第二十四話 初めてのデート(中)
<喫茶店を出た後>
喫茶店を出て、僕達はとても疲れていた。
蛇足ながら、彼女から貰ったお金で。
表向き、僕が料金を支払った形にして置いたのは、勿論である。
「あ〜、疲れたね。
千早ちゃん……」
「うん……」
喫茶店で、周囲の視線を浴びながら、二人で一つの飲み物を飲んだ。
周りからの視線が突き刺さり、とても痛かった。
そんな、ある意味さらし者になっていたので、とっても疲れた。
「ねえ、なおくん」
「ん、どうしたの?」
「食休みに、近くの運動公園でユックリしない?」
「うん、良いよ〜」
すると、おもむろに千早ちゃんが、そんな事を言ってきた。
確かに、食べたばかりでユックリしたいし。
それ以前に、汽車に乗ったのと、さっきの事で何だか疲れてしまった。
そんな訳で、彼女の提案どおり、運動公園で休むことにした。
・・・
「はぁ〜、千早ちゃん気持ち良いね〜」
「うん、気持ち良いね」
運動公園に行くと、芝生と林の緑が五月の空に映えており。
丁度、気持ちの風が、公園の中を吹いていた。
二人共、その気持ちの良い風を身に受けると、同時に声を上げる。
この公園は、昔からココにあり。
僕の時代に、広場に遊具が増えた以外は基本的には同じである。
基本的は、子供を遊ばせる芝生の広場が中心になっていて。
他にも、サッカーグラウンドや野球場、テニスコートなどが有り。
後、結構広い林が有って、中には遊歩道が通っており、散歩が楽しめる。
そして僕達は、その遊歩道を、一緒に手を繋ぎ歩いていた。
人気は全く無い訳ではないが、喫茶店での事で何だか吹っ切れた所もあり。
人の目が余り気にならなくなった。
「もぉ〜、こっちこっち〜」
(バタバタバタ〜)
二人手を繋ぎ、並んで歩いていると。
横を、先ほどとは違う、別の女子高生の集団が駆けて行った。
聞こえる声は。
“キャッキャ、ウフフ”と、形容したくなる様な声である。
しかし、さっきの娘たちとは違うデザインだけど。
やはりセーラー服だよなぁ〜。
「もぉ、なおくん! また何を見ているのよ〜」
(グイッ)
(ぷにゅっ)
そんな事を思いつつ、僕が通った娘たちを見ていたら。
またもや千早ちゃんがヤキモチを焼く。
しかも、握っていた手を一旦離し、それから腕を組みながら僕を引っ張ったのだ。
それに強く引かれた為、肘に彼女の柔らかい物がダイレクトに当たる。
「あ、ゴメンゴメン。
いやね、あの娘たちの制服を見ていたんだよ、僕の時代と違うんだなって」
「どう言う事なの?」
そんな千早ちゃんに、慌てて弁解するが。
彼女は、そんな僕に不審そうに言う。
「僕の時代の制服は。
ああ言うセーラー服よりも、ブレザーの方が多いんだよね」
「ブレザーと言うと、ネクタイしてジャケットを羽織る?」
「そう」
僕の言葉に、彼女の機嫌が少しは変わる。
「それにスカート丈も、あんなに長くなく、これくらい」
「えっ!」
僕が、手を自分の太ももの中間くらいで示すと。
千早ちゃんが、驚いた顔になる。
「……そんなに短いの、制服のスカートが……」
「うん」
驚愕の顔をしている、彼女に更に追い打ちを掛ける。
「さっき駅に居た、不良たちを覚えている」
「あの、駅前で座り込んでいた?」
「地面に直に、あぐらを掻いて座っていたのも居たよね」
「うん、お行儀が悪いよね」
「あれね、僕の時代だと、女子がソレをやるんだよ」
「ええっ!」
僕が言った内容に、彼女がもっと驚いた。
この時代の良い所のお嬢さんである、千早ちゃんからすると。
考えられない事だろう。
「じゃ、じゃあ、スカートの中が見えるちゃうよ〜」
短いスカートでそんな事をすれば、当然、そうなると考えるであろう。
「あ、大丈夫だよ。
もちろん、中にショートパンツや、見せパンとか穿いているから」
「あ〜、な〜んだ〜、良かった。
でも、見せパンて何?」
「“見せても良いパンツ”の略だよ。
まあ、アンダースコートとかブルマーみたいな物だと思って構わないよ。
あ、そうそう、僕の時代だと、ブルマーは絶滅してしまったんだよね」
「えっ? そうなの」
僕がそう答えると、一応、安心するけど。
次の言葉に反応して、千早ちゃんが聞いてくる。
「うん、この時代から約二十年後くらいに、ブルマー禁止の運動が全国的に出て。
それで、だんだん廃止される事になったんだ」
「そうなの、良かった〜」
「どうして?」
「だって、ブルマーって恥ずかしいんだもの。
体の線がハッキリ出てしまうし〜」
「そうなの、僕は残念だけどなぁ〜」
「もぉ〜、なおくんのH」
僕が残念そうに言うと、彼女が膨れてしまった。
****************
私となおくんは、色々と話をしながら、林の中を散歩していた。
「ねえ千早ちゃん、あそこのベンチに座らない?」
「あ、うん」
林の中を散歩していると、途中で開けた所に出て。
そこに一脚だけ、ベンチが置いてあった。
そこで、なおくんが座ろうと言って来たのである。
野外に有る割に、意外とキレイなベンチに二人で座る。
当然、私は彼と腕を組んだままだ。
「風が気持ち良いね」
「うん、気持ち良い……」
二人でベンチに座ったら、なおくんがそう言ってくるので。
私も同意する。
林の開けた場所にあるので、上にポッカリと空が見えていて。
太陽が有る位置には、丁度、木の葉が重なっているので。
陽光がキラキラと見えている。
程よい加減の陽の光を受け、更に気持ちの良い風を受けていたら。
食後であるのと、周囲の視線を浴びて疲れた所為もあり。
妙に眠くなってきた。
「ふぁ〜っ」
「ん、眠くなったの?」
「あっ、ごめんなさい」
「良いよ、しかし可愛いアクビだね」
眠くなり、思わずアクビが出てきたので、急いで手で口を隠してつつ彼に謝るが。
そんな事を言って、なおくんは気にはしなかった。
「何なら、ここで寝ても良いから」
「えっ、でも……」
「僕も何だか疲れたから、少し休みたいしね」
なおくんが、私を見てながら言う。
私を見るその瞳は、とても優しい。
「なおくん、ごめんね」
「ううん、僕も休みたかったから」
私は、なおくんに甘えて、少し仮眠する事にした。
今の体勢は、なおくんと腕を組んだ状態なので。
当然、その状態で寝るとなると、彼の肩に頭を預ける事になる。
私は少し遠慮しながらも、なおくんに凭れた。
ーーこうしていると、気持ち良いなぁ……。
見た目以上に大きく、頼りがいのある彼の体の感触を感じながら。
私は次第に、夢の世界へと旅立って行った。
<参考>
・ブルマー
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%BC#%E5%8F%8D%E5%AF%BE%E9%81%8B%E5%8B%95%E3%81%A8%E5%BB%83%E6%AD%A2
・見せパン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%8B%E3%81%9B%E3%83%91%E3%83%B3
・平成時代の制服の変遷
https://www.furyu.jp/news/2019/02/gtl64.html
※この調査では、現在、膝丈スカートが主流ですが。
作中では、話の都合でマイクロミニと言うことになっております。
・ブルマの興亡史
https://honeshabri.hatenablog.com/entry/history_of__bloomers




