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異世界転移!  作者: 中原
5章 武闘会
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2話

 次の試合まで時間がある。

 選手専用に観覧席が用意されているという事なのでそこへと向かう。

 選手専用の観覧席には何故か居るはずない人の後ろ姿があった。


「アリアさん……?」


 呼ぶと振り向いた。やはりアリアさんだった。


「どうしてここにいるの。選手専用って聞いたけど」

「客席に座ってたんだけど、プチ騒動になってね」

「プチ騒動?」

「ほら、私前回の優勝者でしょ。それを覚えてた人達が握手して下さいって言ってきたのよ。最初は数人だったんだけど、後から俺も俺もと群がってきて。普段はそんなことならないのに集団心理って怖いわね」

「ハハハ、それは大変だったね」

「ホントよ」


 ため息まじりにそう言うアリアさんの横に座り、闘技場を見下ろす。

 選手が1人入場して来た。

 確か名前はオバイヨだったかな。


「あ、あの人……」

「知ってる人?」

「ええ。去年決勝で闘った相手よ。今年も出てたのね」

「へー、去年準優勝だったって事は強いんだ」

「うーん、決勝に来るのに魔力を使い果たしていたから正直敵じゃなかったわ。まあそれくらいの実力だったとも取れるわね」

「て事はあまり強くないと?」

「あくまで去年はね。今年は鍛えてるだろうし、手強くなってるかもよ」


 オバイヨ選手は観客からの声援に手を振って応えている。かなり余裕がありそうだ。

 もう1人の選手、二クラウス選手が入場口から姿を現すと会場が騒めいた。

 その人は縦にも横にも大きく、まるで力士のような体格だった。

 ズシンズシンという音が客席まで聞こえそうなほど重い足取りで1歩ずつ中央へと向かって行く。

 おおかた今から闘いをする人とは思えない動きだ。


「ちゃんと闘えるのかな?」

「魔法が得意なタイプなんでしょう。それなら素早く動けなくても闘えるから」

「なるほど」


 中央までやって来るだけで肩が上がっている。

 果たしてどんな戦いを見せてくれるのだろう。


「レディーファイッ!」


 開始と同時にオバイヨ選手が動きを見せた。

 掌に風を集め、風弾を作り始める

 対する二クラウス選手は微動だにせず、ジッと風弾が出来上がるのを見ていた。

 1秒もかからずに風弾は完成し、すぐにそれを投げ放った。

 二クラウス選手はやはり一歩も動かず風弾を受け止める。

 腹に衝撃吸収剤でも入れているのだろうか?

 腹にぶつかった風弾は大したダメージを与えられず、弾けて霧散した。


「防御力高いわね」


 無傷なのを確認し、オバイヨ選手が再び魔力を掌に集中させる。

 今度は1回り以上大きな風弾を放った。

 二クラウス選手は微動だにせず、風弾を受け止める。

 これも効いていない……?


「もしイオリがオバイヨって人の立場ならどうする?」


 真剣な眼差しで闘技場を見ているアリアさんが聞いてきた。

 俺ならどうするか、か。少し考えてから話し出した。


「魔法はあんまり効いてなさそう。だけど、接近戦を挑むのは危険な気がする」

「そうね」

「だからあまり効いてはいないだろうけど魔法を撃ち続ける、かな」

「そうね。それが最も安全で勝率が高いでしょうね。でもきっとあの人は接近戦を挑むわ」


 アリアさんのその予想は当たった。


「チィッ!」


 魔法が効かないと感じたオバイヨ選手は、接近戦を挑むため駆け出す。


「終わりね」


 アリアさんが呟いた。

 接近したオバイヨ選手が二クラウス選手の大きな腹に拳を突く。

 拳が腹部に沈み込みそこで止まった。

 オバイヨ選手は拳を引き抜こうと重心を後ろに傾ける。

 しかし拳は腹から抜けない。

 それをジトっとした目で見ていた二クラウス選手がこの試合初めて動いた。

 両手を硬く結び天高く掲げ、振り下ろす。

 ハンマーのような拳がオバイヨ選手の後頭部に直撃した。

 ゴン! という鈍い音が闘技場内に響いた。

 その一撃でオバイヨ選手は地に伏した。


「勝者二クラウス選手!」


 勝者がコールされ二クラウス選手は入場時同様ゆったりした足取りで帰って行った。


「アリアさんの予想通りだったね。でもどうして接近戦を挑むと思ったの?」

「これが大会だからよ」

「大会だから?」


 俺は先を促す。


「勝てば次がある。決勝まで見据えると出来るだけ魔力は温存しときたいでしょ」

「確かにね」

「考えすぎかもしれないけど、二クラウスって人、曲者かも。あのノーガードで1歩も動かないのは接近戦に持ち込むためにわざとやってるのかも」

「うん。気をつけるよ」

「どう? 2回戦のビジョンは立った?」

「うーん……まあ」

「それはよかったわ」


 次の試合は両選手とも魔法を主軸に戦った。

 魔法を使っているから派手で観客はそれなりに沸いたが、アリアさんは「戦略ないし技術的にもまだまだね」と切り捨てていた。

 試合が終わり、俺は席を立つ。


「もう行くの?」

「うん。次終わったら試合だし」

「そう。頑張りなさいよ」

「もちろん」

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