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異世界転移!  作者: 中原
12章
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1話

「イリマ君。残念なお知らせだ。いや、それとも嬉しいお知らせと言ったがいいかな?」

「なんだ?」

「王都攻略に失敗した」

「だろうな。もともと向こうの戦力を知るのが目的だ。それは別に構わん。それで、向こうの戦力はどんな感じだ?」

「確認できたのでレベル5クラスが3人みたい」

「3人?」


 クレスの言葉に入間の眉がピクリと動いた。

 おかしな話である。レベル5の1人であるセシルはクレスにやられたはず。そしてジルは向こうに飛ばした。

 なのに3人もレベル5クラスがいるとはどういうことだ。

 レベル5が3人という情報が間違っていた。もしくは有事に備えて隠していた人員。あるいは……


「1人はバリアを張りながらレーザーを放ち、もう1人は水を使い、そしてもう1人は土と炎を使ったそうだよ」

「……伊織達か」

「十中八九ね」

「まあいい。近くにはアリストもいるのだろう? あの3人くらい倒せるさ。それよりそれのどこが嬉しい知らせなんだ?」

「あれ? 嬉しくなかった?」

「どういう意味だ」

「そのまんまの意味だけど」

「……ふん」


 入間は鼻を鳴らした。






 次の日、1つ情報が入った。

 シュバルツナイツのアジトは森の中にあるらしい、ということだ。

 昨日捕まえた敵兵が吐いた情報という事で信憑性は高い。

 ただ王国騎士団は王都の警護等があるため動くのが難しいらしい。

 確かにもし騎士団が離れた時に攻められたら王都は一気に占領されるだろう。

 そういうわけで俺達3人だけで敵のアジトを探しに森へ入った。


「この森の中に建物とかあった?」


 森の中を歩きながらアリアさんに尋ねる。

 前にクレスとあった時はそんなのなかったけど。


「少なくともあの時にはなかったわ」

「となると、あの後に作ったのかな」

「それかもっと奥にあったかね」

「どっちにしても相当歩かないといけなさそうですね……」


 3人揃って森を歩き進めていると、前から誰かが近づいて来ている気配がした。

 俺らは足を止めて臨戦態勢に入る。


「なんだ。お前ら」


 奥からガラの悪い男が肩を揺らしながら歩いてきた。


「森の中で迷ってここまで来たってわけじゃねえよな。だとすると敵か?」


 どうやら情報通りこの森にアジトがあるようだ。

 詳しい場所はこの人から聞き出すか。


「ん? よく見るとてめえら2人は上物だな。決めた。てめえら2人は俺様の性奴れ……」

「てりゃ!」


 アリアさんが剣を振り水弾を男に放った。

 完全に油断していた男は吹き飛ばされ、木に激突した。

 背中を強打した男は気を失い、地面に伏した。


「いきなりやっつけないでよ。どこにアジトがあるか聞きたかったのに……」

「だって汚い言葉聞きたくないじゃない」

「いや、そうだけど」

「それに手加減したからすぐに起きるわよ。私もそこまで馬鹿じゃないわ」


 アリアさんが気絶している男に近づき呼びかける。


「ほら。起きなさいよ」

「……」


 返事はない。


「ちょっと。何無視してるのよ」

「……」


 服の襟を持ち首をガクガク揺らすが、やはり返事はない。

 完全に気を失っている。


「向こうから来たって事はアジトは向こうにあるのでしょうか?」

「たぶんね。行ってみよう」


 男が目を覚ますのを諦めたジルさんと俺はは、アリアさんを横目に歩き出した。


「ちょっと! 置いてかないでよ!」





 森を彷徨うことしばらく。

 ようやくシュバルツナイツのアジトを見つけ出した。

 俺達は森の中に身を潜めながら様子を伺う。

 要塞のように角ばった建物。その周りを敵が容易に侵入できないよう土の壁で囲んである。

 門の外には見張りがいて、壁の内側に入るだけでも苦労しそうだ。


「あの見張り離れてくれないかな」

「まあ無理な望みね」

「正面突破しますか?」

「いや、コッチにまだ気づいてないみたいだし、ここから土の剣で攻撃してみるよ」


 俺は土の剣を鞘から抜いて力を溜める。

 狙いはあの敵兵。

 俺は土の腕をイメージしながら剣を振った。

 イメージ通りの腕が地面から4本生え、敵の両手足をガッチリと掴み拘束する。


「うわっ! なんだこれ!」


 叫ばれたら面倒だ。

 ついでにもう1本土の腕を出して口を塞いだ。


「よし。行こう」


 森から出て門に近づく。

 残念ながら門は開いていない。


「んー! んー!」


 門兵が何か言ってる。

 多分、てめえら殺すぞ! とかさっさと離せ! とかそんなとこだろうから無視する。


「高いですね」


 壁を見上げながらジルさん。


「そうだね。でも階段作れば侵入できそうだよ」


 土の剣を使えば階段を作るくらい訳ない事だ。


「登るのは面倒なので壁を壊しますよ」


 ドーン!!!

