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第九話 一日目の朝



「じゃあ、私は着替えてくるから。

ちょっと、待っててね」




 台所に着いた所で。

そう言って、千早ちゃんが、再び部屋に戻る。


 僕が部屋に居たままだと、自分が着替えられないから。

先に、僕をここに案内したのである。




 ・・・




「簡単に、目玉焼きとトースト程度だけど。

私が、作ってあげるから」



 千早ちゃんが台所に来る途中で、僕にそう言う。




「ねえ、千早ちゃん。

千早ちゃんは料理は出来るの?」


「う〜ん、簡単な物なら……。

まあ一応、女の子だから、ね?」


「……僕の時代だと、全く出来ない方が当たり前なんだけど」


「えっ……?」




 それを聞いて僕は、彼女に料理が出来るのかと尋ねてみたら。

遠慮がちに“簡単な物なら”と答えるのを聞いて。

“僕の時代だと、全く出来ないほうが普通だよ”と教えると驚いていた。


 そう今じゃ刃物で、果物の皮を剥けるのさえ怪しい。


 まあ、刃物なら、別に使わなくてもやれる方法があるのだが。

コメを洗剤で洗ったり、目盛りどおりに入れれば別に問題ない、電子ジャーでさえ使えない。


 つまり、台所で母親が作っている所を手伝うどころか、見たことすら無いと言う事だ。


 しかし下手にそれを言う物なら、“差別”だとわめいたり。

“じゃあ、お前は出来るのか!”と開き直ったりするから、面倒くさい。


 だが、中学の時の。

あのサマーキャンプの惨状を見たら、そう思うしかない。


 だから、女子が料理が出来るのは、二次元での話か。

二十世紀の過去の話だと思って、当てにしないようにしている。


 ちなみに僕は。昔、事情があり、親がインスタントしか出さない時期があって。

その時に、インスタントばかり食べるのに飽きて、自分で作っていた事もあったので簡単な物なら作れる。




「……なおくん、初めて見たときから気になっているけど。

シャツのすそ、ズボンから出ているよ……」


「ああ、これね。

これはね僕の時代だと、逆に入れると可笑おかしいんだよ」


「ええっ〜!」




 千早ちゃんが、僕のシャツを見て言いにくそうに言うので。

僕の時代だと、入れていると逆に可笑しいというと、またまた驚く。



 (※ちなみに、いつからそうなったか当時を知る人に聞くと。

90年代の前半くらいから、そうなったみたいですね)




 ・・・




「なおくん、待たせてゴメンね〜」


「そんなに慌てなくても、良かったのに・・・」




 台所に来るまでにやった、二人のやり取りを思い出していたら。

千早ちゃんが、慌てた様子でやってきた。




「じゃあ、今から作るからね♪」



 ご機嫌そうに、そう言いながら。

彼女が、朝食を作り始める。





 ****************





「美味しかったよ」


「お粗末さまでした♪」




 私が作った料理を、なおくんが美味しいって言ってくれた。


 その事で、私はとても嬉しくなると共に。

さっきまでの事を思い出していた。




   ・

   ・

   ・




「……ふふ、ふ、ふ、ふん〜」




 私は台所に来ると、エプロンを着けてからハムエッグを作る。


 それと同時に、家はパン食派なので、一緒にパンも焼く。



 ――理想の男の子に、料理を作ってあげる。



 作っている最中、その事で。

私はとても機嫌が良くなり、鼻歌交じりで料理を作っていた。


 途中、なおくんが“何か手伝うことは無い?”と聞いてきたが。

食器などの場所も分からないだろうから、何もしなくて良い”と答えた。


 でも、そんな彼の心遣いは、とても嬉しい。


 やっはり、なおくんは優しいなあ〜。




「(しかし、今から40年後かあ……)」




 なおくんと、台所に来るときに色々聞いたが。

彼が、今の時代の人間じゃないと言うのは、何となく分かったが。

まさか、40年後から来たのだとは・・・。


 しかも、彼から聞いた未来は信じられない物だった。




 ――女の子が、全く料理が出来ないのが当たり前。


 ――シャツを出したままなのが当たり前。




 じゃあ、食事はどうするのか聞いたら。

別に出来なくても、24時間開いているファミリーレストランや、食べ物屋さんとかが。

どこにでも、ごく当たり前にあったり。




 (※その当時、既にファミレスはあったのだが数も少なく、また24時間でも無い場合もあり。

 それ以前に、24時間開いてる飲食店も極端に少なかった)




