表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/44

第十話 出発準備

 <朝食が済み、しばらく立った頃>




「るるる、らんらんら〜ん〜」 




 僕は今、一階の居間でTVを見ていた。


 外では、千早ちゃんが鼻歌を歌いながら、洗濯物を干していて。

しばらく洗濯をするので、僕には、ユックリして欲しいとの事であった。


 その当時でも、午前中は早い内はやはり下らないワイドショーが多いが。

それを過ぎると、水戸○門などの時代劇や、ドラマの再放送がある。




 (※当時を知る人に話を聞くと、大体、そんな感じみたいでした)




 僕はドラマでも、時代劇などは以外と好きな方だ。


 先程、千早ちゃんに聞いた話によると。

彼女は毎日、午前中は家族全員の洗濯をしているそうである。


 やはり、日記の記述どおり、千早ちゃんは高校に行ってなくて。

でも一応、高校卒業の資格を取るため、通信教育は受けているらしい。


 何でも、こちらに療養していると通学が難しいのと。

通学可能な学校が、具合が悪くなった時の面倒を負いたくないので、学校側が入学するのを渋ったと言う話だった。


 学力的には問題ないのだが。

それが彼女が高校に行っていないと言う理由である。




 (※今だとモンスターペアレントが騒いて、裁判沙汰にする場合もある話だが。

今と違い、その当時は良くも悪くも、親と学校との信頼関係があって、割と学校の言うことに従う親も多かったみたいである)




 今だと理由を問わず、この世代の人間が学校にも行かず仕事もせず、家に居るだけでニート扱いされて、叩かれるけど。

この当時は、女の子だと家事手伝いとか、花嫁修業だと見られて貰える部分があるようだ。


 まあ、千早ちゃんは体が弱いと言う理由なんだけど。


 しかし、その当時でもフーテンやヒッピーなど、同様な物もあったらしいが。

ニートほど極端に叩かれては居なかった。


 元々、ニートと言う単語自体が、外国の誰も使わないお役所用語だったのを。

メディアが見つけて出し、流行らせ、集中して叩いたのも。

権力による何らかの意図があるとしか思えないけど。




「ふふふ、ふん〜」





 ――また、余計な事を考える、悪い癖が出たな。




 千早ちゃんの鼻歌で我に変えると、すぐに物事の裏を読もうとする癖を、自嘲じちょうする。


 しかし、そうでもやって現実逃避しない事には。

遠くに見える洗濯物の中にある、二つの丸い物や、三角の白い布地の物に、

どうしても目が行ってしまう。


 元々から、人目が全く無い場所な上。

恐らく家族でも、母親以外が目にすることも無い為、いつもそうしているみたいだ。


 だから彼女は、いつもの癖で、僕が居ることさえも忘れたまま、洗濯物を干していたのだろう。


 こうして僕は、アルミサッシから見える洗濯物から意識をそられそうと。

時代劇が流れるTVの方に、何とか集中しようとしたのであった。



 

