屋根裏を這う人
つい昨日の出来事について書く。
昨日の深夜、珍しく目が覚めたんだ。確か、1時半とかそれくらいの時間帯だったかな。
で、せっかくだからトイレにでも行っておこうと思って、ベッドから出たんだよ。でも、トイレの前まで来てあることに気が付いた。
俺の部屋とトイレは両方とも2階にあるんだけど、一階に続く階段から誰かの話声みたいのが聞こえてきたんだよ。かなり小さかったけど確かに人の話し声だった。
その時俺はそこまで恐怖心なんてなかったから、家族の誰かがいるのかなーくらいに思って、真っ暗な階段を降りて行ったんだ。俺は眩しいの嫌いだし、夜目が利くほうだから、明かりは付けなかった。
静かに階段を降りると、リビングの方でチカチカ点滅する青白い光が見えた。俺はそれがすぐにテレビの光だとわかった。さっきから聞こえてた話し声はテレビの音声だったんだ。
テレビの前にあるソファには親父が座ってた。俺は親父とあんまり仲良くなくて、こんな夜中にテレビを観ている親父の所にのこのこ出ていくのは気が引けた。だから、そのまま静かに自分の部屋に戻って、また寝たんだ。
でも、それから数時間後に俺は親父に叩き起こされた。
親父「おい! 早く一階に集まれ!」
俺「は……? 今何時?」
親父「何時でもいいから早く来い! 不審者がまだいるかもしれない!」
寝ぼけてたからその時の親父の言ってることは意味不明だったんだけど、言われた通り一階に降りてみて、そこで完全に目が覚めたよ。
リビングは何者かに荒らされていて、ソファの下には食べ掛けのスナック菓子が散乱してた。その様子を母ちゃんと妹が真っ青な顔して眺めてた。
親父曰く、数分前に屋根裏から何かを引き摺るような変な音がして目が覚めたらしい。自分の部屋の天井から聞こえきたから、猫か何かが入り込んだんだろうと思って、天井目掛けて枕を投げつけたそうだ。そしたらガタガタガタッっていうもの凄い音がして、それきり何も聞こえなくなった。まるで人間が立てるような馬鹿でかい音だったそうだ。
親父「それでここに下りてきてみたらこれだ。これは、さすがにお前や母ちゃんや璃子(妹)じゃないだろ」
俺は夜中に一階に下りたときのことを思い出して、急に怖くなった。
まあ……もうほとんど答えは出てたんだけど、俺は親父に昨日の夜1時半頃にリビングにいたかどうか訊いてみたんだ。
案の定、親父はその時間リビングには居なかったよ。あの時俺が親父だと思ってスルーしたのは、家族の誰でもなかったんだ。まったく知らない奴だったんだ。
今日も朝から警察が来て、色々捜査してるよ。話によると、犯人は屋根裏から侵入したらしく、部屋の中を物色した後にソファに座ってテレビを観ながらお菓子を食べていたらしい。
あの時、電気を点けなくて良かった。話し掛けずに部屋に戻って良かった。
皆も気をつけてくれ。家の中が安全だと思ったら、大間違いだからな。
いつもお読みいただきありがとうございます。
大変申し訳ございませんが、新作の執筆の為、ここで一度休載させて頂きます。
必ず再開致しますので、それまでお待ちいただけましたら幸いです。