 “コンビニ”も、全国、それこそ周りに田んぼしかない、この近辺の様な所にも存在する様になり。

それも24時間開いて、そこで弁当を買えるから不便は無いとの事だ。




 (※同様にコンビニも既にあったのだが、やはり必ずしも24時間では無かった上、数も少なく。

 今の様に、採算が取れればド田舎でも存在すると言う訳でも無く、ほとんど都市部にしか無かった。)




 それに、“すまほ”と言うのも、見せてもらった。


 見たところ、ガラスとプラスチックで出来た、板の様な物だが。

それが実は個人用の電話で、何と国際電話も掛けられ、TV電話も可能と言う事らしいけど。

余り、そう言う使われ方はされてないそうだ。


 しかも、その“すまほ”は電話だけで無く、その小さく薄い物が電卓として計算も出来。

それだけでは無く、コンピューターゲーム?も出来るし。

TVや、家にもあるビデオ、あるいは8mmみたいに撮影できると言う、驚く物であった。




 (※その頃、卓上電卓が本格的に普及した頃だが、値段が当時、数千円位する物で。


  それに、この年ちょうど大ヒットしたコンピューターゲーム、インベーダゲームが出た年であり。

 千早がコンピュータゲームと言う物を、理解出来なかったのも当然である。


  また、ビデオは出た初期の頃で、値段も当時2,30万もする高価な機器が多く。

 千早の家のような、富裕層でしか持てなかった)




 ……そんな未来から来たのなら、聞いてみようかな?

あの“大予言の事”が、当たったかどうか。




「千早ちゃん、そろそろ火を止めないとイケナイんじゃないの……」


「えっ? ああっ〜」




 私が、考え事をしながらハムエッグを焼いていたら。

横から、なおくんの声がしたのでフッと気付くと、何か焦げているような匂いがし始める。


 慌てて火を止めると、止めるのが早かったので、幸い焦げることは無かった。




「……なおくん、ゴメンナサイ」


「良いよ、良いよ、焦げてないから」


(なでなで)




 そう言って、私の頭を撫でるなおくん。


 彼の更なる優しさに、私はとても感動した。




   ・

   ・

   ・




(カチャカチャ)


「えっ、あっ、なおくん良いのに〜」


「良いから、良いから」




 私が、朝食を作っている時の事を思い出していたら。

なおくんが食べた後の食器を片付けていた。


 しかも、私の物も一緒に。




「千早ちゃんにお世話になっているから、これくらいはね」




 微笑みながら、私の分の食器も持って行き、洗ってくれる。


 なおくんはホント優しいなあ〜。


 高校生くらいの男の子が、後片付けの手伝いをしてくれるなんて。

余り聞かないよ。


 未来だと、それも当たり前なのかな?


 でも多分、なおくんだからだろう♡


 そんな事を思いながら、私は流しで食器を洗う、彼の背中を見詰めていた。



<参考>

・電卓

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E5%8D%93#%E4%BE%A1%E6%A0%BC%E7%A0%B4%E5%A3%8A%E3%81%AE%E9%80%B2%E8%A1%8C%20-%201970%E5%B9%B4%E4%BB%A3%E5%89%8D%E5%8D%8A


・コンピューターゲーム

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2#1970%E5%B9%B4%E4%BB%A3


・ビデオ

https://ja.wikipedia.org/wiki/VHS#%E6%AD%B4%E5%8F%B2


※ファミレスとコンビニに付いては、当時を知る人の伝聞なので。

必ずしも、正確では無いかもしれません。




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お姉さん先輩に可愛がられる、後輩男子のイチャイチャした物語です。
図書室の天然天使
男として生きるのに疲れた少年が、女の子に肉体転移して。
その可愛い弟を可愛がる物語。

優しいお姉ちゃんと可愛い弟
姉弟物の短編が多いので、どうか、お越し下さい。

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