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第十七話 夜のハプニング


 <それから夜になり>




(チャップン)


「ふう〜っ」




 調度良い湯加減の湯船に入ると、僕は一息吐いた。


 今は、千早ちゃんのすすめでお風呂に入っている。


 僕は、千早ちゃんに先に入って貰いたかったのだが。

彼女が言うには、洗濯機に入った自分の下着を見られるのが恥ずかしいので、先に入って欲しいとの事。


 しかし、その割には洗濯物を干す時に、自分の下着が見える事を意識していない様であるが……。


 それはともかく、昨日は儀式の準備をしたりとかで、シャワーを浴びただけなのはモチロン。

ここ最近は、面倒くさかったのでシャワーだけで済ませる事が多かったから。

本当に湯船に入るのは久しぶりだ。


 湯に浸かりながら、僕は夕食時の事を思い出していた。




 ・・・




 夕食の時、話の流れで、僕は中学時代のサマーキャンプの事を話した。


 夕食がカレーライスだったので、それでだったと思う。


 その時は、男女別で数班に分かれて作ったのだけど。

その時の女子の班の方が……。



 ーーキャーーッ! 血が出たーーー!


 ーーちょっとぉ! 危ないわね。

   包丁が落ちて、足元に突き刺さったじゃない!


 ーー沸騰しているから、早く止めなさい!


 ーーちょ、ちょっと、火が小さくならないよぉ。

   どうしたら良いのーー!


 ーー血が、血が止まらない!


 ーーどれが砂糖で! どれが塩なの!


 ーーきゃーっ! 火が横の布巾ふきんに移った!


 ーーまってよぉ! 何、洗剤入れてんのよ!


 ーー早く、消火器! 消化器!




 阿鼻叫喚あびきょうかんの地獄と化していた。


 ほとんどやった事も無いのに、“料理くらい簡単よ”と言いながらたかをくくった結果。

収集の付かない事態となったのだ。


 そんな妙な自信を持っているに限り、全然経験が無ったりするのだが。

その癖、なぜか変に積極的になっていて。


 また、そう言う妙な自信を持っているが、女子グループの中心に居たりするので、混乱に拍車を掛けていたのである。




 ーー……え、えっと……、それは違うんですけど……。


 ーーはぁ? 私に指図するのぉ!


 ーーい、いえっ……。




 勿論もちろん、料理が出来るもいるのだが。

そう言うは、大抵、大人しくてスクールカーストの下位が多いので、その娘の言う事は無視されてしまう。

(最も、そんな達も、表面上はどんなに取りつくろっても。

僕の事など、眼中に無かったのが分かっていたで、余り良い印象は持っていなかったが)


 一方の男子の班の方は、班に一人か二人は料理が得意な人間がいて。

その人間が中心となり指揮を取り。

またヤンキーなどのヤル気の無い人間がサボった事も、逆に足を引っ張られずに済み、順調に出来上がった。


 結果、男子の方は全班、何とか食べられる程度の物を作れたが。

女子の方は、不味い物が出来たのは、まだ幸運な方で。

中身が焦げまくったり、あるいは消化器にまみれたり洗剤が混入して食用不可になった。


 ちなみに、女子が一人料理中ケガをして出血が止まらず。

病院に運ばれたそうである。


 その話を食べながら聞いた千早ちゃんは、スプーンを持ったまま唖然あぜんとしていた。



 ・・・



 その事を思い出しつつ、ふと湯船の外を見る。


 湯船の外には、千早ちゃんの父親が使っているシャンプーがある。


 彼女からは使っても良いとは言われているが。

このトニックシャンプーの銘柄めいがらは、僕が使うと頭がかゆくなる奴だった。


 仕方がない、余り髪には良くはないが頭皮が油っぽいので、石鹸で洗うとするかな。


 そう思いながら、湯船に浸かっていた。





 ****************





「うんんっ〜〜」



 凝り固まった肩を伸ばしながら、一階へと降りていく。


 勉強で疲れた私は、気分転換の為に一階へと降りる。


 体の事などで高校へは行けなかったけど。

今でも私は、通信教育で勉強を続けていた。


 大学へ行くのは難しいかもしれないけど、勉強をしてないと取り残される様な気がするので。

取り敢えず、“大検”を受けるつもりで勉強していたからである。



 (※“大検”=大学入学資格検定、現在の“高等学校卒業程度認定試験”(高認))



