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異世界転移!  作者: 中原
11章 帰還
47/67

3話

 朝。久しぶりに自分のベッドでぐっすり眠れた。


「うーん……」


 ベッドから降りて背伸びをする。

 異変に気が付いたのはその時だった。

 1日経てば回復するはずの魔力がほとんど回復していない。

 どうしてだ? 理由はわからないけど困った事態なのは間違いない。

 俺は急いでリビングへと降りた。

 リビングにはアリアさんとジルさんがすでに居た。


「あ、イオリ。おはよう」

「おはよう。2人とも魔力は回復してるっ?」

「してないわ」

「してません」


 俺だけじゃなかったのか。でもどうして? 今までこんな事はなかったのに。

 あー、もう! どうしてこう次から次へと問題が起きるんだ!


「このままじゃ帰れないわね」

「だね。でも何で回復しないんだろう?」

「何か特別な事でもしましたかね?」

「いや、してないよ。ただ、特別と言ったらいつもと違う世界にいることかな」

「でももしそれが原因で魔力が回復しないのなら、元の世界に戻れなくない?」

「そうだね。普通魔力はどうやって回復させる?」

「特別何をするって訳ではないわね。あ、でも魔力回復に効くフルーツみたいなのはあるわよ」

「ジルさんは?」

「私は寝る、ですかね」


 魔力回復に効くフルーツと寝ることか。

 フルーツはないにしてもどうして寝ても魔力が回復しないんだろう。

 考えてわかることじゃない。

 こういう時は剣に聞こう。


「ちょっと剣に聞いてくる!」


 俺は階段を駆け上がって自分の部屋に戻った。


「炎の剣!」

『何だ。朝っぱらから騒々しいな』

「魔力が回復してないんだ。何でかわかる?」

『……そうだな。魔力を回復させるには2つ必要なものがある。体力とマナだ』

「マナ?」

『魔法の源になるものだ。向こうの世界にはマナが溢れていて、それを食べ物や空気などと一緒に取り込み、魔力を作っている。だが、おそらくこの世界にはマナがない』

「じゃあこのまま休んでいても魔力は溜まらないってこと」

『そうだ』

「ちょっと待って。それじゃあもう戻れないの!?」

『普通に考えればそうだな。だが、お前は向こうに行けただろ』

「確かに。でもどうして?」

『そこまではわからん。だが何か条件があるはずだ。この世界で魔力を溜める条件がな』

「魔力溜める条件……」


 またわからない事が出てきてしまった。

 俺はリビングへ戻る。


「どう? 何かわかった?」

「この世界には魔力の源になるマナがないらしいんだ。それで魔力が回復しないんだって」

「なるほどね。でもそれだと魔力を回復させれないんじゃない」

「うん。でも方法が全くないわけじゃないはずなんだ。俺が向こうに行けたように何かあるはず」

「何かって?」

「わからない」


 俺は力なく首を横に振った。


「ならまずはその方法を探さなきゃいけないのね。どうやって探す?」

「探すとなればやはり図書館じゃないですか。この世界にも図書館はあるんですよ?」

「あるけど図書館に行くよりももっと便利なのがあるよ」


 俺はリビングにあるパソコンのスイッチを入れた。


「これは何?」