 ジルさんは得意のレーザーを出し、壁に大きな穴を開けた。


「さあ行きましょう」


 できれば目立たず侵入したかったのだけれど……

 ワーワー騒いでいた門兵が静かになったのを横目に、俺達は穴から侵入した。

 敷地内に足を踏み入れると音を聞きつけた兵士達がぞろぞろと集結して来た。


「てめえら何者だ!」

「王都の者よ。痛い目みたくない人は大人しく投降しなさい!」

「はっ! そのセリフそっくりそのまま返してやんよ!」


 言ったところで大人しく投降してくれるはずない。

 攻撃して来ようとする敵に向け、アリアさんが水弾を放った。

 前にいた人達が水弾で吹き飛ばされ、後ろの人達を倒して行く。

 まるでボウリングだな。

 倒れて団子状態になった敵を、俺は土を動かし拘束する。

 外にいる敵はこれで全部のようだ。


「入り口は……あそこみたいだね」


 俺は頑丈そうな扉を指差した。

 扉まで近づき、開けようとしたが鍵が閉められていて開かない。


「鍵がかかっているようなので壊しますよ」

「あ、中に人がいるかもしれないから力加減に気をつけて」

「了解です」


 言って、ジルさんから光線が放たれた。


「グヘッ!!」


 光線は要塞の扉を粉々に砕き、ちょうど扉の近くにいた不運な人を吹き飛ばした。

 その人は光線を喰らい仰向けになって体をピクピク動かしている。

 気絶したみたいだが死んではなさそうだ。


「……そんなに近くにいるとは思いませんよ」

「……まあ、死ななくてよかったよ」


 ジルさんが壊した扉から建物内に入った。

 とりあえず敵が逃げ出さないよう塞いでおくか。

 俺は土の剣を使ってジルさんが破壊した入口を土壁で塞いだ。

 通路を少し歩くと階段に突き当たった。


「上と下どっちにいると思う?」


 2人に尋ねる。


「偉い人は上にいるイメージですね」

「じゃあ上に行くか」

「でも根暗な人は下にいるイメージよね。イオリの友達みたいに」


 酷い言われようだな。


「では2手に分かれますか?」

「そうね。そうしましょう」

「じゃあ俺は上の階にいくよ」

「なら私とジルは下に行きましょう」

「わかりました」


 2手に分かれここの指揮官を探すことに。

 俺は階段を駆け登り2階の廊下に出た。

 左右を確認する。廊下を挟みドアがいくつもある景色が並ぶ。

 まだ誰も出てきていない。今のうちに指揮官のいる部屋を探そう。

 右に曲がり音を立てないよう廊下を歩いていると遠くのドアが開き、兵士が出て来た。

 バッチリと目が合う。


「侵入者だ!」


 口封じをするより先に叫ばれてしまった。

 マズっ。慌てて土を操り両手足と口を拘束した。

 しかしいくら慌てて口を塞ごうと出てしまった言葉は防げない。時既に遅しだ。


「侵入者だと!?」

「どこだ!?」

「あいつか!」


 ぞろぞろと敵が湧いて来た。

 くっそー。できれば1番偉い人だけ倒したかったのに。

 ジリジリと距離を詰めてくる敵達。

 細い廊下で前も後ろも囲まれてしまった。

 無傷では勝てないかな。土の剣に手を掛けながらどうやってこの状況を突破しようか考えてる時だった。


「邪魔だお前ら。退いてろ」


 人垣の中からそんな声が聞こえた。

 その言葉を聞いた敵兵達は距離を詰めて来るのをやめ、道を譲り始めた。

 人垣の先に声の主が見えた。

 190センチ以上はありそうな上背に、筋骨隆々の体躯。それに不敵な笑みを浮かべたその人は一見して強そうだった。


「マックスさんだ。あの侵入者終わりだな……」


 そんな声が聞こえた。

 どうやらこの人は相当な手練れらしい。

 もしかしてこの人が指揮官?