 ただ昨日、あの儀式をして、私はそんなに長く生きられなくなったから。

よく考えれば意味が無い行為だが。

勉強すること自体が長年の習慣になっているので、いつの間にか勉強してしまっていた。




(ガチャ)


「(あ、なおくん。お風呂から上がったんだ)」




 風呂場の方からドアの音がしたので、彼が上がったのだと気付く。




「千早ちゃん、お風呂ありがとう。

気持ち良かったよ〜」


「良かったぁ、って……」


「ん?」




 奥からこちらを来る、なおくんを見て私は固まってしまった。


 ……だって、だって。




「きゃっ!」




 なおくん、上半身裸だもん!


 私は思わず、熱くなった顔を手でおおいながら、下を向く。




「なおくん! 早く、早く、服を着てちょうだい!」


「ご、ごめん!」



 ・・・



 私の剣幕に押された、彼があわてて風呂場へと戻っていく。




「もお〜、恥ずかしい……」




 なおくんが見えなくなった所で、私はそうつぶやく。


 私の家は男の人が、お父さんだけで。

幼い頃は、一緒にお風呂に入っていた事もあるが。

お父さん以外で、しかも同じ年の男の子の裸なんて初めて見る。




「(しかし、ツルツルだったなぁ……)」




 初めて見る、同じ年の男の子の裸を見て、そう思った。


 よく雑誌とかTVで見るのは、胸毛が生えてている場面で。

小さい時みた、お父さんの裸も胸毛が生えていたんだけど。

なおくんは、キレイな肌な上にツルツルだった。



 (※その当時はマッチョイズムな時代の空気で、男のムダ毛を男らしさのシンボルとしてほこる風潮があったみたいです。

だから、その頃は割と、男のムダ毛ボーボーのポスターや映像などがありました。


 現代では、男も次第にムダ毛を処理する様になり。

また、それ以前に尚自体、元々から毛深くない体質と言うのもあります)




(ハッ!)




 私は、なおくんの裸を思い出していた事に気付き。

恥ずかしさの余り、手で覆った顔が更に熱くなっていく。




(ブルブルブル)




 急いで彼の裸を忘れようと、顔を左右に振るが。

全く、頭から離れて行かない。


 こうして私は、その晩は、その事でもだえ続けていたのであった。





 ****************





「はあ〜、ビックリした〜」




 僕は再び風呂場に戻ると、脱衣所で慌ててTシャツを着た。


 家に居る時とか、湯上がりで火照ほてった体を冷ます為に、上半身裸で出る事があった。


 ウッカリ、そのつもりで風呂場から出ると、千早ちゃんが僕の体を見た途端。

恥ずかしがって取り乱していた。


 確かに、昔、かなり古い少女マンガとかで、男の上半身だけ裸でも恥ずかしがる女の子の場面を見たことがあるけど。

まさか、ホントにそうだったなんて。


 そう言えば、僕が学校に行っていた頃。

通学路で変質者が着ていたコートを広げて、歩いている女子生徒に裸を見せていた事件があって。

自分も偶然、その場面を目撃していたが。

その時なんか、表向きは恥ずかしがって手で顔を隠していたみたいだが、指の間からシッカリ見ていたらしく。



 ーーアイツ小さかったじゃん


 ーーホント、人に粗末な物みせんなよ


 ーー見せるなら、もっと立派な物みせろよ


 ーーだよねぇ〜


 ーーギャハハハ〜



 と言いながら、笑い合っていた女子の集団を見て、ドン引きした事を思い出していた。




「(どこがどうなったら、あんなに変わるんだろうか……?)」




 自分の時代との余りの落差に、そんな事を感じてしまった。




「でも、あんなに恥ずかしがるなんて……」




 う〜ん、千早ちゃんの前に出る時は注意しないと。


 そう脱衣所の中で、反省していたのであった。


<参考>

・大検

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%85%A5%E5%AD%A6%E8%B3%87%E6%A0%BC%E6%A4%9C%E5%AE%9A


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お姉さん先輩に可愛がられる、後輩男子のイチャイチャした物語です。
図書室の天然天使
男として生きるのに疲れた少年が、女の子に肉体転移して。
その可愛い弟を可愛がる物語。

優しいお姉ちゃんと可愛い弟
姉弟物の短編が多いので、どうか、お越し下さい。

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