 後ろからアリアさんがパソコンの画面を覗き込む。


「パソコンって言って、なんていうか……一瞬で調べ物ができる機械だよ」

「へー。この世界ホント凄いわね」


 本当はもっと色んな事が出来るんだけど、上手く説明できないのでそう言った。

 俺は検索サイトを立ち上げ、魔力の溜めかた、と入力した。

 いくつか小説や漫画がヒットしたがめぼしい情報はなかった。


「うーん……さすがに魔力の溜めかたはないか」

「ないの?」

「うん。ちょっと調べ方を変えて見る」


 異世界の行き方、と入力し、検索にかける。

 今度は小説以外の情報が何個かヒットした。

 その中で1番最初に出てきたのはエレベーターを使った異世界に行く方法だった。


「どう?」

「何個かヒットした。けどどれも眉唾もんって感じだね」

「一応あったんでしょ? なら試すだけ試しましょう」

「そうだね」


 俺は1番最初に引っかかったエレベーターを使った異世界転移法が書かれた部分を印刷した。


「もしかして……もう向こうに行く?」


 パソコンの前で話し合っていると母に聞かれた。


「それが色々あってすぐには行けないかもしれないんだ」

「そうなの?」

「うん。でももし今日試す方法で行けたら行くよ」

「どんな方法を試すの?」

「10階以上あるエレベーターを使った方法。エレベーターに乗って決まった手順で階を移動すると異世界に行けるんだって。けど途中で人が乗って来ても駄目らしいから、あんまり人が使わないで、かつ10階以上あるエレベーターを探してるんだけど、知らない?」

「そうねぇ……」


 母さんが考え始めた。


「あっ。あそこはどう? 牛丼屋の横にあるビル。あの中、ほとんど会社しか入ってないから、休日の今日なら使う人少ないよ。きっと」

「牛丼屋の横……ああ、あそこね。うん。いいかも」


 家から近いし、ちょうどいい場所だ。

 よし。行き先は決まった。


「1つ聞いてもいい?」

「何?」

「アリアちゃん達をその格好で行かせるつもり?」


 俺は2人を見た。

 家にあった丈の合ってないパジャマだ。

 そうだった。俺はこっちの服に着替えれば問題ないけど、2人は異世界の服しかない。

 いくら行き先が家から近いビルとはいえ人とは結構すれ違うし、また好奇の目に晒されるよな。

 かといってあのパジャマで外に出るわけにも行かないし。


「服がいるならお母さん買ってくるよ」

「あ、ならお願い」

「了解。じゃあちょっと買ってくる。朝ごはんは出来てるから温めて食べてね」

「わかった。ありがとう」


 母さんはウキウキしながら2人の服を買いに行った。


「あら。おばさん出かけるの?」

「うん。2人の服買ってくるって。あの格好じゃ目立つからね」

「申し訳ないわね」

「気にしなくていいよ」


 本当に。

 あの様子だと多分これから着せ替え人形のごとく遊ばれるだろうから。


「それより2人ともお腹空いてない?」

「空いたわ」

「空きました」

「なら、朝ごはんにしようか」


 リビングの机には、唐揚げやベーコンとほうれん草のソテーといった俺の好物が並んでいた。

 2人には椅子に座って待っていてもらい、俺はキッチンで味噌汁を温め出した。

 鍋の蓋を開ける。中はジャガイモの味噌汁だった。

 おお! これも俺の好きなやつだ!

