プロローグ
この作品は、数年前に某投稿サイトに投稿したものですが。
当方のミスで連載が出来なくなり、そのままエタった上。
(それもプロバイダーを変更した時、設定変更し忘れ。
アカウントにアクセス出来なくなったと言う、間抜けな理由で……)
設定の矛盾により、続きさえ書けなくなってしまった物です。
最近、やっと設定の問題が解決して、何とか続きが出来るようになったので。
作品を改稿して、なろうに投稿する事にしました。
お目汚しにしかならない物ですが。
それでも良ければ、ご覧くださいm(_ _)m
1978年、5月のある日の晴れ渡った満月の夜
・・・
標高が高い某地域の、とある丘の上にある別荘。
その別荘は、こじんまりとはしているが、品の良い洋風の作りをしていた。
そこの二階の部屋で、前髪を切り揃えた背中までの長さの黒髪、白いネグリジェを着た少女が。
一人ベッドでゴロ寝をしながら本を読んでいる。
少女が読んでいるのは、少女マンガである。
そのマンガの内容とは、地味で目立たないけど心優しい少女が。
クラスで人気がある、穏やかで爽やかなイケメンと恋をすると言う。
昔の、典型的な少女マンガである。
「はあっ……」
少女はマンガを読み終わると、うつ伏せで肘を付いた状態から、ゴロンと仰向けになった。
それと供に、少女が着ていた白いネグリジェが翻る。
今でこそ殆ど廃れてしまった、寝間着にネグリジェを着る習慣だが。
その当時は良い所のお嬢さんや、乙女チックな娘は寝るときに着る事があった。
(※乙女チックと言う単語自体が、今では死語になっていますが)
少女は、天井を眺めながら先ほど読んでいた、マンガの内容を反芻した。
「私にも、こんな優しい男の子が現れないかなあ……」
少女は(その当時の)マンガの様な恋愛に憧れていた。
その当時は、10代の男子の間で、バンカラと呼ばれる一種のマッチョイズムが、まだ残っていた時代であり。
男子の中では、粗野なのが美徳ともされていた。
また、ちょっとでも女子を会話しただけで、“軟派”と呼ばれ攻撃される風潮があった時代でもある。
(※その当時の軟派は、今の女の子を引っ掛けるナンパとは違い。
今で言う、チャラ男に近いニュアンスみたいです)
当然、男がそう言う状態であるので、女の子の理想の男性像が“俺様”の現在と異なり。
どちらかと言うと、今で言う草食系に近い感じでもある。
「私の回りには、男の子自体いないし……」
少女は良い所のお嬢様であった。
少女の家は、地方では有力な会社を経営しており。
その為、この一帯では有名な資産家でもある。
と言う事もあって、文字通りの箱入り娘として育ったので、同年代どころか肉親以外の男性との接触が無かった。
更に同年代の男子は、バンカラのマッチョイズムな空気もあり。
小奇麗にする事を軟弱と見なしていたので、結構、不潔な場合が多く。
また、柄が悪い事も多いので、箱入り娘である少女は基本的に、現実の同年代の男子に、良い感情を持っていなかった。
「……それに、生きている内に。
男の子とマトモに付き合えるかさえ、分からない……」
実は少女は、生まれ付きの重度の虚弱体質だったので。
彼女の静養を兼ねて、両親共々、郊外に有る別荘に住んでいた。
少女の体質のせいで、普段は家に居ることが多かったのも、他の男子との接触が皆無な原因の一つでもあった。
少女は17歳であるが、幼い頃は事あるごとに入院し。
最近は、十代後半の体力が充実した年頃なので、幼い頃みたいに入院する事は無くなったけれど。
しかし。生命力のピークである22〜3歳を超えたら、どこまで生きていられるか分からないとも言われていた。
以前、医者と両親の会話を、偶然聞いた事があるが。
――30歳以降の、生存の確率は極めて低い。
――出産どころか、妊娠すら命の危険があるのでオススメできない。
その、会話の内容を聞いた時。
“私は、普通の女の子みたいな幸せを掴む事さえ出来ないの……?”
