表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
都市伝説エトセトラ ハニーファニーランデブー  作者: 入羽瑞己
もじもじくんとくねくねちゃん
22/30

もじもじくんとくねくねちゃん⑥


 ――☆☆☆――


 つかさが死んだ。肝試しの途中、つかさは死んだ。

 それは本当に突然で、いきなりだった。

 出発する人間を見送っては、帰ってくる人間の話を聞く。その繰り返しの中で自分たちの番を待っていた最中、つかさの姿が見あたらないことに気付いた。

 暫く探していたが、八組目、九組目が出発しても、その姿が見えず。十組目が出発したくらいで異変に気付いたみんなは十一組目、十二組目の出発を中断して、集会所中を探し始めた。

 見つからなくて困っている矢先に八組目、九組目が帰ってきて、杵みたいなものを持って一人で歩いていくつかさの姿を見たという。真剣な表情で進んでいく様子に違和感を覚えたが、杵を持って進む様子に「何らかの仕事ができてしまったんだろう」と思って、特に会話をするなどといったことはなかったらしい。

 十組目が帰ってきたくらいに、何人かで捜索に出発。捜索の途中、中間地点にて破壊され尽くした地蔵を発見。ただごとじゃないと思って、その時点で警察に連絡。大人がいっぱい集まって、子供である俺たちは家に帰された。

 そして次の日、つかさが崖から落ちて転落死していたという話を聞いた。

 落ちていた杵からはつかさの指紋が検出され、おそらく地蔵を破壊したのはつかさだろうという見解が出た。自殺なのか事故死なのかは警察の方でもはっきりしないようだったらしいが、「他殺の可能性が見られず事件性は低い」といういい加減な判断で、自殺ないし事故死で調書を作って三日ほどで現場を片づけてしまった。

 信じられなかった俺は、一人で肝試しのルートを探索することにした。何かわかるとも思えなかったが、何かしないことには居ても立ってもいられなかったんだ。

 そして、出発してあまり時間を置かず、隣には死んだはずのつかさがいた。正直、その状況に納得できず言葉を失っていたが、やたらと明るく絡んでくるつかさの前ではそんなことはどうでもよくなっていた。

 一緒に中間地点にたどり着いたとき、明らかにつかさは動揺していた。つかさの方にかかりきりのためか、ボロボロの状態で放置されていた地蔵を見て何か思うところがあったのだろう。何かつかさの死のきっかけが聞き出せるかと思って「見ろ」と一瞬促してしまったことが、後々とても悔やまれた。

 そして、明らかに脅えた様子になってしまったつかさは集会所がよく見えるようになったくらいで、「何で集会所の電気が消えてるんだ?」という問いを発した。その顔を覗いたとき、俺は情けなくも叫んでしまった。

 ――そこにはぐちゃぐちゃになった顔面があったから。

 手を離すとつかさは、言葉にならない声をあげながら山中に走っていったんだ。だから追いかけていくと、つかさからの着信があった。

 死人からの着信なんて、俺には信じられなかった。携帯電話がどうなったのか聞いてなかったけど、警察の人が持っていったものだとばかり思っていたから、無視してつかさを探していた。そして見つけたつかさは、紛れもなくその携帯電話を耳にあてて電話しようとしていた。だから、俺は通話して「やっと見つけた」と答えたつもりだった。電話を耳にあてている姿から、もうその時の俺にはつかさが死人に見えてなかったのかもしれない。

 しかし、その答えをきっかけに、つかさは叫び声をあげてその場から逃げるように走っていった。そして、追いかけていくと途中で姿を消し――崖の下で死んでいるのが見えた。

 それが夢だったのか、現実に目にしたものだったのかはわからない。だけど、このままじゃつかさはきっとまた死を繰り返してしまう。

 そんなふうに思った俺が出した結論は「つかさに肝試しを終えさせる」こと。それにはつかさの解放を保証する何の根拠もなかったし、そんなことに何か意味があるのかもわからなかった。だけど、小説やアニメよろしく、そんなことでしか俺にはあいつを救ってやれるようなアイデアが浮かばなかった。

 不謹慎を百も承知で、俺はクラスのみんなに色んな理由をつけて、再び肝試しを開催する手はずを整えた。

 そして、肝試しのその日、俺はまたつかさの幻に出会うことになる。


 ――★★★――


「私は、成仏できるのだろうか?」

「……わからない。だけど今度こそ、俺はこの手は離さないでいたい」

 弱気なつかさを励ましつつ、俺たちは集会所への歩みを進める。

 集会所にたどり着いたところで、それがつかさの解放に繋がるのかはわからない。でも、俺はそれがつかさの解放に繋がると信じて一緒に歩くことしかできない。

「成仏できなかったら、信彦に取り憑いてもいいか?」

「馬鹿なことを言うな。成仏してくれ、頼むから」

 俺はいない人間となんて会話をしているんだろうか。いつものように話すこいつが、もう死んでいるなんてとても思えない。

「だけど……お前はもう、こんなところに来るな。他のみんなもだ。ここは良いところじゃない」

 集会所が目の前まで迫り、つかさがそんなことを言う。

「お前が成仏するなら、もう来ないさ」

「ああ、頑張るよ。だから……もう来ないでくれ、頼む」

「……ああ」

 その時刹那、まばゆい白い光を、俺は来た道に見たような気がした。そしてその後には、つかさの姿をもう二度と見ることはなかった――


――もじもじくんとくねくねちゃん――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