悪夢
また妙な夢を見た。
私は家のリビングにいて、ぼんやりとテレビを見ていた。テレビには何故か集団面接の映像が延々と流されていた。
私はそれを見ているうちにだんだんと気分が悪くなり始め、終いにはテレビを消して洗面所の方へ向かった。
しかし、そこで妙なことに気が付いた。
誰もいないはずのバスルームから、知らない人間の声がしたのだ。
ドアを開けてみると、数人の知らない子供が浴槽を指差し泣きわめいていた。
何が何だか訳がわからなかったが、私はなんとなく浴槽の中に目をやった。
そこには人が沈んでいた。
自分と年の近い女だった。水の中で両の目をぼんやりと開け、体を真っ直ぐに伸ばしたまま、彼女は死んでいるようだった。
何故うちの浴槽に死体が沈んでいるのかわからなかったが、私は急いでバスルームのドアを閉めてしまった。
洗面所からリビングに戻ってくると、テーブルの下に何かが座っているのが見えた。人のように見える。
うわぁ、まだ何かいるのか……
私は足早にその場を立ち去ろうとした。すると、右の足首に違和感が走った。見てみると、土気色の手が私の右の足首をがっちりと捕らえていた。
「あぁ、あああぁぁ、うぅ……」
テーブルの下の何かは言葉にならない声をあげた。私はパニックになり、なんとかその手をほどこうと右足をばたつかせた。
「ううぅ……」
化け物の顔がテーブルの下からゆっくりと出てきた。その正体が露になる。
これも私と同い年くらいの女だった。髪はボサボサで肌は死んだような土気色。おまけに着ているものまでぼろ雑巾のようだった。
私は叫んだ。
一体何を叫んだのか正確なことは思い出せないが、とにかく叫んだ。そうすることで、このふざけた悪夢から脱け出せることを頭のどこかで理解していたからだ。
案の定、私は現実世界に戻ってきた。押し潰したような寝言と共に。
部屋の中は少し肌寒く、夜が明けるまでにはかなり時間があった。心臓は今までにないくらい早く脈打ち、あの女の呻き声がまだ耳の中に残っているようだった。
しばらく布団の中でじっとしていると、段々と頭が冴えてきた。そして、あることに気が付いた。
浴槽の中に沈んでいた女も、テーブルの下から這い出てきた女も、どちらも私に似ていたのだ。