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異世界転移!  作者: 中原
5章 武闘会
19/67

3話 2回戦

 入場口へと移動中に歓声が聞こえた。

 もしかして試合終わった? 急ぎ足で通路に向かうと、ちょうど1人が闘技場から出て行くところで、もう1人は担架の上だった。

 速っ。もう試合終わったんだ。

 心の準備もままならない状態で俺の試合の手筈は整い、闘技場の中央へ向かう時間になった。

 先に入って中央で相手を待つ。

 1回戦同様ゆったりとした歩きで近づいてくる相手は、そばで見るとより大きかった。

 それでも恐怖感はなかった。

 大きさで行ったらあの魔物の方が大きいからかな。

 セシル団長が近づいて来た。

 いよいよ始まる。


「レディーファイ!」


 向こうが動かないのはわかっている。

 だから開始と同時に駆け出し、ガラ空きの腹を目掛け殴る。

 手首が見えなくなるほど拳が相手の腹部にめり込む。それなのに手応えがまるでない。


(威力が足りないのか? ならっ)


 今度は脇腹に回し蹴りを入れる。より深く足が腹にめり込んだが、手応えはないし相手は顔色1つ変えない。

 腹がダメなら顔面だ。

 素早く足をスイッチし、顔面を狙い蹴り上げる。

 今まで山のように動かなかった二クラウス選手が動きを見せた。

 回し蹴りを両手でガードする。

 ドカッ! と音が鳴った。

 腹を攻撃した時よりも手応えがある。

 ガードするってことは頭部が弱点なのか。

 俺はさらにガードの上から蹴り続ける。

 

(このままごり押せるか……?)

 

「!!」


 急に手応えがなくなった。

 そしてヌルッとした物が俺の足に絡みついてきて掴まれるような感触が。

 俺はすぐ様足を引き、追撃をやめ距離を取る。

 敵の顔を見ると不敵な笑みを浮かべていた。


「惜しかった。もう少しで捕まえれたのに」


 捕まえれた? やっぱりさっきの掴まれるような感覚は間違いじゃなかったのか。

 でも、あれはなんだ?

 魔法なのは間違いないけど、どんな魔法なのかわからない。

 わからない以上近づくのは危険だ。

 俺は炎を使おうと右手を剣に移動させる。


『俺は使うな』

(なんで?! 相手強いよ!)

『使う必要がないからだ。あれくらいの相手に素手で勝てなくてクレスに勝てるとでも?』

(それは……)

『これは大会だ。負けイコール死ではない。修行だと思って頑張れ』

(わかったよ)


 仕方ない。魔法で戦うのはやめだ。

 でも簡単に近づくのはやめた方がいい。

 もしまた殴りに行って掴まれでもしたらジ・エンドだ。

 ……そもそもどうやって掴んでいるんだ?

 感触的に脂肪ではないのは確かだ。


(ねえ)

『なんだ?』

(体をゴムのようにする魔法ってある?)

『そんな魔法はない』

(ならどんなのならあるの?)

『一般的には火、水、土、風、雷、氷、光を使役する魔法だな』

(つまり相手はその内のどれかの使い手ってことなんだね)

『そうだ』


 てことは……十中八九アレだな。でも念には念を入れといたがいいな。


(剣を使って炎を出すのがダメなんだよね?)

『ああ』

(じゃあただの剣として使うならいい?)

