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第六話 邂逅(かいこう)〜千早サイド〜



 呪文を唱え続けていると、突然、魔方陣の中央から強烈な光が放たれた。


 しばらくの間、その光で目がくらみ、前が見えなかったけど、目が慣れていくと、段々を見えて来るようになった。




「あれ?」




  魔方陣の方を見てみると、巨大な丸っこい黄色い物体が浮かんでいた。


 それは、赤いくちばしに、小さな翼、鳥のような脚が付いている。


 何と、それは大きな、大きなヒヨコちゃんだった。




「可愛い〜♡」




 思わず、そう言ってしまった。




「ありがとさんね、で、私を呼んだのはアンタね」


「は、はい、精霊さんですよね?」


「うん、そうたい、私が時の精霊メジーたい。

それで、アンタは誰ね。」


「はい、吉塚よしづか 千早ちはやといいます」


「で、千早、私()呼び出した要件はなんね?」


「実は、私が生きていられるのが、何時いつまでか分からないので。

死ぬまえに理想の男の子に出会って、恋をしてみたんです」


「で、具体的には誰に会いたかとね(会いたいの)?」


「そ、それは……」




 具体的にと言われても。

少女マンガみたいに、優しい男の子に会いたいとは思っているけども……。




「〜ん、……可愛そうやけど、誰か()特定出来(ない)と。

いくら私でも、願いば叶えるこつは出来んばい」


「そ、そんな……」




 じゃあ、私は何の夢も叶えないまま、死んで……。


 すっかり、絶望してしまった私に、精霊さんが、




「ん、ちょっと待っとってね。

しばらく消えるけど、すぐ戻るけんね」


「???」




 急に、そう言って姿を消した。

 

 そうしてしばらく待っていると、




「千早、運が良かたい、アンタに会いたか男の子がおるとたい。

しかも、アンタの理想の相手その物の。

向こうはそうじゃなか(ない)と言うかもしれん(しれない)けど、それがその証拠たい。

少なくとも、 “謙虚、誠実、思いやり” を持つ相手だと、私はおも〜とっとたい(思っているから)。

ただ生い立ち()せいで、しゃかまゆる(構える)とこがあるだけで」


「ホントですか!」




 その言葉を聞いて、私は小躍こおどりしたくなる位に嬉しかった。




「今、呼び出すけんね」




 と言って、精霊さんが小さな両腕(?)を広げると、目の前にまた強烈な光が放たれた





 **********





 光が放たれてからちょっとして、「どすん!」と何かが落ちた音がして。

それから「いてて」と言う声が聞こえた。


 どうやら、魔方陣の中に誰かが落ちて来たみたいだ。


 その落ちて来た人は、腰を擦りながら起き上がってきた。


 その人は、自分と同じ年頃の男の子だったが。

その男の子の姿を見て、私は驚いた。


 その男の子の背は私よりも少し高い位だけど、全体的にスラリとしていて。



 髪型が長髪で、しかもサラサラしている。



 (※その当時の中高生(特に地方の中学生)は坊主頭、長くても五分刈りが多く。

現在の、普通の髪型が長髪とされていて。

坊主でないと、同年代の男や年長者に攻撃される事もあったそうです)



 それに、顔も綺麗で肌もスベスベしているなあ。



 (※当然、今みたいにスキンケアなんて概念どころか、男が外見に気を掛けるだけでキザ扱いされる時代で。


 元々、尚は顔は悪くない方だし、それが清潔にしてるの上。

同時代の男子が、余り外見に気を配らないのもあり。


 当時は俺様じゃなく、今で言う草食系的な感じの方が好みと言う、時代差・世代差の補正も掛かり。

余計にイケメンに見えた様である)




