教室の鏡
初投稿になります、改行の使い方など拙い点や読みづらい部分が残っていたらごめんなさい。
ハッピーエンドが好きだったのです。私も幸せに終わりたかったのです。
それなのに、私はあなたを殺してしまいました。あなたのその目は、あなたを見つける前の私と同じ目に感じます。今の私もこの目をしているのでしょうか。
あなたに出会う前、もしかしたらそこが私の一番幸せな時だったのかもしれません。私は中学時代何度も失敗し、他人に嫌われてしまいました。
ベッドから出るのを拒む私は両親の悩みの種となり、私が原因で両親の関係は暗くなっていきました。
その頃の私にとっての精一杯は、塾で少人数の友人と勉強することでした。必死に自分の中の明るい人像を演じるのが、本当は苦痛でした。しかし今思うと、その有様は暴力的で不快な存在だったと思うのです。でも、多分、その頃は今より幸福でした。
そしてここが私の16年間の絶頂なのですが、私は志望校に受かることができました。受験の少し前、先生との面接練習で
「あなたは絶対面接の時点で落ちる」
と睨まれた私には自信がありませんでしたから、本当に、本当に嬉しかったのです。母に高校は楽しいと教えられていたのもあって、私はここから幸せになる未来を描けるようになっていました。ほんとうにそうなってくれるのか、本当は毎日不安でした。
入学してから何日か、クラスの人の性格も少しわかってきた時、私はあなたが好きになりました。あなたは絶対に手の届かない存在でしたが、好きな人に嫌われないために私は変わろうとしました。一歩でもいいからあなたに近づきたかった私は明るい人を目指しました。私が失敗と認識していた事は繰り返さないよう注意していたはずですが、今の私にはやはり失敗で塗りたくったような日々です。
そんな様子の私でもあなたと話せるようになったのは何故でしょうか、あなたが人を見る目がない馬鹿だったとは思えないのですが。
1ヶ月ほどそうして生きていた時、あなたに好きな人がいるという噂を聞きました。私はただ、現実から目を背ける試みを繰り返すようになりました。誰かの幸せを祈り、眺め、描くのが日課になっていました。先ほどまでです。
そこから2週間ほど経つ間に、あなたは噂を肯定するようになっていきました。その人と話すきっかけが欲しい、その人の趣味を知りたい、あなたの少し震えた声を聞くたびに、私はこんな自分の存在を消してしまいたくなりました。あなたの恋に、あなたに片思いする私は邪魔だと知っていたからです。あの日から私は周囲との関係を薄くして、教室の隅にいるようにしていたのですが、あなたはいつ私の片思いに気づいたのでしょうか。
そして今日、早朝、あなたに話しかけられました。放課後部室の前に来て欲しいと言われ、私は中学のいつかを思い出してしまいました。あなたに言われるだろう言葉がいくつも浮かんで、授業中の私の頭を空っぽにしていくのでした。
放課後、潰れてしまいそうな体であなたがいるであろう部室の前に向かいました。そこにあなたはいませんでした。ドアから部室を覗きましたが、誰もいませんでした。
からかわれたんだと、いたずらに気付いたつもりで周りに隠れているはずの誰かを探しうろついていると、あなたが駆けてきました。
「ごめん、俺が転部したの知らなかったんだね」
あなたは息を切らしていました。私は恐怖に震えていた気がします。
「その、ああ、えっと」
言いづらそうに俯く姿を見て、私の恐怖は絶頂に達しました。
胸ポケットに入れていたはずのペンがあなたの首に刺さっていました。
そうして、今に至ります。
ここから私はどう幸せになるというのでしょう。
以前より廊下が暗く感じます。
私に罪を償う事は出来るのでしょうか。あなたが愛する人は、あなたを愛する人は、私を許すでしょうか。
ここから離れる勇気を持たない私は、教科書の詰まったリュックを床に叩きつけました。この音で人が来るのを望みます。
今はこの先のことを想像できません。私にはただ、命でも絶対償えない罪に震えることしかできません。
複数人の駆けてくる音が廊下に響きます。