「貴様。何の目的でここに侵入した?」

「あなた達を捕まえに」

「ふっ。なるほど。政府の犬ってわけか。おい、お前ら手出すなよ。こいつは俺の獲物だ」


 マックスと呼ばれた男は周りの兵士達に睨みを効かせる。

 兵士達が1歩後退る。


「タイマンで勝負だ。こいつらには手を出させねえ。それでいいだろう?」

「俺が勝っても手を出さない?」

「勝ってもか。くくく……単身で乗り込んで来たことといい凄い自信だな」


 単身で乗り込んだわけじゃないけどね。


「いいだろう。お前が勝ってもコイツらに手出しはさせない。いいなお前ら」

「はいっ!」


 周りの兵がシャキっと返事をする。

 まあ、約束しても襲ってくるだろうけどね。


「じゃあ、行くぞ」

「どうぞ」

「シャアッ!」


 奇声とともにマックスが突っ込んで来る。

 相手は俺の顔面を蹴り上げようとする。

 俺はそれを少し下がりギリギリのところで避け、反撃に出る。


「!!」


 蹴りを避けたにも関わらず髪がスパッと切れた。

 予期せぬ事態に反撃するのを辞め、一旦距離を取る。


「今のを避けるとはなかなかやるなあ」

「……靴先に刃物かなんか着けてる?」

「ご名答。よくわかったな」


 マックスは足を上げ、靴先に取り付けられた刃物を見せて来た。


「だがわかったところで防げるかは別問題だろ!?」


 一瞬で距離を詰めて来ると、右足による回し蹴りを繰り出してきた。俺はそれを剣の腹部分で受けきる。

 すると相手は空中で足をスイッチし、今度は左足で回し蹴り。

 俺はそれをバックステップで避ける。

 接近戦は向こうの土俵だ。


「これも避けるか。楽しませてくれるなあ」

「どうも」

「けど、1つ勘違いしているようだな」


 マックスはポケットからた棘ついた鉄球を取り出し、投げつけてきた。


「遠距離用の武器だって俺は持ってるんだぜ!?」


 チラッと俺は後ろを確認する。

 投げつけられた鉄球の軌跡に敵兵がいる。

 俺が避ければ多分あの人に鉄球が当たるだろう。

 後ろのギャラリーは敵だから関係ない……とは言えないな。

 俺は鉄球に向け炎の剣を振り下ろし割りにかかる。


「やはり避けずに割るか」


 ニヤリと意地悪そうにマックスが顔を歪めた。

 バンッ!

 鉄球を割ると中に火薬が詰められていたようで爆発し、煙が噴き出した。

 クソッ! 煙のせいで前が見えない!


「終わりだっ!」


 煙の中を切り裂きながら土でできた槍が飛んで来ている。

 くっ! 土魔法も使えるのか!

 俺は槍を身を翻して躱し、ギャラリーに当たらないよう叩き切った。


「まだまだ!」


 ブンッ!

 いつのまにか近づいていたマックスの蹴りが放たれた。

 この攻撃まで完璧には躱せず頬が裂け、血が飛ぶ。


「オラ! オラ!! オラァ!!!」


 左右交互に上中下段いろんな場所を蹴ってくる。

 それらをどうにか皮一枚のところで避ける。

 やはり魔法より接近戦が得意なタイプ。

 だったら無理矢理でも距離を離してやる!


「どうした! 避けるので精一杯かっ!」


 敵が吠える。

 確かに避けるので精一杯だ。けど、距離を取らせる事はできる!

 俺は炎の剣に魔力を集中させる。


「ラァ!」


 頭部への回し蹴り。それを炎の剣で防ぐ。

 マックスの足が剣に触れ、ジュっと焦げる音がした。


「ッ!」


 敵の攻撃が止まった。その隙に俺は距離を取る。

 煙が上がっていき、視界がクリアになってきた。


「剣に何か仕込んでいるようだな」

「いや。特に何も仕込んでないよ」

「何?」

「ただちょっと変わった剣でね。炎が出せるんだ」

「炎が出せる? ……そうか。イリマ様の風の剣と同じような剣か」


 マックスは続ける。


「本来なら遠距離攻撃が得意なのかもしれんな。だが、今日は周りにこれだけのギャラリーがいる。いい子ちゃんのお前は遠距離攻撃なんてできねえよなぁ」

「それはどうだろうね」

「はっ。俺は構わないぜ! 別にお前が炎を出してもなぁ! ただこいつらが死ぬだけだがな!」


 確かに炎は出せない。

 でも俺には他にも攻撃手段がある!

 俺は土の剣を振り、マックスの下の地面を隆起させる。

 突然の土柱による攻撃を油断していた敵は避けれず、あごにクリーンヒットした。


「ぐふぅっ!」


 うわっ、痛そ〜。

 敵は宙を舞い床に落下した。

 起き上がらない。

 以外とあっけなく勝負はついた。

 まあノーガードで顎に喰らえば脳震盪で立てないか。

 さて、約束を守ってくれるならギャラリーは手を出して来ないはずだけど、どうだろう?

 ギャラリーはマックスがやられたのを見て、ジリジリと動いている。

 やっぱり来るか?

 俺は土の剣に力を入れる。


「う、うわあーっ! 化けもんだー!」

「目を合わせるな! 殺されるぞっ!」

「速く逃げるぞ!」


 敵は一目散に下の階へ逃げて行く。

 素直に約束を守らないだろうと思ってたからこれは予想外だ。

 ……と、こうしちゃいられない。

 俺は蜘蛛の子を散らしたように逃げて行く人たちの1人を捉えた。


「た、助けてくれっ!」


 肩を掴んだだけなのにそう言われた。

 心外だなあ。


「1人捕まったぞ! チャンスだ! 今の内に逃げるぞ!」


 他の人達は構わず下の階へ駆けていく。


「あのー、聞きたいんですが、ここの1番偉い人ってこの人ですか?」

「い、1番偉い人!? それならそこの廊下を右に曲がった先の部屋にいるよ。頼む! 殺さないでくれ!」

「あ、はい。ありがとうございました」


 さすがにこの人がリーダーではないか。

 俺が手を離すと男は脱兎のごとく逃げ出した。


(……俺ってそんなに怖そうに見える?)

『いや。見えんと思うが』

『見えないよ』

(だよね)


 剣に確認する俺だった。

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