足に力を込めるが、床がめくれて行くだけで止まらない。
このままじゃダメだ! 屋上から投げ出されてしまう!
止めれないなら逸らすしかない!
俺は2本の剣を使い風の塊を持ち上げ上方向逸らす。
「はあっ!」
落ちるギリギリのところで風の塊を上に逸らすことに成功した。
よし!
「安心するのは早くないか?」
「!!」
前から数十もの風弾が迫っていた。
気を抜いていた俺は避けきれない。
ドン! ドン!! ドン!!!
風弾で全身を強く打ち付けられた俺は、屋上から投げ出された。
や、やばい……さすがにこの高さから地面に堕ちたら骨折じゃ済まない。
「はっ!」
俺は土の剣で地面を隆起させ、そこに着地し落下の衝撃をやわらげた。
「痛っ……」
風に打ち付けられた痛みで頭がクラクラする。
「力の違いがわかっただろう」
少し上から声。見上げると入間が俺のすぐ上で宙に浮いていた。
風の力で空も飛べるのか。
「降参して世界征服を手伝うと誓え」
「断る」
「ならその剣を寄越せ。それで赦してやる」
「それも断る!」
「貴様。この状況がわかっていないのか?」
「わかってるさ」
「では何故だ? 剣を渡すだけでいいんだ。かなりの譲歩だと思うが」
「決まってるだろ。剣を渡したら入間を止められなくなるからね」
「馬鹿が」
「ぐああああっ!」
俺の周りにかまいたちが起きる。
身体中が風の牙に切り裂かれる。
「無意味な意地を張るな。無駄死にするだけだぞ」
入間が言う。
意地を張るだけ無駄か。そうかも。入間に勝てるところがないもん。
『イオリ! もういい! 僕らを渡すんだ!』
『そうしろっ。死んだら元も子もないっ。生きていればきっとまたチャンスが来る』
剣達が俺の心配をしてくれている。
その優しい言葉に甘えたくなる。
でもそれはできない。
入間は今日ここで止めなきゃいけないんだ!
このくらいの事で諦めるわけにはいかない!
俺の体はまだ動くし、魔力もまだある!
だったらやる事は1つ!
カッと目を開き、炎の剣にありったけの魔力を集める。
剣から炎が吹き上げる。
「はぁっ!」
俺は炎の渦を剣先から出して入間に攻撃した。
「何っ!?」
油断していた入間に炎が直撃し、上空へと吹き飛んで行く。
でもこれで終わりではないだろう。それくらい実力差がある。
上を見ていると屋上から塔を登ってきたアリアさんが顔を出した。
勝ったんだ。
「イオリ!」
「アリアさん。もう少し待ってて」
俺は地面から伸ばしていた柱を下ろし、地上に降りた。