 どうやら俺の好きなものを作ってくれたらしい。

 という事はご飯はあさりの炊き込みご飯だな。

 確信しながら炊飯器の蓋を開けた。

 炊飯器の中は色付きのご飯。

 そう。赤飯だった。

 あれ、本気だったのか。

 あさりご飯だと思った俺はなんだかやるせない気持ちになった。



 ご飯とおかずを食卓に並べ、食事を取る。


「この色付きのご飯、モチモチして美味しいですね」

「本当ね。この世界はご飯まで美味しいのね」


2人には意外と好評な赤飯だった。





「ただいまー」


 食事が終わり、一息ついていたところで母が帰ってきた。


「おかえり……ってどうしたのその荷物」


 両手にはいくつものショッパーを抱えていた。

 一体何着買って来たのだろうか。


「どれがいいかわからなかったからいっぱい買って来ちゃった」

「さすがに買いすぎじゃない?」

「そう?」


 爆買いの中国人だってもう少し分別のある買い方をすると思う。

 ショッパーを下ろし、母が2人に詰め寄る。


「今から2人に着せるから、伊織は出て行って」

「はいはい」


 俺は邪魔者ですからね。

 出て行く前に、一応2人に説明した。


「今から買ってきた服を合わせるみたいだから俺は部屋を出るね。大変だと思うけど頑張って」


 言うと、2人はキョトンとした表情を見せた。


「服を着るだけでしょ?」とアリアさん。

「うん」

「着方が難しいんですか?」

「いや」


 ジルさんの疑問に首を振って応えた。


「すぐわかるから。じゃあね」


 俺は部屋を出た。

 母さんのあの顔。俺がまだ小さい時によく見た目だ。あの顔になった時は丸一日服を脱いだり着たりさせられたな。

 さすがにそこまではないだろうけど、どれくらい時間がかかることやら。


「さあ、アリアちゃん。これを着てみましょう。これ」

「私がこれを着ればいいんですか?」

「早く早く」

「着ろと言っているようですよ」

「そうみたいね……えーと、着方これで合ってますか?」

「アリアちゃん、最高よ。とってもかわいいわ! キュート。ベリーキュート!」


 母さん……英語で言っても伝わらないよ。


「合ってるのかしら?」

「喜んでいるみたいだし、合ってるんじゃないですかね」

「次はジルちゃんね」

「私ですか? こういう服は似合わないと思いますが」

「さあさあ」

「ジル。着ないとダメみたいよ」

「ですね」

「……うわあ。これはまたアリアちゃんとは違った可愛さね。チャーミング。ベリーチャーミング!」


 だから英語通じないって。

 さてこれで終わるかどうか。


「さあ。2人とも次の服に行くわよ」

「え、またですか?」

「またみたいですね」


 うん。やっぱりまだまだ時間がかかりそうだ。

 俺は2階にある自室に戻ることに決めた。




「伊織! もう入ってきて大丈夫よ」


 どれくらい時間が経っただろうか。下の階から声をかけられた。

 俺は部屋を出て階段を降り、リビングへの扉を開ける。

 目に飛び込んで来たのは、ぐったりとした2人だった。

 いや、そうなるよ。


「ねえねえ。どう、2人?」

「かわいそう……」

「え?」

「じゃなかった。うん。かわいいね」


 アリアさんは少しフリルの付いた白のワンピース、ジルさんはドット柄の黒いワンピースでどちらもよく似合っていた。

 それでもかわいそうだなって気持ちが勝つんだよなあ。

 見るからに疲れてる2人を見て思った。


「でしょ!?」

「けどあんだけ時間がかかった割に2人とも普通のワンピースなんだ」

「あんたワンピースが好きでしょ?」


 そんな事言った覚えはないのだが。

 疲れ切っている2人を見て、少し時間を置いてから話しかけた。


「どう、もう動ける?」

「……ええ」

「……はい」


 2人がソファーから立ち上がる。


「行こうか」


 2人と一緒に玄関へ。

 靴を履いていると母が見送りに来た。


「気をつけてね」

「うん。そう言えばお父さんは?」

「昨日仕事放り出して来たから朝から仕事に行きました。会いたかった?」

「帰ってきたら嫌って言うほど顔合わせるしいいや。じゃあ行ってくる」


 住み慣れた家から外に出て、目的地に向かって歩き始めた。


「ねえ。やっぱり見られてない?」

「本当ですね。やっぱり服が似合ってないんですかね?」

「いや、似合ってるよ」


 むしろ似合いすぎてるから、通行人が見ているんだと思う。

 その辺にいるレベルじゃないもんな。この2人。

 結局、好奇の目に晒されつつ目的のビルに到着した。

 ビルの中に入り、エレベーターのボタンを押すと扉が開いた。


「ドアが勝手に開いた!」


 アリアさんが驚く。


「このボタン押せばドアが開くんだ」

「すごいわね」

「便利でしょ?」

「ええ」


 エレベーターに乗り、異世界への行き方をコピーした紙をラケットケースから取り出した。

 ラケットケースには剣と向こうの服を入れている。


「エレベーターの使い方教えとくね。こっちの左半分の5つのボタン。1番下を押せば1階に、1番上を押せば5階に行く。で、こっちの右半分のボタンが6階から10階までのボタン。並びは順番だから。この2つはドアを開けると閉めるだけど使わなくても大丈夫だから気にしないで。あと1番上のボタンだけど、これは非常時にしか使わないから押さないように。ざっと説明したけどわかった?」

