1話
アリアさんと2人で塔を登っているとドアが現れた。
ドアを開け中に入ると広い部屋に出た。
室内なのに噴水があったり少しオシャレな部屋だ。
その部屋の真ん中にはツインテールの小柄な女の子が立っていた。
女の子の奥には上へとつながる階段が見える。
「やはり来ましたか」女の子は言う。
「君は?」
「私は四天王の1人エマです」
四天王……こんな小さい子供が? おそらく10歳くらいだろうに。
「一応聞くけど通してくれる気はある?」とアリアさん。
「ありません」
「また俺だけなら通すってやつ?」
「イリマ様からはそう言われてます」
やっぱりか。なら素直に俺だけ通させてもらうか。
「けどあなたも通す気はありません!」
「どうして!?」
入間、部下の統率全然取れてないじゃん!
「どうしてってそんなの決まってます! 私はあなたが大っ嫌いだからです!」
「何で!? 初めて会ったよね!」
「あなたがこの世界に来てからというものイリマ様はイオリイオリイオリとあなたの話ばかり! ここであなたを倒せばきっとその話はしなくなるはずです!」
「それ俺悪くないよね!?」
「うるさい! うるさい! あなたの話なんて聞きたくありません!」
エマと名乗った少女は噴水から自身の周りに水を集める。
彼女は水使いらしい。
「私が彼女を引き付けるからイオリはその隙に上を目指して」
小声でアリアさんが言う。
「でも彼女の目的は俺っぽいよ。俺が戦ったがよくない?」
「あら? イオリは女の子をいたぶって悦ぶ性癖でもあるの?」
「ないよ!」
「だったら先に行きなさい。それともこれから先ずっと変態野郎として認識されたいの?」
「……わかったよ。先に行ってるよ」
俺が観念したところで敵からの攻撃が来た。水を操り鞭のようにしならせた攻撃だ。
俺はそれをしゃがんで避けると、一気に加速し階段を目指す。
「あ!」
エマちゃんが階段を目指す俺を見て声を出した。
水の鞭が方向を変え向かってくる。
「あなたの相手は私よ!」
アリアさんが鞭に向け水弾を放つ。
水弾が鞭に衝突し弾けた。
俺はそのまま階段まで走る。
階段を登り安全圏まで来たところでチラリと後ろを振り返る。
そこには映画の1コマのように絵になるウィンクをしたアリアさんがいた。
ここは任せたよ。アリアさん。
俺は前を向き直り階段を一気に駆け上って行く。
「あー! 行かれてしまった!」
エマは伊織が登って行った階段を見つめる。
「ちょっと! どうして邪魔するんですか!」
「当たり前でしょ。敵同士なんだから」
「せっかく日頃の恨みを晴らせると思ったのに!」
「それは残念だったわね」
「……まあいいです。もともとイオリさんは通す予定だったので。むしろ任務を完璧に遂行してるので、イリマ様から労いの言葉を貰えるかも」
エマは少し先の未来を思い目を輝かせた。
「残念だけどそれは無理よ。だってイオリが元の世界に連れて帰るんだから」
「はあ!? 何言ってるんですか!? イリマ様が勝つんだから連れて帰られるわけないでしょ!」
「いいえ。勝つのはイオリよ」
「イリマ様が負けるって言うんですか? 冗談でも笑えませんね。大体イリマ様があんな弱そうな男に負けるはずないじゃないですか!」
ムッと頬を膨らませながら怒るエマ。
「あなたイオリの実力知らないでしょ? イオリは強いわよ」
「知らなくてもわかります! 強いのはイリマ様です! ていうかあなたこそイリマ様の実力を知らないんじゃないですか?」
「し、知ってるわよ!」
「あやしいー。いつ見たんですか?」
「それはあの時よ! ほら、この間クレスに連れられて来た時……」
「その時は向こうに送り返しただけって聞きましたよぉ」
「私くらいになると対峙しただけで実力がわかるのよ!」
「えー、嘘くさぁ」
「とにかく! 勝つのはイオリよ! イオリがあんな根暗な男に負けるはずないじゃない!」
アリアの言葉でエマはその広い額に青筋を浮かべた。
「カッチーン。これには温和で有名なエマちゃんも頭に来ましたよ」
エマは噴水の水を自分の周りに集めて行く。
「成敗してやります!」
噴水の水を使い人型のゴーレムを作る。
戦いが始まった。