 ・・・




 洗濯物を干した後、大きく伸びをしながら千早ちゃんが僕の所に来て。




「ねえ、なおくん、一緒にお買い物に行かない?」


「え? どうして」


「なおくんの下着とか、必要な物なんかを買わないと」


「……ああ、そうだよね、ごめん厄介になって」


「ううん、良いよ、そんな事」


「せめて、お金・・・」




 僕は財布から、お金を取り出して気付いた。


 そうだった、この時代は、お金自体が違うんだった・・・。


 特に、お札とかは確か、この頃は聖徳太子とか伊藤博文とかだったはず。

10円、100円とか、同じ物もあるけど、年号が違うから、偽金(あつか)いになるよな。


 僕は自分が持っているお金を、彼女に見せる。




「ごめん、僕の時代だと、お金はこうなっているだ」


「へえ〜、未来のお金はそうなっているのか〜。

いいよ、私、結構お金持っているから。

おこずかいは貰うけど、使う機会が無いから、かなり溜まっているの」


「……ごめんね」


「なおくんは気にしなくても良いよ、私が好きでしている事だから」




 そう言って千早ちゃんは、僕を気遣う様な笑顔を見せる。




「でも千早ちゃん大丈夫? 昨日も倒れそうになったし」


「うん、あの時は、普段寝ている時間に起きていたし。

それに、冷えた所で長く居て、無理をしたから。

でも無理さえしなければ、最近は体調も物凄く良いから」


「そお? でも無理はしない様、ゆっくりと行こうか」


「……うん、分かった。

ありがとう、なおくん」




 僕がそう言うと、彼女が嬉しそうにうなずく。


 それから千早ちゃんは、外出の準備をする為に、自分の部屋へと向かった。





 ***********





「う〜ん、どれにしようかなぁ〜」




 今、私は部屋で、下着姿で服を選んでいた。


 その為、床やベッドの上など、部屋中、広げた服であふれている。




 “今日、男の子と二人きりで外を出歩いて行く。

それも、理想の男の子と”




 そう思うと私は張り切り、一番綺麗な服で着飾ろうと。

クローゼットの奥から、服を次々、引っ張り出す。




「う〜ん、胸元が開いていた方が良いのかな?」




 私は、一枚の服を体に当て。

その姿を鏡で見ながら、そうつぶやく。


 話によると男の子は、ちょっとHなのが好きみたいだから。


 しかし、他の子に肌を見せると思うと、抵抗感があって嫌になるけど。

不思議な事に、なおくんだったら、全く不快にならない。




「それなら、これはどうかな〜」




 私は普段あまり着ない、胸元が開いたワンピースを、クローゼットから取り出し。

体に当て鏡を見る。




「よし、これにしよう」




 こうして私は外出着を決めたけど。

今度は、部屋中に散らばった服を片付けるのに、時間を取られたのであった。




 ・・・




「はあ・・・、なおくん、ごめんなさい〜」


「ううん、良いよ」




 私は服を片付けた上、ある事に手間取り、なおくんを長く待たせてしまった。


 だが、なおくんは全く怒りもせず、にこやかに私を返事をしてくれた。




 “本当に、なおくんは優しいなあ〜♪”




 そんな彼にれ直した所で、私は肝心な事を聞いてみる事にする。




「ねえ、なおくん。

私、似合ってるかな……」




 私が着ているのは膝丈より少し短く、胸元が鎖骨が丸見えになるほど空いた、白地の半袖ワンピースと。

頭にはお気に入りの、黒いリボンで飾られた、つば広の白い帽子。

それに肩には、布地のバックを掛けていた。


 私は、なおくんにそう言うと、彼の前で軽くターンする。




「……あ、うん、とっても似合っているよ」

 

「ふふふ、ありがとう♡」




 ターンをしてなおくんの様子を見ると、私を見詰めたまま。

呆然とした様子で、返事をした。


 どうやら、私に見惚みとれたみたいで。

そんな彼を見て、私は嬉しくなる。




「遅くなっちゃったから、早くいこっ♪」


「う、うん……」




 嬉しくなった私は、ウキウキ気分でなおくんを誘い。


 私に見惚れて、呆然としたままの彼が。

慌てて、気の抜けた返事をしていたのであった。



<参考>

・フーテン、ヒッピー

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%83%E3%83%94%E3%83%BC#%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%83%92%E3%83%83%E3%83%94%E3%83%BC

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10109933505


*紙幣

・一万円

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E4%B8%87%E5%86%86%E7%B4%99%E5%B9%A3#C%E5%8F%B7%E5%88%B8

・五千円

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E5%8D%83%E5%86%86%E7%B4%99%E5%B9%A3#C%E5%8F%B7%E5%88%B8

・千円

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%83%E5%86%86%E7%B4%99%E5%B9%A3#C%E5%8F%B7%E5%88%B8

・五百円

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E7%99%BE%E5%86%86%E7%B4%99%E5%B9%A3#C%E5%8F%B7%E5%88%B8



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お姉さん先輩に可愛がられる、後輩男子のイチャイチャした物語です。
図書室の天然天使
男として生きるのに疲れた少年が、女の子に肉体転移して。
その可愛い弟を可愛がる物語。

優しいお姉ちゃんと可愛い弟
姉弟物の短編が多いので、どうか、お越し下さい。

星空プロフィール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