表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移!  作者: 中原
17章
61/67

2話

「やっちゃえ!」


 エマが命令すると水でできたゴーレムは腕を伸ばし、アリアを攻撃しようとする。

 アリアは横っ飛びで避けるが、避けた方向にゴーレムの腕が針のように伸びた。


「くっ……」


 針のように尖らせた腕の先端を、アリアは剣の腹で受けとめた。

 衝撃まで受け止めきれず、アリアは後ろの壁まで弾かれる。

 すぐさま態勢を立て直すと、剣先から水弾を放つ。

 水弾が当たりゴーレムが弾ける。


「どう!?」

「なかなかやるじゃないですか。でもまだ終わりじゃないですよ!」


 エマが右腕を上げると再び水がゴーレムの形になった。


「何度来ようと同じよ!」


 アリアはゴーレムの攻撃が来る前に水弾をぶつけ破壊する。


「まだです!」


 再度ゴーレムの形に。


「しつこいわね!」


 アリアは水弾を打ち出し同じ展開に……ならなかった。

 水弾でゴーレムは弾けず、近づいてくる。

 少し威力が弱かった?


「これならどうっ!?」


 今までの倍の大きさはある水弾を放った。

 2mを超えるゴーレムの体全身に水弾が当たり、ゴーレムの体が周囲に飛び散る。


「おおっ」


 弾け飛ぶゴーレムを見てエマが嘆声をもらした。


「曲がりなりにも剣の所有者。やりますね。でも無駄なあがきです」


 水が集まりゴーレムが現れる。

 4度目の水弾をアリアは放とうとして辞めた。

 違和感があったからだ。


(なんか大きくない?)


 ゴーレムの頭と天井との距離が近くなっていた。

 明らかに最初より大きい。


『どうやらアリアさんの放った水も吸収しているみたいですね』

「うそ!?」


 信じられないのか信じたくないのか、アリアは大きな声で言った。


「あ、気がつきましたぁ」


 エマは意地が悪そうに口元を歪める。


「でも気が付いたところでどうしようもないですよぉ?」

「それはやってみなきゃわからないわよっ」


 ゴーレムの振り下ろして来るパンチをアリアは上に飛びながら避ける。


「はっ!」


 飛び上がったアリアは、伊織が土のゴーレムを退治した時のように、頭の上から垂直に剣を振り下ろす。

 頭からゴーレムを真っ二つにするつもりだ。


(切れて行く感触がない!?)


「残念でした。このゴーレムに斬撃は効きませんよ」


 半分ほど剣が進んだところでゴーレムからアッパーを喰らった。

 アリアはゴーレムの大きな拳で全身を強く叩きつけられ、天井に激突する。


「っ……」


 天井にぶつけた後ろ頭を抑えながらアリアが着地する。


「少しは考えを改める気になりましたぁ?」

「全然!」

「そうですかっ」


 ゴーレムがアリアを攻撃しようと動き出す。


『エマさんの方を攻撃してはどうですか?』

「子供相手にそれは嫌よ」

『あなたって人は……』


 水の剣はため息混じりに言った。


(とは言ったものの簡単には倒せそうにないわね。一旦冷静になって敵を観察してみましょう)


 アリアはゴーレムと距離を取るよう動く。

 するとゴーレムの手のひらから水弾が放たれた。


「そんなこともできるの!?」


 遠距離の攻撃は手を伸ばすくらいだとたかをくくっていたアリアは、避けるのが遅れ肩に水弾が被弾する。


「くっ」


 バランスを崩しかけたが、横に1回りして立て直す。

 すると今度はゴーレムから水弾が2発連続で撃たれた。

 アリアは横に飛び2つを避けた。


「じゃあこれならどうですぅ?」


 ゴーレムの両手から無数の水弾が四方八方に放たれた。

 とても横っ飛びで避けれるような数ではない。


「くっ!」


 顔の周りを手で覆い、身を縮め被弾する面積を最小限にする。

 全身に水弾が叩きつけられる。


「もういっちょ!」


 再び無数の水弾が襲いかかってくる。

 エマは一気に勝負をつけに来ていた。


(全部避けるのは無理。こういう時、イオリなら壁を作るんだろうけど水の壁だと強度が足りないわよね。ほぼ無意味。どうすれば……あっ!)


