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異世界転移!  作者: 中原
13章
53/67

2話

「キャー!」


 ドン!

 つむじ風が弱まり、アリアは地面に落っこちた。


「イタタタタ……」


 目に涙を溜めながら腰の辺りをさする。


『大丈夫ですか?』

「ええ。大丈夫よ。ちょっと腰が痛いくらいで」

『いえ。そっちではありません。前です』

「前?」


 前方には剣や斧を持ち、武装した男達が群がっていた。


「マジで女が飛んで来たぜ」

「やっちゃっていいんだよな」

「待て。最初は俺だ」


 ……なるほどね。

 状況を理解したアリアは思った。

 私とイオリを飛ばしたのはこういうことだったのね。

 となると、イオリの相手はあの準備運動をしていた男で、ジルはオーカンね。

 で、私の相手はこの男達……と。

 数はざっと30人ってとこかしら。

 私ならこの数で抑えられると思われたのね。失礼な話。


「馬鹿野郎最初は俺だ」

「馬鹿はお前だ。俺が先……ぶっ!」


 統率も取れず争い合う男達に向けアリアは水弾を出した。

 数人吹き飛んで行く。

 水弾に当たった男達は白目を剥き昏倒した。


「て、てめえ! 何しやがんだ!」

「逆にあなた達は私に何をしようとしてたのよ。抵抗するのは当たり前でしょ。馬鹿なの?」

「ああ!?」


 神経を逆撫でするような発言に男達はキレた。


「甘い顔してたらつけあがりやがって!」

「覚悟しろっ!」


 団子状態で遅いかかって来る男達に向け、アリアは幅の広い水弾を放つ。

 半分が吹き飛んで行く。

 もう1撃っ。

 間髪入れずに残りの敵に向け水弾を放つ。

 タメが少なかった分水弾は小さく、2人に躱された。


(雑魚じゃないわね。でもあのレベルならいける)


 敵の1人は斧を持ち、もう1人は槍を持って突進して来ている。


(遅い。これなら避けて反撃に出れる)


 しかしその思惑は外れる事になる。


『アリアさん! 左にも敵が潜んでます!』


 首を左横に向けると風弾が迫っていた。


「くっ……」


 アリアは限界まで腰を反り、躱そうと試みる。

 風弾が鼻の頭を擦りながら通り過ぎて行く。

 避ける事は出来たが、態勢を大きく崩してしまった。

 その状態で槍を携えた敵が突きを繰り出す。

 身を捻り槍を避ける。

 態勢十分なら余裕を持って避けれた攻撃だったが、態勢が悪かったせいで槍が腹部を掠めた。

 反撃と行きたかったが、敵が斧を振り下ろしていた。

 アリアは水の剣でそれを防ぐ。斧を持った敵の後ろからは槍を持った敵が寄って来ているのが見えた。


(これは楽じゃないわね……)


 アリアは敵の腹に前蹴りを入れ、その反動を使い大きく後ろに下がった。

 そして水弾を2人に向け放つが途中でハジけた。横から風弾が衝突したからだ。


(あの風弾を操ってる人、やるわね。これはちょっと、いやかなり厄介ね)


 風弾がまた飛んで来る。


(避けたらまたさっきと同じ事になるわね)


 アリアは風弾にぶつけ相殺しようと水弾を出す。

 直線的に動いていた風弾だったが、あたる直前で水弾を避けるように動いた。


(!! そんな事もできるの?!)


 風弾が完璧にアリアを捉えた。


「っ!」


 風弾がぶつかり、アリアは弾かれるように飛ばされる。


(痛っ……ちょっと侮ってたわ)


『無事ですか?』

(一応。でもそう何度も耐えれないかも)

『何か手を考えないとですね』

(そうね)


 アリアは水を剣から垂らしながら後ろへと下る。


「待ちやがれ!」


 追ってくる敵2人の間から風弾が放たれた。

 アリアは避けられないようしっかりと引きつけてから水弾で破壊する。

 敵が距離を詰めている。

 だが、アリアはなぜかそれを笑顔で見ていた。


(あと一歩……今!)


 駆ける敵2人の足元から水塊が登るように出てきてそれぞれの顎を強打した。


「ブゴっ!」

「ンギ」


 汚い断末魔を上げながら2人は倒れる。


「恐ろしいほどうまくいったわね」


 敵が倒れている地面の上にはアリアが剣から出した水が溜まっていた。


「さて、あと1人ね」


 隠れている敵の方を見ながら呟いた。

 ガサガサと草を蹴る音が遠ざかって行く。


「逃がさないわよ!」


 敵を追いかけ森の中へ。


(音は……向こうね)


 音を頼りに森の奥へと進んで行く。

 徐々に音は大きくなっているが、人の姿は全くない。

 おかしい。いくら逃げるのに必死とはいえ、全く攻撃してこないのは。


(……まさか!)


