表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移!  作者: 中原
6章 クレスを捕まえろ!
25/67

1話

「ここで待ってろ」

「イテッ」


 兵士からドンっと背中を手荒く押され、強制的に城の一室に押し込まれた。

 牢屋ではないが、窓すらない押入れのような部屋だった。

 試しにドアノブを回してみる。

 当然だが向こう側から鍵を掛けられていて回らなかった。

 まさかこんな形で城に入るとは思わなかった。


『どうするつもりだ?』


 何故か取り上げられなかった剣が聞いてきた。


「大人しくここにいるよ」

『いいのか? 国家転覆罪なら牢屋に入れられるのは間違いないぞ』

「でも国家転覆罪になるような事した覚えはないんだ。逃げて無駄に罪を重ねる方がバカらしいじゃん」

『確かにな』

「それにアリアさんが動いてくれてるだろうしね」


 俺は少し前、アリアさんの家で兵士達に囲まれた時のことを思い出していた。






「あなた達何なの。イキナリ家に入って来て」


 アリアさんが兵士に噛みつく。


「さっきも言ったはずだ。彼を逮捕しに来た」

「イオリを? 何かの間違いじゃない?」

「間違いかどうかは来ればすぐにわかる。行くぞ」


 兵士が俺の肩を掴み強引に連行しようとする。


「ちょっと待ちなさいよ!」


 恐れを知らないアリアさんは、兵士達の前に仁王立ちして行く手を阻む。


「邪魔をするなら貴様も逮捕するぞ」

「理由を教えてちょうだい。納得できれば退くわ」

「国家転覆罪だ」

「それは聞いた。何をしたから国家転覆罪になるの? 私、彼とずっといたけど罪になるような事はしてなかったわ。イオリは何か心当たりある?」

「ないよ」


 国家転覆を考えるような暇があるなら地球に帰れる方法を探してた。


「一体、彼が何をしたというの?」


 ズイっとアリアさんが兵士に詰め寄る。


「それについては向こうで話そう」


 玄関から色黒で禿頭の男ーーセシル団長が入ってきた。


「良いのですかセシル団長」

「仕方ない。そうでもしないと彼女はテコでも動かないだろう」


 その通りだ。彼女は無茶苦茶頑固なのだ。


「それに聞きたい事もある。それでいいだろ?」

「イオリの逮捕はセシル団長の指示ですか?」

「いや、陛下だ」

「陛下が?」

「ああ。俺も何かの間違いだと思っている。それを証明するためにも一緒に来て欲しい」

「……わかりました」


 アリアさんは納得した訳ではなさそうだが、セシル団長の真摯な態度を信じる事にした。

 そして俺も2人を信じることに。


「わかりました。行きます」






 回想終わり。

 そんなわけで今、アリアさんは別室で話を聞き誤解を解いてくれてる頃だろう。

しかしこの部屋何もないな。人間何もない部屋に長時間入れられたら気が狂うんだぞ。

 なんて不満を漏らしたくなっていた時だった。


 貴様、何者だ! ぐふっ……


 ドアの向こうから見張りをしていた兵士の断末魔が聞こえた。


『イオリ! ドアから離れろ!』


 珍しく慌てた剣の声。

 それに従い、俺はドアから飛び退いた。

 次の瞬間。

 爆音と共にドアは粉々に砕け、部屋の中に石つぶてが飛散した。


「残念。ここじゃないようだ。……けど面白い人がいるね」


 空いた穴から姿を現したのは、肩にリスとサルの中間のような生き物を乗せた長身でやけに爽やかな男。

 あいつは間違いない。


「クレス!」


 だった。


「やあ。また会ったね」


10年来の友人と挨拶を交わすような気さくさでクレスは手を挙げた。

 俺は剣に手を置き、いつでも戦えるよう備える。

 それを見たクレスが朗らかな笑顔で言う。


「好戦的だねえ。もっと平和的に行こうよ。僕達分かり合えるかもよ?」

「そうだね。元の世界への帰り方を教えてくれれば分かり合えそうだよ」

「はははっ。悪いけどそれは教えられないんだ。じゃあね。まだ僕は他にやる事があるから」


 ウィンクをすると彼は廊下へと戻って行った。


「待て!」


 今日は逃さない!

 俺はクレスが作った穴から部屋を飛び出し、左右を確認する。

 左にはクレスが角を曲がって走り去っていくのが見えた。

 いた!


「貴様! 何をしている!」

「!!」


 敵意のある声が背中に投げつけられる。

 振り返ると、遠くから兵士が猛然と走り寄ってきていた。

 どうやら兵士は俺がドアを破壊し、脱走したと思いこんでいるようだ。

 いや、あの兵士だけじゃない、誰が見てもそう思うだろう。

 捕まったら最後、気絶している兵士が意識を取り戻し、クレスがやったと証言しない限り解放される事はないだろう。

 そうなるとクレスの思うツボだ。

 俺に罪を全て擦りつけ、自分は悠々と逃げれる。

 そうはさせない。

 俺は兵士を無視し、クレスを捕まえるため走り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