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そうして君は僕を知る  作者: 琉慧
第二部 私(ぼく)を知る人、知らぬ人
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第二十話 球技大会 4

「いやー、あん時はマジで冴えてたわー。 俺ドッジボールの才能あるかも知れねーわ」


「アホ、そうやって調子乗っとった結果が次の試合やろ。 あんな大した速度も無い女子の球を取り逃してアウトになるとかほんま無いわ。 せっかく格上の三年に勝って勢い付いとったのに同学年の女子に負けとったら世話ないわ。 平ちゃんもコイツになんか言うたってくれや」


「あはは、まぁサブくんが油断してたのはホントだけど、それでもそれ以外の試合では一番活躍してたから、それでプラマイゼロって事でいいんじゃない?」


「さっすが真衣ちゃん! リュウなんかよりよっぽど俺の事見てくれてるぜ」


「平ちゃんあかんあかん、コイツ甘やかしたらこんな風にすぐ調子乗るでな。 あんまりアメ(・・)が過ぎたら次の試合も使い物にならんようになるで」


 球技大会途中の昼休み。 僕達は食堂で昼食を摂っていた。 平塚さんはドッジボールで三郎太や竜之介と一緒のチームだった事もあって、すっかり二人と意気投合している様子だ。


「そういえばそっちの試合進行はどんな感じ?」

 試合数の多いドッチボールの試合経過が気になったので、僕はドッジボール組にたずねた。


「えーと、確か、昼前の試合を入れて六試合目だったかな?」

 指折りで試合数を数えながら、平塚さんが答えてくれた。


「もう結構試合こなしてるんだね。 僕達はまだ三試合しか出来てないよ」


「バドミントンって組多いもんねー。 コートもそれほど多いって訳でもないし。 その点ドッジボールは総当りだから試合数こそ多いけど、試合時間は長くても十分も掛からないから、その分こっちの方が回転率が良いって事だね。 ちなみに私達の成績は六戦四勝だよ。 結構頑張ってるでしょ?」


 なるほど圧倒的に上級生の多い中で、一年生が七割の勝率を保っていれば佳良と称して差し支え無いだろう。 先の話を聞く限り、浮き沈みがあるとはいえ格上であろう三年生相手に逆転勝利した三郎太の底知れぬ実力がうまく作用すれば、ことによるとドッジボール組は最終的に上位入賞を果たしてくれるやもしれない。


「そうなんだ、その調子で行けばいい所まで行くかも知れないね。 僕達の方も今のところ全勝してるから、ひょっとしたら一年で総合点数上位とか在り得るかも? 卓球とバレーの方は良く知らないけど」


「あ、卓球とバレーの方も結構勝ってるみたいだよ。 うちのクラスに元卓球部と元バレー部が何人か居たから、その人たちが頑張ってくれてるみたい」


「そっか、現役部員は出場出来ないけど、その部活にさえ入ってなかったら経験者は出場してもいいんだったね。 ――それにしても平塚さん、よくそんなに色んなところの情報知ってるね」


「うん、一試合終わったら待ち時間が結構長いから、その間に他の競技の場所に顔出して試合経過を聞きに行ってたんだ。 バドミントンの方は綾瀬くんと千佳が居たし、後からでも聞けると思って行かなかったけど」


 どうりで平塚さんが自身の種目でない競技の試合経過に詳しかった訳だと納得した僕は、彼女の交友範囲の広さに一人感心していた。


「でも、卓球場まで来てたならこっちにも顔出してくれたら良かったのに」


 先程まで黙々と弁当を食べていた古谷さんが、ちょっと口を尖らせながら平塚さんへ不満を述べている。 彼女のねた様な横顔から推量するに、恐らくその言葉には、他の競技に顔を出しておいて私の所へは来てくれなかったのかという嫉妬にも似た感情を含んでいたに違いない。


「ごめんごめん千佳。 昼から時間あったら見に行くからさ。 でも、せっかく綾瀬くんと二人っきりなのに私がお邪魔(・・・)しちゃ悪いでしょ?」


「なっ?! 何言ってるの真衣?! 私とユキくんはそんなのじゃないから!」


「またまたぁ。 綾瀬くんとペアが決まった日の夜は、あれだけ私に嬉しい嬉しいってメッセしてきたくせにー」


「ちょっ、余計な事言わなくていいから! もぉっ、真衣なんて来なくていいっ!」


 珍しく古谷さんがぷんぷん怒りをあらわにしている。 けれど、平塚さんはけろりとした顔で「ごめんってば」と平謝りをしている。 僕の知らぬ間に二人も下の名前で呼び合う仲になったようだし、中々に激しく言い争ってはいるものの、それを互いにいさかいとも思わないほどに、二人の仲は順調にはぐくまれているようだ。 彼女達の友好具合に関してはまるっきり他人事なのに何故か僕まで嬉しくなったのは、古谷さんの同性の交友関係の薄弱さを覚えず気にとどめていたからに違いない。


"良い友達が見つかってよかったね"

 僕は古谷さんを眺めながら心の中でそうつぶやいた。

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