 走りながら背後を確認する。

 後ろから一際大きな風弾が差し迫っていた。

 アリアはクルリと回転し、剣先を風弾に向ける。


「はあっ!」


 風弾に水弾をぶつけ相殺しにかかる。

 だが、風弾の威力の方が数段上で水弾は弾けてしまった。


「マズっ」


 避けれず風弾が直撃する。

 ガードした腕に衝撃が走り、すぐさま背中と後頭部にもダメージが走った。

 木に激突したのだ。

 アリアはへたり込まぬよう、地面に剣を刺し体を支え前を見る。

 すると奥から前髪で顔の半分を隠したヒョロヒョロとした男がやって来た。

 勝利を確信し、ニヤついている。


「あなただけ? もう1人はまだ隠れているの?」

「もう1人なんていない。自分だけだ」

「じゃああの足音は?」

「ああ、あれか。あれはね」


 両手のひらに風弾を作り出し、それを交互に地面にぶつける。

 ザッザッザッと葉っぱを踏んだような音が聞こえた。


「こうやって」

「なるほど、まんまと騙されたわ。あなた強いわね。もしかして四天王?」

「いや。四天王ではないよ」

「へー。そうなんだ」

「まあ今日これからあんたら全員を倒す。そしたら四天王に昇格になるんじゃないかな」

「それは無理よ。私にも勝てないのにあの2人に勝てるはずないじゃない」

「そういうセリフはもっとその剣を使いこなせるようになってから言うんだね」

「ご忠告どうも。なら私からも1つ忠告。喋ってる間も気を抜かない方がいいわよ」


 そう言うと敵の周りを囲むように直径10センチほどの水の塊が地面から無数に浮き上がった。

 話をしている間に剣から出した水を出し、地面の上を移動させていたのだ。


「いつのまに!?」

「あなたと喋っている間によ」

「クソ!」


 敵も溜めていた魔力を使い風弾を出す。

 アリアはそれを難なく躱すと、水の塊で攻撃する。

 ドドドド!

 水の塊達が敵の身体全身を殴りつける。

 全身を水の塊で殴られた敵は力なく地面に沈んだ。


「私の勝ちね」







 ジルとオーカンは平野で向かい合って立っていた。


「どうだ? 1人残された気分は。不安だろう。そりゃあそうだよな。お前らは3人集まらないと俺には勝てないからな!」

「別に不安じゃないですが……」

「強がるなよ。土下座して靴の裏でも舐めたら許してやらんこともないぞ。さあどうする?」

「しませんよ。そんなの。めんどうですし」

「オイオイいいのか? そんな態度とって。奴らの飛んで行った先に誰がいるか知っているか? イオリの奴の方は四天王の1人、エイデンが待ってるんだぜ。助けに行かないとどうなるだろうな。あっちの女の方はなゴロツキの男達が2、30人待っている。今頃ヒーヒー言ってんじゃねえか。はっはっは!」


 オーカンは声高らかに笑った。

 はぁ、とジルは小さくため息を出す。


「あなたは私とおしゃべりするために2人を飛ばしたのですか?」


 それまで笑っていたオーカンの表情が一変する。

 周囲の空気がピリリと肌を刺す。


「お前、マジで何もわかってないみたいだな」

「あなたと喋っていても楽しくないです。戦うのならさっさと戦いましょう」

「しゃしゃんな!」


 オーカンは両腕を引き力を溜める。


「遅いですよ」


 オーカンが溜めた力を解放するより先にジルがレーザーを出した。


「ぐっ……!」


 レーザーで左肩を貫かれたオーカンは、苦悶の表情を浮かべる。


「っ舐めんな!」


 右腕を突き出し渦巻き状の風をジルに向け放つ。


「脆弱ですね」


 ジルは一歩も動かず、その場で光線を放った。

 光線が風とオーカンをのみ込む。


「ぐわああああっ」


 光線にのみ込まれたオーカンは、吹き飛ばされて行く。

 オーカンが止まったのは元居た場所から100メートル以上先の場所だった。

 ジルはゆっくり歩きながらオーカンに近づく。


「く、クソが……ぶっ殺してやる……」


 地に伏したままオーカンは言った。


「その状態で言われてもまるで説得力がありませんよ」

「何勝った気でいやがるんだ。さっさとかかって来い」

「戦闘不能な人に追い討ちをかけるような真似は私にはできません。戦う意思があるなら立ち上がって下さい」


 オーカンは立ち上がろうとするが、立てない。


「立てないみたいですね。では私は行きます」

「けっ。今頃行っても遅えよ。イオリの相手は四天王一強い奴だ。あの女の方もそこそこ強い奴らを集めたからな」

「大丈夫ですよ」


 ジルは笑顔をこぼす。


「2人は私より強いですから」

「けっ……」


 笑顔が眩しかったのか、オーカンは目を閉じた。

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