 ピンっと頭に閃くものがあった。

 アリアは剣から水を出し自分の前に水の壁を作り出す。


「そんな薄い壁じゃ防ぎきれませんよぉ!」


 エマが言う。

 水弾がアリアの作った壁にぶつかる。

 だが、水弾が貫通することはなかった。

 アリアは水で作った壁を凍らせて壁を氷に変化させていた。


「氷も使えるんですか!?」


 と目を飛び出らせながらエマは言った。


「正確には水も使えると言ったところかしら。元々私は氷使いで、水を使えるのはこの剣のおかげだから」

「ぶーっ! 2つも使えるなんてズルいですぅ」

「これも実力よ」


 アリアはゴーレムに手をかざし凍らせようと試みる。

 ゴーレムの足が少しずつ水から氷に変わっていく。


「させませんよ!」


 ゴーレムの手から水弾が撃ちだされた。

 アリアは再び氷の壁を作ってそれを防ぐ。


(さすがに凍るのを待ってくれないわよね。いい案だと思ったんだけど……)


「くぅ……めんどくさい壁ですね。これならどうです!」


 ゴーレムが大きな水弾を放ったのでアリアは壁から抜け出す。

 水弾で壁が破壊され氷の破片が飛び散った。


「えい! えい!! えいっ!!!」


 ゴーレムが腕から連続で水弾を放つ。

 アリアは軽い身のこなしでそれらを避け続ける。


「っはぁ……はぁ。避けてるだけじゃ勝てませんよ!」


 疲れたのかエマはゴーレムの動きを静止させそんな事を言った。


「そんな息乱しながら言われてもねえ」

「んなっ! 息乱れてないです! んふー……んふー」


 エマは必死に呼吸を整える。


(意地になっちゃって。ホント、まだ子供なのね。善悪の区別もよくついてないからこんな事しているのかもね。そう思うとイリマが許せないわ)


「でも避けてるだけっていうのもカッコ悪いわね」

「そ、そうですよ!」


(嬉しそうな声出しちゃって)


「行くわよ」


 剣先に水弾を作り出す。

 そこに手をつけると水が氷に変わった。

 アリアは大きな球状の氷をゴーレムに向け放つ。


「負けません!」


 ゴーレムが氷を殴る。しかし氷の勢いに負け、半身が飛び散った。


「まだですっ!」


 左腕を伸ばし、ムチのようにしならせアリアを攻撃する。

 アリアはムチの軌道を読み切り躱すと、手を触れた。

 触れた箇所から急速に氷に変わっていく。


「させません!」


 エマはゴーレムの右手を再生させ凍りついてく左腕を手刀で切り落とす。


「まあそう来るわよね」


 アリアは加速しゴーレムに近づく。


「来ないでください!」


 駆け寄るアリアに向け、ゴーレムが右手を振り下ろす。

 拳が床を叩く。

 アリアはゴーレムの足元まで行き手を触れ、今度は足を凍らせにかかる。


「くぅ……ちょこまかと! えい!」


 ゴーレムの腕から水弾を出す。この攻撃も想定済みだったアリアは避けると、噴水まで走り手をつけ水を凍らせた。


(これでゴーレムを大きくできないわね)


 アリアは足を止め、水弾を凍らせる。


「はあ!」


 氷弾をゴーレムに向け放つ。

 足が凍っていたゴーレムは動けず、氷弾に当たり弾けた。

 水の破片が辺りに飛び散る。


「それが無駄なのがまだわからないんですか!」


 エマが水を集めゴーレムを作り出す。

 けれどできたゴーレムはエマと同じくらいの大きさしかなかった。


「ど、どうして……?」


 魔力が尽きた訳でもないのにゴーレムが出来上がらない理由がわからなかった。


「床を見たらわかると思うけど?」


 言われてエマは床に飛び散った水に目をやる。

 飛び散った水は氷に変わっていた。

 水使いのエマは氷を動かす事が出来ず、先ほどまでの大きさのゴーレムは作れなかった。


「形成逆転ね」

「くっ……」


 悔しそうにエマは唇を噛んだ。


「まだ勝負は終わってません!」

「最後までやるってわけね」


 水弾を放とうと構えるゴーレムより先にアリアは氷弾を出す。

 ゴーレムは氷弾に当たると弾け、水が辺りに飛散する。

 アリアは飛散した水をエマが集めるより先に凍らせた。


「終わりね」


 剣を鞘に収めながらエマに言う。

 エマは噴水に目を向ける。しかしそこはすでにアリアが氷に変えていた。

 水がなくなり勝ち目がないと悟ったエマは、みるみるうちに目に涙を溜めだした。

 そして。


「うぇーん!」


 泣き声とともに涙がとめどなく流れる。


「ぶぇーん!! あんたなんか大っ嫌いですぅ! バカ! バカァ!」


 などと叫びながらアリア達が入ってきたドアから出て行った。


「やっぱりまだ子供ね」


 急に泣き出したエマを見て苦笑いしながらアリアが呟く。


『あの年齢でアレだけの強さを持っていたんです。おそらく負けた経験が乏しく相当悔しかったのでしょう』

「なるほどね」


(子供相手に少し大人気なかったかしら? でも手加減できるような相手じゃなかったし、仕方ないわよね)


 アリアは自分を納得させ、上へと繋がる階段を登り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