『そうだな』

(ちょっと使わせてもらうよ)


 俺は再び駆け出して動かない敵と距離を詰める。

 剣が届く範囲まで来たところで、剣を鞘から抜くと同時に斬り上げた。

 布を切る感覚が手に残った。

 剣を鞘に入れながら相手と充分に距離を空ける。

 敵のローブのような服が縦に切れ、上半身が見えた。

 二クラウス選手の身体を水が覆っていた。

 やっぱり。水を使って攻撃を防いだり、腕を掴んだりしていたんだ。

 だから殴った時に変な感触だったんだ。


「あーあ、バレちまった」


 種を明かしたが、まだ二クラウス選手は余裕を持っていた。

 見破られるのも想定済みのようだ。


「決勝までは取って置きたかったんだけどなあ。仕方ないか」


 二クラウス選手の周りに帯同していた水が動き、肩のところで腕の形に固まって行く。

 腕が出来上がる前に攻撃するというのが簡単に倒せそうだけど、そんな決着を誰も望んでないだろう。

 二クラウス選手の動きが止まり水の腕が2本生えた。

 

「さあ、行くぞお」


 水でできた腕2本が地面を這う様に伸びて来る。

 

「うわっ!」


 俺はバックステップを踏みながら腕を避ける。

 それでも腕は追ってくる。足を掴まれそうになり、上に飛び上がる。


『バカ! 上に飛ぶ奴がいるか!』

「え?」


 水の腕が進行方向を上に変え、ワンツーを入れられた。


「グフッ」


 衝撃で吹き飛ばされ壁に激突した。その衝撃で剣が鞘から地面に抜け落ちた。

 痛っ。空中では移動できないから上に飛ぶのは悪手だったな。

 なんて反省している間にも敵の攻撃は続く。

 体勢を崩している俺の脇に水の腕が入って来てガッチリとホールドされた。

 さらに伸びていた水の腕はどんどん縮んで行き、敵に引き付けられる。


「捕まえた……」


 手の届く二クラウス選手は表情を崩し微笑んだ。

 生身の腕が交互に殴りかかってくる。


「くっ……」


 攻撃をガードしたり払い除けたりして致命傷を防ぐ。


「結構やるねえ。でも長くは持たないだろ」


 相手のラッシュが止まらない。

 これはマズい。ほとんどマウントポジションだ。どうにか抜け出さないと。

 体を捻り拘束から逃れようとするがびくともしない。

 苦し紛れにパンチを繰り出すが、俺のリーチじゃ届かない。

 こんな時に剣があれば届くのに。


「残念。お前のリーチじゃ俺には届かないよ」


 優越感に浸る相手が腕を引き、拳を繰り出す。


(ここしかない!)


 それに合わせ俺も拳を繰り出した。狙いは相手の拳だ。


「いでっ!」

「くっ!」


 拳同士がぶつかり脳に痺れるような感覚が這い上がって来た。

 でもそれは向こうも同じ。それに向こうは予期せぬ反撃に怯み、動きが止まっている。

 さらに俺は右足を蹴り上げ追撃をかます。


「がふっ」


 敵の顎にクリーンヒットした。

 拘束が緩んだ隙に逃げ出す。


「てめっ」


 口から血を垂らしながら水の腕を伸ばし、また捕まえようとしてくる。

 腕から逃げつつ剣のところに行く。

 

「させるかぁあ」


 水の腕が迫ってくる。

 だが先に剣に到達した俺は剣を拾い上げると、迫りくる水の腕を切る。


「まだまだぁ!」


 切れた水の腕が再生し、俺の脚を狙い地を這うように伸びてきた。

 それをジャンプして避ける。腕が足の下を通り過ぎて行く。


「馬鹿め!」


 腕が進行方向を上に変え、襲いかかってくる。

 予想通りさっきと同じ展開。

 でもさっきと違い俺は剣を持っていた。

 その剣で地面を突き、棒高跳びの要領で斜め前の推進力を得ながら一気に敵に近づく。


「んな!」


 敵の顔面に蹴りを喰らわせる。

 クリーンヒットし吹き飛ぶ。

 ズシーンと重たい音を立て、二クラウス選手は地面に倒れた。

 腕の形をしていた水がただの水に戻る。

 二クラウス選手は意識を失っていた。


「勝者、イオリ選手」


 セシル団長が俺の名前をコールした。

 よかった。上手く行った。

 湧き立つ観客達の声を聞きながら入場口に戻った。

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