「ええ。押してみていい?」

「このボタン以外ならどうぞ」


 アリアさんが非常ボタンを押さないよう念を押した。


「それじゃあ、遠慮なく。えい」


 アリアさんが3階のボタンを押した。

 ドアが閉まりエレベーターが上に登って行く。


「おお……なんだか不思議な感覚がします」

「確かに。これなら転移するかもね」


 単にエレベーターが上に行ってるせいだけどね。

 3階に到着し、ドアが開く。当然転移はしていない。

 俺は1階のボタンを押し、1階に戻った。


「今からこの方法試してみようか。本当は1人ずつらしいけど、練習もかねて1回みんなでやってみよう」

「オッケー」

「わかりました」

「話すのダメだから。いい?」

「了解よ」

「大丈夫です」

「じゃあ始めるよ」


 俺は4階のボタンを押し、実験はスタートした。

 実験は滞りなく進んで行く。

 母さんの予想通り休日はこのエレベーターを利用する人は少ないらしく、誰も乗ってこない。

 そして俺らは誰も喋らないから、エレベーター内は異様な雰囲気だった。

 俺は5階のボタンを押す。

 これまでは人が乗って来たら失敗だった。

 しかし、次の階では成功していたら女の人が乗ってくるらしい。

 さて、乗ってくるかどうか。

 エレベーターが5階に到着した。

 ゆっくりと扉が開く。

 開いて行くドアの隙間から足が見えた。

 まさか、本当にこの方法で異世界に行けるのか!?