ショックの余り、数日間寝込んでしまった。
そう言った、未来に期待が持てない状況が。
ますます、少女マンガみたいな恋に憧れる要因になっていた。
「一度で良いから、マンガみたいな恋をしてみたいなぁ〜」
と、呟きながら、ベッドから起き上がり、絨毯の上に降りた。
それと同時に、少女の白いネグリジェがフワリと舞い上がる。
少女は黒髪と白いネグリジェを翻しながら、勉強机へと向かう。
勉強机に着くと、椅子を引いて腰を下ろし、そして、目の前の本立てから一冊の鍵付きの本を取り出した。
それから、机の引き出しを引いた後、さらにその奥にある隠し引き出しから鍵を出し。
その鍵を本の鍵穴に差して解錠すると、表紙をめくった。
現れたページには、そこには“日記帳”と書いてある。
この時代、乙女チックな娘の間では、日記を書く事が珍しくなかった。
更にページをめくると、幾何学模様が描いてあるページが現れる。
これは、おまじない好きな彼女が、恋人が出来る魔法陣を描いた物であった。
少女は、次々とページをめくっていく。
その字は、まるでペン習字の手本の様にキレイな字だ。
文字で埋まったページをめくって行き、何にも書いていないページに到達すると、そこで手を止める。
そこで、一旦、何かを考えた後、ペンを走らせた。
┏―――――――――――――――――――――――――――――┓
5月XX日
私は、いつまで生きていられるの?
それまでに、素敵な恋が出来るの?
それを考えると、不安で不安で仕方が無い。
お願い神様、どうか、短い命なら、せめてこの願いを叶えて。
┗―――――――――――――――――――――――――――――┛
そして、少女は日記を閉じて鍵を掛けて、本立てに挿し入れ、鍵も隠し引き出しに仕舞うと。
本立てから別の本を取り出した。
その本は、“魔術入門”と書かれている、胡散臭そうな本だった。
少女は、今度はその本を熱心に読み始める。
**********
それから、数時間後の深夜。
もう、満月は中天に上っている。
5月中頃、梅雨に入る前のこの頃。
昼間は暑いくらいだが夜になると標高が高く、更に丘の上のこの辺りは、まだ肌寒さが残っている。
そんな中、少女はネグリジェを着たまま肩にショールを羽織り。
別荘から少し歩いた所にある、草原に居た。
草原とは言っても、所々に木が疎らに生えている。
芝生くらいの背丈の草が一面に広がった、見通しの良い場所である。
満月で月の光が強い所為か、特に灯りが無くても周りが良く見えていた。
この日、両親は遠くにいる親族に不幸が有った為。
五日間ほど、家を開けていた。
少女は、地面がむき出しになった箇所に、五方星を石灰で描き。
五方星を中心にした外周に、様々な文字が描かれた円形の魔方陣を描く。
石灰は、家の物置に置いてあったのを、たまたま発見した物である。
少女は、魔方陣を描き終えると、手を叩いて、手に付いた石灰を落す。
一旦、魔方陣から後方に下がって、足元にある紙切れを拾い上げ。
それを広げ、懐中電灯を照らしながら、目の前の魔方陣と紙切れを比べ間違いが無いかを確認した。
間違いが無い事を確認すると、少女は一回深呼吸をして心を落ち着かせてから、呪文を詠唱し始める。
「四大元素及びそれに関わる天使達よ……」
メモを見ながら、長ったらしい呪文を必死で唱える少女。
しばらく呪文を唱えていると、周囲の雰囲気が明らかに変化した。
しかしそれは、決して悪い物では無く、むしろ周囲を穏やかにするのである。
なおも少女が呪文を唱え続けていると、突然、魔方陣の中央から強烈な光が放たれた。
数年に渡り、手を入れていた作品なので。
所々に、細かい矛盾点などが出ている為、頻繁に修正を行います。
しかし、ストーリー自体が変更される事は無いので、見返さなくても大丈夫だと思いますが。
仮にストーリーに影響があると思わる場合は、後書きで補足します。
<参考>
・70s少女マンガ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%91%E5%A5%B3%E6%BC%AB%E7%94%BB#%E6%AD%B4%E5%8F%B2
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%99%E5%A5%B3%E3%83%81%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%96%E3%82%B3%E3%83%A1
・乙女チック
https://www.weblio.jp/content/%E4%B9%99%E5%A5%B3%E3%83%81%E3%83%83%E3%82%AF
・バンカラ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%A9
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%BC_(%E4%B8%8D%E8%89%AF%E5%B0%91%E5%B9%B4)#%E2%80%9C%E3%83%A4%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%BC%E2%80%9D%E3%81%AE%E8%AA%9E%E3%81%8C%E6%8C%87%E3%81%99%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%81%AE%E5%A4%89%E9%81%B7
・硬派
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A1%AC%E6%B4%BE
・軟派
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%9F%E6%B4%BE