表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/44

第五話 邂逅(かいこう)〜尚サイド〜



「うわー!」




 目の前に閃光が放たれると同時に、足元の感覚が急に無くなり、何故なぜか落下している。




「ドスン!」


「いてて」




 落下しているかと思っていると、突然、地面に叩きつけられた。


 腰を擦りながら、おもむろに立ち上がり周りを見ると、どうやら魔方陣の中にいる様だ。

魔法陣の外の、ほのかに明るい草原の中に、人がいるのが見える。


 それは、白いヒラヒラしたネグリジェを着ていて、肩にはショールを羽織り。

前髪を切り揃えた、背中までの長さの黒々とした黒髪で。

顔が小さい、クリクリした大きな瞳の美人である。


 それは、あの写真で見た女の子であった。




「え、千早ちゃん?」




 思わず、そう言ってしまった。




「え、どうして、私の名前を?」




 まるで、アニメ声優の様な甘い声で、そう言う、千早ちゃん。




「吉塚千早ちゃんでしょ、僕は君に合う為に、精霊にお願いしたんだよ」


「じゃあ、あなたが私の理想の男の子……」




 僕がそう言うと、千早ちゃんは、そんな事を言う。




「いや……、僕は君に合う為に来たけど、君の理想の男じゃないよ。

ごめんね……」


「違うわ、あの精霊さんもそう言ってたし。

それにあなたを見て一目で分かったの、あなたが私の理想の男の子だと」

 



 僕がそう言って謝ると、僕を気遣ってくれている。

本当に優しい娘だなあ。




「あ、そうだ、あなたのお名前は?」


「ごめん、ごめん、僕の名前は、渡瀬(わたぜ) (なお)って言うんだ」


「なおくんか、良い名前だね」


「そんな事言ったら、千早ちゃ……。

ごめん、会ったばかりで、イキナリ馴れ馴れしく名前で呼んで。

しかも 、 “ちゃん” 付けで……」


「うんん、良いよ、千早って呼んでよ、なおくん……」


「それじゃあ、千早ちゃん……」


「はい、はい、よか雰囲気になっと〜とこ(なってるところ)悪かとや(悪いんだ)けど。

ちょっと言わん(言わない)といかんこつあっとばい(あるから)




 二人でそんな事を話していると、急に精霊が割って入って来た。




「何だよ、急に」


うんにゃね〜(ちょっとね〜)、大事()事があるとたい」


「何なんですか?」




 僕が不機嫌に言うと、精霊がそんな事を言い。

それに千早ちゃんが問いかけた。




「まずはね、尚、アンタがここにらるるとは(居られるのは)、明日から三日間だけで。

三日目目ん夜にまた、こん儀式ばせん(をしない)と、元の世界に帰れんごつなっとよないようになってしまうから

 

「じゃあ、帰らなかったら、どうなるの?」


「アンタは死ぬまで、この世界()彷徨さまよわないとイカンごつなるとたい(いけなくなるから)


「そ、そんな」


だけんが(だから)、二日後にまた、ここでぜっったいに儀式ばせんとイカんけん(をしないとイケナイ)

こっ(これ)だけは言うとくよ」




 と、念を押して警告する、精霊。




「それじゃ、私は帰るけん、また二日後に・・・。


 あっそれと、もう一言ひとことゆーとく(言っておく)けど。

ひ◯子は九州が本場やけん、東京じゃなかけんねー」




  ――と言って消える精霊、何じゃそりゃ!





 **********



 

 

 ふざけた事を言った、精霊が去った後を、呆然として見ていると。

何だか、千早ちゃんの様子がおかしい。


 急いで近づくと、足取りが覚束おぼつかない。


 思わず、その不安定な体を支えると、潤んだ瞳で僕を見た。




「ごめんなさい」




 と言って謝る、千早ちゃん。


 そんな千早ちゃんを見て、僕は思わず彼女の背中と膝に腕を廻し、抱き上げる。




「あっ……」




 それは、所謂いわゆる、お姫様抱っこと言われる物だった。


 そんなヒラヒラした服でオンブをしたら、太股が丸見えになってしまうから出来ないし。

この時代の女の子、特に千早ちゃんみたいにお淑やかな娘なら、そんな状況になったら恥ずかしがるだろうから。


 お姫様抱っこと言う、単語なんて無い時代の千早ちゃんも、その状況の恥ずかしさに頬を赤くする。

でも、太股が丸見えになったら、もっと恥ずかしい思いをするだろう。




「……重くないの」




 と、遠慮がちに、尋ねて来た、千早ちゃんに、




「軽すぎるよ、もう少しご飯を食べた方が良いよ」




 僕はそう言いながら、腕に抱いた千早ちゃんを軽く上空に放り上げた。




「きゃっ!」




 可愛い声を出して、怖がる、千早ちゃん。




「全然、重く無いし、むしろ、こんなに軽いと不安だよ」




 予想以上に軽い体重に、戸惑いながらも同時に、不安に襲われる。


 心配そうな僕を見て、千早ちゃんは、




「ありがとう、なおくん」




 と言って、僕に微笑み掛けた。


 やっぱり、千早ちゃんは優しいなあ。

こんな僕を気遣ってくれているんだ。


 千早ちゃんを抱きかかえながら、僕は別荘の方へと向かって歩き出した。


蛇足ながら。


*ひ◯子


https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%81%B2%E3%82%88%E5%AD%90

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B2%E3%82%88%E5%AD%90


北部九州の人間は東京◯よ子が有る為、九州みやげとして◯よ子はチョイスしなくなりました。

メーカーも、九州限定ひよ◯を発売してますが、どうしても東京ひよ◯の影がチラつくので。

やはり他所よそへの、みやげ物としては選びませんね


<3/15内容の変更>


「アンタの存在自体が、この世から消滅すっとたい」


>「アンタは死ぬまで、この世界ば彷徨わないとイカンごつなるとたい」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お姉さん先輩に可愛がられる、後輩男子のイチャイチャした物語です。
図書室の天然天使
男として生きるのに疲れた少年が、女の子に肉体転移して。
その可愛い弟を可愛がる物語。

優しいお姉ちゃんと可愛い弟
姉弟物の短編が多いので、どうか、お越し下さい。

星空プロフィール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