2話
入間が腰だめにしていた剣を突き出すと、剣の先から風の弾が放たれた。
速い!
俺は土の剣を振り、土の壁で止めにかかる。
しかし入間が放った風弾は、いとも簡単に壁を貫き、俺の顔のすぐ横を通り抜けていった。
頬からツーっと冷たい血が伝った。
横を通っただけだというのに頬が裂けた。直撃したらひとたまりもない。
「今のは挨拶代わりだ。次は当てる」
入間は戦うだけ無駄だと言いたけだ。
俺は土壁を引っ込め入間を見つめる。
「どうした。あまりの差に戦意喪失したか?」
「まさか。攻撃するのに壁が邪魔だったから下げただけさ」
「ふっ。その強がりいつまで続くか見ものだな」
俺は炎の剣を振り三日月型の衝撃波を出す。
「避ける必要もないな」
言って、風の剣を上に持ち上げた。すると入間の前で風が下から上に吹き、炎の衝撃波を消し飛ばした。まるで風の壁だ。
でもこれが通用しないのは想定内。
入間が衝撃波を消し飛ばしている間に俺は近付く。
炎の剣に力を溜め、赤く光る剣を振り、風の剣を折りにかかる。
「なるほど。衝撃波は囮か」
読まれてる?
いや、読まれてても剣で受けてくれれば叩き斬れる!
「だが、その攻撃ができるのはお前だけじゃないぞ」
風の剣が白く光る。
俺は構わず剣を振る。
ガキン!
剣と剣がぶつかり合い火花が散った。
折れないかっ!
「残念だったな」
「まあね。でもそれも想定内だよ!」
俺は鍔迫り合いの状態からバックステップで離れ、土の剣を使う。
地面が盛り上がり、土柱が入間を襲う。
鳩尾にクリーンヒット……とは行かなかった。
見ると剣で土柱をガードしている。
土柱によって運ばれる入間は、途中で風を出し土柱から抜け出した。
「やるじゃないか。危うく喰らうところだった」
あれくらいの攻撃じゃ全くダメージを与えられないか。
もっと威力のある攻撃をしなきゃ。
「どうした。もう終わりか?」
「まだまだ!」
土の剣で入間の周りを囲むよう数多の柱を出して攻撃する。
入間はその柱全てを風の剣で斬り壊す。
これも通用しないか。
だったらこれならどうだ!
俺は剣先から入間に向け炎の渦を出した。
「ふん」
鼻を鳴らしながら渦巻く風を剣から放った。
風と炎が衝突する。
威力は向こうが上だったようで、俺は爆風に吹き飛ばされそうになる。
1番威力のある攻撃だったんだけど、まるで意に介さない。
あまりの力の差を目の当たりにし、冷や汗が頬をつたう。
馬鹿正直に戦っても勝てない。何か策を考えないと。
一旦攻撃をやめ、距離を取る。
「来ないのか? 来ないなら今度はこっちから行くぞ」
入間がそう言うと、突如として周りの風が牙を剥き、襲いかかってきた。
俺の周囲にだけかまいたちが発生し、体が切り刻まれて行く。
「っ!」
たまらず俺は床を転がりながらその場を脱した。
急いで床から立ち上がると、前から入間が迫っていた。
入間の振り下ろす斬撃を土の剣で受ける。
「ぐっ……」
しかし入間の一撃は重く、片手では受け止めきれず、俺は剣をクロスせざるを得なかった。
両手を上げ、がら空きになった鳩尾に入間の蹴りが襲ってくる。
「ガハッ!」
俺は斜めうしろに飛ばされながら口から肺の空気を全て吐き出した。
このままだとやられる。態勢を整えなきゃ。
俺は土の柱を出して入間を遠ざけようとする。
「そんな苦し紛れの攻撃が通用すると思ったか!」
一振りで土柱を破壊すると、余波が襲いかかってきた。
砕けた土柱の破片が飛んでくる。
俺は目に破片が入らないよう腕で顔を覆って防いだ。
『イオリ! 前から来てるぞ! 横に飛べ!』
「!!」
俺は炎の剣の指示通り横に飛んだ。
元いた場所に風の弾が通過して行く。
危なかった。
「避けたか。決まったと思ったのを躱されるとイラっとくるな」
追撃は来ない。
入間が完璧主義者で助かった。
だけど今のはたまたま避けれただけだ。
考えなきゃ。どうにか入間を倒す方法を。
俺が入間に勝ってるとこはどこだ。
接近戦、魔法を使った戦い。両方向こうが上だ。でもどこかあるはず。
考えろ。考えるんだ俺。