 ドアが完全に開いた。

 足元から視線を徐々に上げて行く。

 そこにはそれほど大きくない目をいっぱいに開いて俺を見ている顔があった。


「い、伊織!?」


 扉の前にいたのは友人の木戸だった。


「伊織だよな!」


 嬉しそうに話しかけて来た木戸を俺は無視した。

 もしかしたら成功している可能性があったからだ。

 1階のボタンを無言で押す。成功していれば1階には行かず10階に行くらしい。

 さてエレベーターは10階に行ってくれるかな。


「なんで無視するんだよ! 心配したんだぞ!」


 エレベーターのドアが閉まり、1階に向かって降り始めた。

 残念。失敗だ。


「失敗だね。もう話していいよ」


 向こうの言葉で後ろの2人に話しかけてから、俺は木戸の方を向いた。


「久しぶり。木戸」

「伊織ぃ!」


 木戸から肩を小突かれた。


「心配したんだぞ! 生きてたんだな!」

「うん。なんとか」


 途中ヤバイ場面もあったけどね。


「さすがだな! 俺は信じてたぞ!」

「ありがとう」


 まさかこんなところで会うとは思ってなかった。

 2人に事情を説明し、木戸と話す時間を貰った。

 積もる話があるので、近くのファミレスに入り、4人で座る。


「いやー、伊織が生きてて本当よかった」


 目を瞑りしみじみと語る木戸。


「本当よかったんだけど……彼女達は誰?」


 目を開けながら聞かれた。


「誰と言われても……とりあえず紹介するね。木戸の正面にいるのがジルさん。その横がアリアさん」

「あ、どうも。伊織の友人の木戸マサルです」


 日本語で話しかける木戸。

 当然2人の頭の上にはクエスチョンマークが浮かぶ。


「もしかして日本語わからない?」

「うん」

「まじか。ごほん。マイネームイズマサルキド。ナイストゥーミーチュー」


 今度は英語で。

 やはり彼女達は何言ってるかわからないという顔だ。


「英語もわかんないの?」

「うん」

「マジで? どうやって会話すんの?」

「普通に向こうの言葉で。通訳するよ」

「お、おう」


 俺は正面の2人に木戸を紹介する。


「えーと、彼は俺の友人の木戸マサル。さっき2人に話しかけてたのは、自己紹介をしようとしてたんだ」

「そうなんだ。じゃあ私達も自己紹介しとくわ。はじめまして、アリアです」

「ジルです」


 2人がペコリとお辞儀をする。


「はじめましてだって」

「すげえ。伊織、バイリンガルだったん?」

「みたい」

「スゲーな。それで、2人とはどういう関係なん?」

「うーん、友人?」

「嘘だ! 絶対それだけじゃないだろ! いなくなったと思ったらこんな可愛い娘達といて! ズルいぞ! ていうか一体今までどこにいたんだよ!」


 興奮して唾を飛ばしてくる木戸。


「は、話すから。少し落ち着いて」

「おう」

「誰にも言わない?」

「え、何? そんな秘密な事なん?」

「そうだね。それに言ってもだれも信じないと思うし」

「わかった。誰にも言わない」

「じゃあまずどこにいたかって質問だけど、今から言う事本当だから信じてよ」

「わかった」

「実は異世界に行ってたんだ」

「……はい?」


 木戸は間抜けな顔をした。


「なんだよ。結局秘密ってことかよ!」

「違う違う! 本当なんだって」

「はいはい。そんな嘘要らないから。誰にも言わないから本当のこと教えろよぉ」

「本当だって!」


 口で言うだけじゃ信じて貰えないか。

 かと言ってここで剣を出すわけには行かないし。

 あとできる事と言ったら……


「この水」


 俺はコップに入った水を指差す。


「もしこの水を触りもしないで凍らせれたらさっきの話し信じてくれる?」

「何それ? マジック?」

「いや、魔法。できたら信じてくれる?」


 俺は一切笑顔を作らず、真顔で言った。


「……ちょっと待って。水変えてくる」


 俺が真剣な表情をしているので冗談じゃないと思ったらしい。

 木戸は席を立った。

 コップと水を新しいのに替えてくるようだ。


「ねえ、アリアさん。コップの水を凍らせる事ってできる?」

「ええ。それくらいの魔力ならあるわよ」

「じゃあ木戸が帰って来たらコップの水を凍らせてくれる?」

「いいわよ」


 木戸が新しいコップに水を入れて戻ってきた。

 そしてコップを机の真ん中に置く。


「アリアさん。お願い」


 言うとアリアさんがコップに手をかざした。

 すると見る間に水は氷へと状態を変えていき、数秒とかからず水は全て氷に変わった。


「どうかな。信じてくれる?」


 木戸はコップを握った。

 冷たかったようですぐに手を離した。


「すげえ……本当に凍ってる。マジックじゃないんだよな?」

「タネのないマジックをマジックと言うのなら」

「マジか」

「まあ簡単には信じられないよね。逆の立場ならそうだもん」

「そうだな……」

「でも信じて欲しい」

「……わかった。てことはもしかして彼女達は異世界人?」

「うん」

「うわぁ……だとしたらそれはドン引きだよ」

「何が?」


 今のどこにドン引きする要素があったのだろうか。


「だって伊織ってばこんな可愛い子2人も連れ込んで、こっちでハーレムを作ろうとしてるんっしょ?」

「違うよ! 全然違う! こっちに来たのは……その……敵の親玉に無理矢理転移させられたからで、別に2人を連れ込んだわけじゃないよ!」

「ホントかよー?」


 木戸がいやらしい目をしながら聞いてくる。


「本当だって! だからすぐ向こうに戻んなきゃだし!」

「えっ、戻んの?」

「うん。そのつもり」

「いつ?」

「できれば今日中にも」

「マジかぁ。せっかく帰って来たと思ったのに」


 木戸はソファーにもたれかけ、頭の後ろで手を組む。


「でもまだ少しぐらい時間あるだろ?」

「うん」

「伊織が居なくなって大変だったんだぜ。学校でさ……」


 木戸が最近起きた学校の出来事を面白おかしく話してくれた。

 それがなんだか懐かしくて、面白くてついつい喋り過ぎてしまった。

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