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第三十七話 海で戯れる。


挿絵(By みてみん)




(ザザ〜ン……)


(ビチャビチャ)


「うふふっ」




 波が押し寄せる度に、彼女の足元を濡らし。

しかし、そんな事が逆に面白いのか、嬉しそうに笑っている。




 ・・・




 あれから、しばらく遊園地で遊んだ後。

遊園地を出ると、僕たちは近くの海へと向かった。


 陽はまだ高く、日没と言うにはマダマダ早いけど。

本格的な日没を待っていたら、遊園地の終了時間を過ぎてしまい。

そうなると、バスの便が無くなってしまうので、仕方なく早めにやって来たのだ。




 ーーまあ、しょうが無いよね〜。




 そんなシュチュエーションを楽しみにしていた、千早ちゃんは。

残念な事になってしまったのに、笑って受け入れてくれた。


 一番楽しみにしていたのに、こんな時でもワガママを言わないなんて。

本当に、優しい女の子なんだな。


 そんな訳で、まだ空は青いけど。

取り敢えず、海岸へと来ていた。




「きゃははっ」


(ピチャピチャ)




 海岸に来ると、近くに遊園地が有るのに関わらず、人の気配は全く無く。

それを見た千早ちゃんが、靴を脱いで海に足をけていた。


 波の満ち引きに合わせ、彼女も行ったり来たりをり返している。


 確かに、僕の時代からするとベタな光景かもしれないが。

無心で波とたわむれる、彼女を見ると自然に見えて、作為的さくいてきな所が全く無い。




「なおくん」


(グイッ)




 僕も彼女と一緒に、靴を脱いで海に入っていたので。

近くに居た僕を見て、千早ちゃんが波打ち際にへと引っ張った。




「まだまだ、水は冷たいね」


「うん♪」




 春に入り、最近の陽気の所為せいか、暑いくらいの気温であるが。

流石に、海水はまだ冷たい。


 冷たい海水の中に足を入れたので、体を震わせたけど。

そんな僕を見て、千早ちゃんは満足そうにしていた。




「えいっ」


(ピチャっ)


「冷たい!」




 そんな彼女を見ていたら、突然、千早ちゃんが指を弾いて。

手に付いた海水を、僕に浴びせた。




「ここまで、おいで〜♪」


(タタタッ)




 不意を突かれて、狼狽うろたえていた僕を尻目に。

彼女が脱兎の如く、僕から逃げ出した。




「もぉ〜」


(ダッダッダッ)




 イキナリの事に、僕は文句を言いつつも、逃げる千早ちゃんを追いかける。




「ここまで、おいで〜」


「まてぇ〜」




 可愛く僕を挑発しながら、千早ちゃんは逃げ。

そんな彼女を、僕は追い掛ける。




「ほらっ、捕まえたっ」


「ああっ、ヤッパリ捕まっちゃった〜」




 とは言え、男女の体力の差以前に。

元々から、体力が無い彼女を捕まえるのは簡単である。


 海風が吹いている中、薄手の服で走った為か。

抱き止めた彼女の体は、少しばかり冷えていた。




「……はぁ……」




 体調が良くない彼女を心配して、冷えた体を少しでも温めようと、包み込む様にして温めると。

千早ちゃんが、感に耐えない溜息を漏らしていた。




「……なおくん」


(そっ)




 千早ちゃんが、熱い視線で僕を見詰めた後。

彼女が、おもむろに目を閉じる。


 そんな彼女の気持ちを察した僕も、目を閉じつつ顔を近付けて行き。




(チュッ♡)




 そして、キスをした。



 唇を合わせている間。

耳に聞こえるのは、ただ波の音だけなので。

まるで時間が止まったかの様な、錯覚におちいってしまった。


 そうして、柔らかな彼女の唇に触れた後。

静かに離れたら、千早ちゃんが先程とは打って変わり、甘い視線で僕を見る。




「なおくん〜」


(ギュッ)




 僕を甘い視線で見てから、体を向き直して、千早ちゃんが僕の思いっ切り抱き付き。

そんな彼女を、僕も強く抱き返した。




「なおくん……」


「千早ちゃん……」


(ギュ〜ッ)




 僕たちは、互いの名をつぶやきながら、熱い抱擁ほうようを交わしている。


 こうして僕は海岸で、恥ずかしいほど余りにもベタ過ぎる事を、何の違和感を持たずに行っていたのであった。





 *************





「千早ちゃん、寒くない?」


「うん、寒くないよ」




 海風が冷たい、波打ち際で水に浸かりながら戯れていたら。

少しばかり、体が冷えたようである。


 今日は、どちらかと言えば暑いくらいの気温なので。

それで、体調を崩すとかまでは行かないとは思うけど。

心配症な、なおくんは、私を温めてくれていた。


 しかし、その温め方と言うのが。




「もうチョットくっ付いた方が良い?」


「ううん、大丈夫」




 私を足の間に入れて、後ろから抱き締めているのである。


 一昨日おとついの、お宮での状況に似ているけど。

あれよりも、密着度は段違いに高い。


 隙間なく、ビッシリとくっ付いている上に。

吐息が掛かるくらい近くに、彼の顔が有った。


 なおくんがしゃべる度に、吐息が耳に掛かりくすぐったい




 ・・・




 波打ち際で戯れた後、足が汚れた私を。

なおくんが横抱きに抱え、海岸から少し離れた水飲み場に運んだ。


 それから、再び私を抱えてから、コンクリートブロックの上に腰掛け。

それで、現在の状況になったのである。


 なおくんも同じように足を洗ったのだが、私を抱えた為、また足に砂が付いたけど。

“私を温めている内に、乾いて落ちるよ”と言って、私を抱き続けていた。




「(何だか、夢のよう……)」




 彼に密着されて、チョット恥ずかしい気持ちもあるが。

それと同時に、まるで少女マンガの様なシチュエーションが続き、夢の様である。


 正直に言えば、これが夕暮れ時なら最高なんだけど。

ここまで夢に見た光景が続いたので、贅沢せいたくを言ったらばちが当たる。




「(しかし、夕暮れじゃなくて、残念だなぁ〜)」




 そう入っても、折角せっかくここまで行っていたのだから。

そこまで行って欲しかったと言う気持ちも、本音ではある。




「でも、陽が沈みかけじゃなくて残念だね」


(ドキッ!)




 陽が大分だいぶん傾いたとは言っても。

まだまだ青みがある空を見て、内心で愚痴ぐちっていたら。

突然、なおくんが言ってきてビックリしてしまう。


 私の心を読んでいたかと錯覚するほど、タイミングが良い言葉に。

私は驚いたからである。




「そこまで言ったら、贅沢だよ。

理想の男の子と一緒に、せっかく海に来てるだし」


「そお?」




 だけど、私は半分は本当だけど半分は嘘な事を返した。




「だったら、僕もそうだね」


「えっ?」


「僕も理想のと、海に来ているだから」


(ギュッ)




 なおくんは、そう言うと、私を抱く力を少しだけ強める。




「……なおくん」


(コツン)




 その言葉を聞いた私が、横にある彼の頭に自分の頭をくっ付ける。


 そうやって、温かいなおくんに包まれたまま。

私はバスの時間が車で、海岸に居たのであった。


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お姉さん先輩に可愛がられる、後輩男子のイチャイチャした物語です。
図書室の天然天使
男として生きるのに疲れた少年が、女の子に肉体転移して。
その可愛い弟を可愛がる物語。

優しいお姉ちゃんと可愛い弟
姉弟物の短編が多いので、どうか、お越し下さい。

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