「え、千早ちゃん?」




 その男の子が、突然、私の名前を言った。

その声は、穏やかで優しい声だった。




「え、どうして、私の名前を?」




 私が思わずそう言うと、その男の子は。




「吉塚千早ちゃんでしょ、僕は、君に合う為に、精霊にお願いしたんだよ」


「じゃあ、あなたが私の理想の男の子……」




 私は喜ぶに満ちた声で、そう言うと。




「いや……、僕は君に合う為に来たけど、君の理想の男じゃないよ。

ごめんね……」


「違うわ、あの精霊さんもそう言ってたし。

それにあなたを見て一目で分かったの、あなたが私の理想の男の子だと」




 ああ、あの精霊さんが言っていた。

“謙虚、誠実、思いやり”という意味が何となく分かった。


 この男の子は、それらを三つとも持っている。


 同じ年の、乱暴で不潔な男の子達とは、全然違う。


 そこには、少女マンガの登場人物の様な男の子がいる。


 心臓を一発で射抜かれてしまった。

私は生まれて始めて、一目惚れをしてしまう。


 そこで、私は大事な事に気付いた。




「あ、そうだ、あなたのお名前は?」


「ごめん、ごめん、僕の名前は、渡瀬尚って言うんだ」


「なおくんか、良い名前だね」


「そんな事言ったら、千早ちゃ……。

ごめん、イキナリ合って、馴れ馴れしく名前で呼んで。

しかも、 “ちゃん” 付けで……」


「うんん、良いよ、千早って呼んでよ、なおくん……」


「それじゃあ、千早ちゃん……」


「はい、はい、よか雰囲気になっと〜とこ(なってるところ)悪かとや(悪いんだ)けど。

ちょっと言わん(言わない)といかんこつあっとばい(あるから)





 二人でそんな事を話していると、精霊さんが急に言ってきた。




「何だよ、急に」


うんにゃね〜(ちょっとね〜)、大事()事があるとたい」


「何なんですか?」




 なおくんが、良い所を邪魔されて不機嫌そうに、そう言うと。

精霊さんがそう言い、私が尋ねた。




「まずはね、尚、アンタがここにらるるとは(居られるのは)、明日から三日間だけで。

三日目目ん夜にまた、こん儀式ばせん(をしない)と、元の世界に帰れんごつなっとよないようになってしまうから

 

「じゃあ、帰らなかったら、どうなるの?」


「アンタは死ぬまで、この世界()彷徨さまよわないとイカンごつなるとたい(いけなくなるから)


「そ、そんな」




 じゃあ、儀式をしないと、なおくんは……。




だけんが(だから)、二日後にまた、ここでぜっったいに儀式ばせんとイカんけん(をしないとイケナイ)

こっ(これ)だけは言うとくよ」




 と言って注意する、精霊さん。




「それじゃ、私は帰るけん、また二日後に・・・。


 あっそれと、もう一言ひとことゆーとく(言っておく)けど。

ひ◯子は九州が本場やけん、東京じゃなかけんねー」





  ――え、◯よ子は東京銘菓じゃないの?





 ***********





 精霊さんが消えた後、何だか体がダルくなり。

足元がフワフワして、真っ直ぐに立てなくなった。


 すると、なおくんが私を抱き止めてくれた。




「ごめんなさい」




 と言って、私はなおくんに謝る。


 なおくんは、そんな私に構わずに、私の背中と膝に腕を廻し。

それから横向きで抱き上げた。




「あっ……」




 それは、マンガの中で王子様が、お姫様を抱っこしている様な体勢だった。


 空想の中では憧れていたけど、実際にされると何だか恥ずかしい。




「……重くないの」




 恥ずかしさに、そう言って誤魔化そうとするが。




「軽すぎるよ、もう少しご飯を食べた方が良いよ」




 なおくんは、そう言って腕に抱いた私を上空に放り上げる。




「きゃっ!」




 怖くなって、思わず声を出してしまった。




「全然、重く無いし、むしろ、こんなに軽いと不安だよ」




 私の体の事を心配して、不安そうに言うなおくん。


 そんな優しいなおくんの、心を軽くする為に、




「ありがとう、なおくん」




 と言って、なおくんに微笑み掛ける。


 そんな私の心が伝わったのか、なおくんが私に微笑み返してくれた。


 そして、私を抱きかかえながら、なおくんは別荘の方へと向かって歩き出す。




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お姉さん先輩に可愛がられる、後輩男子のイチャイチャした物語です。
図書室の天然天使
男として生きるのに疲れた少年が、女の子に肉体転移して。
その可愛い弟を可愛がる物語。

優しいお姉ちゃんと可愛い弟
姉弟物の短編が多いので、どうか、お越し下さい。

星空プロフィール
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